この3カ月間に「インフルエンサーハウス」が、米国各地に出現している。インフルエンサーハウスとは、見栄えのする豪邸に、TikTokのクリエイターなど、複数名のインフルエンサーが集い、作品のコラボレーションを行いながら共同生活を送るスタイルを指す。たとえば、「ハイプハウス(Hype House)」や「ガールズ・イン・ザ・バレー(Girls in the Valley)」、歌手リアーナによるフェンティビューティ(Fenty Beauty)の新しい空間などだ。

リアーナは3月6日、TikTokハウスをオープンしてインフルエンサーを住ませる計画を発表した。現在、5人以上のコンテンツクリエイターがこのTikTokハウスで生活しており、フェンティビューティのアカウントと自身のTikTokページに毎日コンテンツを投稿することになっている。だが、クリエイターに報酬が支払われるのか、払われる場合はどれくらいの金額か、フェンティビューティはこれまで明らかにしていない。それでも、世界各国でコミュニティ全体に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大していることにより、多くのコミュニティが、社会的距離と自己隔離に向かうなかで、今後数カ月間にこうしたタイプの空間の開設を検討するブランドやインフルエンサーが増えるかどうかは、現時点では不明だ。在宅して娯楽をスマートフォンに求める人が増えているため、とにもかくにも、コンテンツクリエイターはこれまで以上に多くのコンテンツを制作している。

インフルエンサーマーケティングエージェンシーのオブビアスリー(Obviously)によれば、独自のインフルエンサーキャンペーンから収集したデータに基づくと、TikTokでのエンゲージメントは2から3月にかけて27%増加したという。

「新型コロナウイルスの影響により、コンテンツを視聴したり、コンテンツと関係する自由な時間が増えるのだから、ハウスやコンテンツの視聴回数や認知度が上昇するのは確かだ。ただ、1人でもメンバーが病気になったら、悪影響を及ぼす可能性もある」と、インフルエンサーマーケティングエージェンシー、メディアキックス(Mediakix)の創業者でCEOのエバン・アサーノ氏は語る。

こうしたクリエイターハウスの一部と違って、リアーナのハウスは、自身のブランドであるフェンティビューティにフォーカスし、@Makayladid(フォロワー数31万4000人)、@Thedawndishsoap(フォロワー数110万人)、@Emmycombss(フォロワー数440万人)のような有名人が一時的に住んでコンテンツを制作している。リアーナのハウスにどれくらいの期間滞在するのかは、現時点では不明だ。これらのインフルエンサーは、「#FentyBeautyHouse」というハッシュタグでフェンティビューティのアカウントとそれぞれ自分のアカウントに投稿している。このハッシュタグは現在、2650万回視聴されている。これは、TikTokで人気のスター集団が生活してコンテンツを作成できるように、2019年12月に開設されたハイプハウスの成功に続くものだ。

コロナ禍が及ぼす影響

これまでのところ、少なくとも米国では、ハウスは正常に機能しているようだ。インフルエンサー・マーケティング・ファクトリー(The Influencer Marketing Factory)のCEOで共同創業者であるアレッサンドロ・ボリアリ氏は、数日以内にそれがすっかり変わる可能性があると述べている。

「これまで変化は一切見られなかった。時々マスクを付けて、ハウス内でまだ撮影している。欧州の状況のほうがもっと深刻なのは確かで、米国では、一部の州や都市が、人混みを避けるために外出禁止令を出しはじめたり、場所を閉鎖したりしているだけだ。米国では、これをまだ十分に深刻に受け止めていない人が大勢いる。だからまだ、インフルエンサーグループが同じハウスで働いている。それが今後7〜10日のあいだに変わるのかどうか、見極めるのは興味深いものがある」と、ボリアリ氏は話す。

具体的に言えば、ロサンゼルスを拠点とするハイプハウスの場合、ハウスで実際に生活しているのは少数のクリエイターにとどまる。初期の段階では、メンバー19人のうち4人だけだった。チャーリー・ダメリオ氏のようにもともと東海岸を拠点としているメンバーもいるので、残りのメンバーは、可能なときや街にいるときに、コンテンツの撮影のためにハウスに出入りしている。一部のメンバーによるTikTokへの投稿によると、ハイプハウスのチームは3月中旬、新しいアパレルシリーズのために写真撮影を行っているようだった。

もともと1人に慣れている

インフルエンサーマーケティングエージェンシー、インフルエンシズ(Influences)の創業者アリアドナ・ジェイコブ氏は、1カ月ほど前にTikTokハウスのガールズ・イン・ザ・バレーをオープンした。ガールズ・イン・ザ・バレーには現時点で、6つの寝室があり、1部屋が空いている。ジェイコブ氏によると、ガールズ・イン・ザ・バレーで生活している何人かの少女は、生活必需品を買いだめすべきか、屋内にとどまっているべきか迷っているという。近くに住む家族と暮らすために家に帰ったメンバーがいる一方で、ガールズ・イン・ザ・バレーに滞在して、より多くのコンテンツを制作したり、YouTube向けの制作について調べたりしているメンバーもいると、ジェイコブ氏はいう。

「誰もが、制作するコンテンツの量を倍にしている。ある腕時計メーカーのように、これまでに取り組んできた取引のために、ブランドからあいかわらず多くの電話が掛かってくる。それに、音楽はまだ発表されているので、レーベルはまだ、(同様の)取引を実行させたがっている。ヘルスエイド・コンブチャ(Health-Ade Kombucha)は、ハイプハウスやガールズ・イン・ザ・バレーに製品やブランドの冷蔵庫の納入を計画していたが、その計画はまだ進行している」と、ジェイコブ氏は話す。

ジェイコブ氏は、リアーナのフェンティビューティハウスで現在生活しているインフルエンサーの1人、エミー・コムズ氏の代理人も務めている。コムズ氏によると、ハウス内のインフルエンサーは、普段どおりに仕事をし、TikTok向けに多くのコンテンツを制作しているが、ハウス内ではできるだけ1人でいるようにしているという。

「これらのハウスに住んでいるのは主に、バーチャルなつながりで集まった、すばらしい才能に恵まれた人たちだ」と、カルチャーマーケティングエージェンシー、シビック(Civic)でカルチャーに関する洞察を担当するシニアバイスプレジデントのサラ・ウンガー氏はいう。「最初から隔離された状態で人々やファンとの関わりを試してきた。隔離されたこの生活については非常に興味深いものがある。おそらく、彼らにとってはそれほど違いはないのだろう。あることでインフルエンサーに頼れるとすれば、それは、彼らがデジタルプラットフォームを利用し、つながってコミュニケーションを取ることで創造性を発揮できることだ」。

ビレッジスタジオの現状

インフルエンサーマーケティング企業ビレッジマーケティング(Village Marketing)の傘下にあるビレッジスタジオ(Village Studio)がオープンした空間のような、ほかのインフルエンサーハウスでは、インフルエンサーがハウスで常時生活しているわけではない。クリエイターやブランドは、ハウスを1度に1日予約できる。そうした空間が現時点でもまだ活動しているのかどうかは不明だ。ビレッジ・スタジオにコメントを求めたが、回答はなかった。

Katie Richards(原文 / 訳:ガリレオ)