いざというとき、苦労は分かち合えば半減するのかもしれない。

サードパーティCookieの消滅という危機が間近に迫り、懸念事項リストのトップ近くに浮上しつつあるいま、パブリッシャー周りには課題が山積している。デジタルの収益源をディスプレイ広告以外にも広げて多様化させるというのは、これまでも散々検討されてきた。だがGoogleが今年1月、2年以内にサードパーティCookieのサポートを終了させると発表し、いよいよ検討するだけでなく実行すべきときが来た格好だ。

3月上旬、クロアチアで開催されたDIGIDAYの「Digital Publishing Summit Europe」では、パブリッシャー各社の幹部から、Cookie問題の解決については、大手プラットフォームやブラウザ企業の世話になろうとするのでなく、本腰を入れて協力体制を強化していこうとの声が上がった。

「他社と一緒にやるしかない」

パブリッシャー間の連携というアイデアは、これまで険しい道のりを辿ってきた。だが時代は変わっている。

「いまならパブリッシャー間の連携はうまくいく、あるいはうまくいくチャンスがあるだろう。というのも、そうせざるをえない状況になっているからだ」と、フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times:以下、FT)のプログラマティック部門、およびコマーシャルイノベーション部門でディレクターを務めるジェシカ・バレット氏は語る。「競合他社と連携しなければ会社が倒産するとなれば、他社と一緒にやっていくしかない」。

この発言でバレット氏が言及しているのは、(すでに連携がある程度うまく機能しつつある)ドイツやスイスの中小規模パブリッシャーのことだ。だが、1社が圧倒的シェアを占めているわけではない市場においては、FTのような大手にとっても競合他社との連携が効果を発揮する可能性もある。FTの場合、エコノミスト(The Economist)のような媒体とデジタルサブスクリプションをバンドルすれば、米国で成功する可能性もあるだろうという仮定の例もバレット氏から挙がっていた。

ステークスホルダーへの教育

また、そこまであらたまった形ではない協力も必要だという声もある。バイヤーを教育し、ロングテールよりも、プレミアムなWebサイトのほうが魅力的かつ効果的な出稿先であるのはなぜか、といったことを教えるべき、というのもそのひとつだ。

教育に関しては、サードパーティCookieの価値が下がり、ユーザーにサイト登録を促すパブリッシャーが増えているなかで、読者の教育も重要になってくるかもしれない。

「Facebookにログインする必要があるのはあたりまえに思え、それが困るとは誰も思わない」と、テック系パブリッシャーのIDGで、プログラマティックプラットフォーム部門とデータ部門のマネージャーを担当する、ジョージ・ブーラ氏は語る。「だが多数のパブリッシャーが連携し、こういった理由があるのでメールアドレスを提供しなければならないと言われると、かなり強烈なインパクトがある。しかも、ほかのデジタルサービスでも同じことを言われるのだからなおさらだ」。

結局のところ、テクノロジーを使った短期的なCookie回避策に力を入れても、ブラウザに気づかれてしまえば、どのみちブロックされてしまう可能性が高い(Appleのインテリジェント・トラッキング・プリベンションと、クリテオ[Criteo]のモグラ叩き合戦がその良い例だ)。となるとパブリッシャーは互いに協力し、次にどんな手を打つべきか幅広い視点を持って考えるべきだろう。

プログラマティック広告の功罪

もしかすると、サードパーティCookieが消滅した後の世界は、サードパーティCookieが登場する前の世界と同じに見えるかもしれない。そして、それはそんなに悪いことでもないのではないだろうか。

「プログラマティック広告が登場する前も業界は問題なくやっていたし、なくなったとしても問題なくやっていけるだろう。プログラマティック広告を10年近く扱ってきた経験から言って、この技術が一部の分野で業界を進歩させたことは間違いないとは思う(自動化がそうだ。広告掲載申込書をファックスしていた時代には戻れない)。だが一方では、大した規制もなく、複雑すぎる大混乱状態を引き起こしてもいる」と、FTのバレット氏は3月9日にリンクトイン(LinkedIn)に投稿している。「プログラマティックの良いところは残し、無意味なところは過去に葬ろう」。

Lara O'Reilly (原文 / 訳:ガリレオ)