マラソンを見ながら似ていると感じたのはゴルフだ。優勝争いと日本人の成績とに視点が分かれやすいところに共通点がある。ゴルフは常にプレーしているわけではない。プレーを切り取りやすいので、優勝争いの合間に日本人選手の姿を挟み込むことに無理を感じないが、それでも成績がサッパリ振るわないのに、画面に過度に登場すると、世界との差を見せつけられたようで、哀れな気持ちになる。

 しかし優勝争いに顔を出すと俄然、盛り上がる。その最たる試合が、渋野日向子が優勝した昨年の全英女子オープンだった。初日、首位に1打差の2位タイで発進すると、2日目は単独2位で折り返し、3日目は2位に2打差の単独首位に浮上。最終4日目は前半を終えて3位タイまで沈んだが、ラスト9ホールで爆発。最後の18番で抜き返して優勝した。

 常に先頭集団を引っ張り、優勝争いという画角の中に4日間収まり続けながら優勝した。マラソン的に言えば、まさに強い勝ち方だ。それを全英女子オープンというメジャーの舞台で披露した。

 その世界ランクは12位。5位には畑岡奈紗がいて、14位には鈴木愛がいる。女子ゴルフはいま世界的に高いレベルにある。かつてのマラソン界もこんな感じだった。極めつきは92年バルセロナ五輪の男子マラソンで、2位森下広一、4位中山竹通、8位谷口浩美と、3人全員が入賞する快挙を演じている。
 
 マラソン人気は駅伝人気ともども相変わらず高い。かつてより増している印象さえするが、その一方で、競技力のレベルダウンは著しい。世界との差は開いている。空回りしている原因は何か。
 
「東京五輪ではメダルが狙えます。札幌は暑いですから。外国人選手より日本人選手の方が有利です!」と、テレビ解説者が喜々と声を弾ませ、楽観的コメントを吐く姿と無関係ではない気がする。言いにくい話、批評性の高い話がフランクに語り合えるスポーツ界であってほしい。場のムードに流されていると、競技力は向上していかないと思うのだ。