いまこの時期に必要なのは、強いリーダーシップである。その意味で、新型コロナウイルスへの対策を念頭に置いたJリーグとプロ野球の連携は、素晴らしいと思う。

 そもそも利益相反の関係ではない。プロスポーツとしてのすみ分けはなされていると感じるし、少子高齢化の現代ではスポーツ界全体が歩調を揃えていくべきだ。

 プロ野球の斉藤惇コミッショナーとJリーグの村井満チェアマンが並び立った姿には、「かつてない光景」との表現が使われた。「歴史的タッグ」とも報道されたが、時代の要求に即したものだと考えるほうが自然である。

 Jリーグは3月18日からの公式戦再開を目ざしている(原稿執筆時点)。プロ野球はオープン戦を無観客で実施しながら、同20日のシーズン開幕を見据える。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大の行方は、先行きを見通せない状況だ。

 予定どおりにスケジュールを消化するにせよ、追加の延期をするにせよ、社会が安心できる明確な根拠を示したい。その根拠を作るのが、実は非常に難しい。

 スポーツ観戦は様々な交通機関を使った人たちが、多方面からスタジアムに集まる。スタジアム内で観戦予防対策を講じても、試合前後の移動で感染するリスクは消えない。医学的なエビデンスをそのまま当てはめればいいわけでなく、専門家の意見も反映しながら「明確な根拠」に近づいていかなければならない。

 2日に設立された「新型コロナウイルス対策連絡会議」は、そのための情報と意見を交換していく場になるのだろう。日本のスポーツ界において、プロ野球とJリーグは影響力が大きい。このふたつが連携しながら競技の開催を検討していくことで、スポーツ界だけでなく社会全体に蔓延する不安を、取り除くことができるとの期待感が持てる。

 斉藤コミッショナーは「我々が主体的に決めていきたい」と話した。政府の方針に照らしながらも、開催するかどうか、するならいつからするのかは、プロ野球とJリーグがそれぞれに決めていくとしている。

 それでいいと思う。リーグ戦の試合数も違えば、試合が行われる空間も同じではない。プロ野球はプロ野球の、JリーグはJリーグの事情に沿って決断を練っていくくべきだ。

 3日に行われた第1回の対策連絡会議には、トップリーグが延期中のラグビー協会も参加したという。そのほかの競技団体からの参加や傍聴もあった。これもまた、自然なものだと言える。

 スポーツの競技団体は、それぞれに横のつながりを持っている。そのうえで言えば、今回の連絡会議の設立を、連携のスピード感を高める好機としたい。

 せっかく生まれた連携である。一時的なものではなく様々な方面に、生かしていっていいと思うのだ。