80〜90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第24回は、レースに勝つことを目的に、わずか477台が生産されたMモデルの原点に太鼓判です(※今回は70年代発表車)。

■コンセプトカーを発展させたミドシップスタイル

コンセプトカー「BMWターボ」をモチーフとしたスタイルはフロントにも強く反映された

1972年にBMWから分離独立、子会社化したモータースポーツ社は、当時ポルシェの独壇場だったシルエットフォーミュラでの勝利を目的に、BMW初のミドシップ車を計画。1978年にパリ・サロンで発表されたのがM1です。

1972年発表のコンセプトカー、「BMWターボ」をモチーフとしたボディは典型的なクサビ型。ミドシップとしてリアにボリュームを持たせたシルエットは、しかし全体の均整を保った絶妙のプロポーションです。

後端を絞ったサイドウインドウの形状は若干前のめりの勢いを感じますが、リアセクションのエアアウトレットが強いアクセントになることで、こちらもまた巧妙なバランス感を生み出します。

リアにボリューム感を持たせつつも均整を保った絶妙のシルエット

フロントからリアまで一直線に伸びるキャラクターライン(サイドモール)は、モチーフの「BMWターボ」より水平に引かれることで、レースカー、スーパーカーでありながら、非現実感のないある種の落ち着きを醸し出します。

フロントフェイスはコンセプトカーに準じた超薄型のスペシャルな顔に。一方、リアは左右両端のエンブレムこそ特別なしつらえですが、シンプルな長方形のランプがどこか量産車の身近さを感じさせます。これは面一化されたホイールデザインも同様で、近未来感と現実性のミックス具合が絶妙です。

■スペシャルと日常性の絶妙な融合

左右両端に置かれたエンブレムがスペシャルなリアスタイル

インテリアは、表示類をひとくくりにまとめたメーターナセルがそもそものレースカー企画を感じさせますが、乗用車的な空調口やセンターコンソールとの組み合わせが、同時にスーパーカー的な存在であることも物語ります。

イタルデザイン、ジウジアーロに委託されたスタイリングは「BMWターボ」のイメージを強く残しながらも、面や線を整理することで新たな魅力と、氏の真骨頂ともいえるいい意味での実用車感を同時に獲得しました。

ランボルギーニの途中離脱による紆余曲折の開発や、レース・レギュレーションの変更などにより500台に届かない生産となったM1は悲運のクルマとも言われます。しかし、このスタイリングが後年に残した影響力は決して小さくなかったようです。

●主要諸元 BMW M1 (5MT)
全長4360mm×全幅1824mm×全高1140mm
車両重量 1300kg
ホイールベース 2560mm
エンジン 3453cc 直列6気筒DOHC
出力 277ps/6500rpm 33.6kg-m/5000rpm

(すぎもと たかよし)

打倒ポルシェを目標に開発された超希少ミドシップ BMW M1【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】(http://clicccar.com/2020/03/06/959268/)