東日本大震災の発生からまもなく9年。政府による震災後の「集中復興期間」は2016年3月末で終了し、以降は「復興・創生期間」と位置付けられ各種支援が継続されている。被災地域の産業面においても、交通・物流網の構築のほか販路開拓や資金繰りに対する各種支援など、再生に向けた一層の取り組みが進む。

 一方で、地震や津波による建物損壊や風評被害などの影響が残っている企業も多く、震災により経営環境が悪化し、事業停止を余儀なくされるケースが現在もなお発生している。

 こうしたなか、帝国データバンクでは東日本大震災による影響を受けたことで倒産した企業(負債1000万円以上、法的整理による倒産、個人事業主含む)を「東日本大震災関連倒産」と定義し、震災発生直後の2011年3月から2020年2月末までの9年間で判明した関連倒産について集計・分析した。

東北は2年連続の前年比増加

 地域別件数をみると、9年間累計で「関東」が973件(構成比48.1%)で最多。以下、被災地である「東北」の419件(同20.7%)、「中部」の224件(同11.1%)と続いた。また、8年目以降は「東北」が2年連続で最多。直接的な被害を受けた企業が多い「東北」を中心に、震災の影響が今もなお残る。

 経過年数ごとの推移をみると、西日本を中心に6年目以降は1件も判明しなかった地域が散見された。なお、「中国」は6年目以降、「四国」は7年目以降、震災関連倒産は発生していない。

震災の影響は今も残る

 2011年3月以降の9年間で「東日本大震災関連倒産」は累計で2021件判明。震災の影響による倒産は復旧・復興の進展とともに年々減少し、「8年目」では41件と「1年目」(513件)の1割未満にとどまった。しかし直近の「9年目」は50件と、震災後に各種支援を受け経営を続けてきたが、抜本的な再生に至らず倒産した企業も目立ち、前年を上回った。東日本大震災関連倒産としては初めての前年比増加に転じ、楽観視できない状況が続いている。

 他方で、地域別ではこれまで「関東」の倒産件数が最多で推移していたが、「8年目」以降は「東北」が最多となった。特に震災による直接的な被害を受けた被災地には、今もなおその影響が残る企業もあり、完全に終息するにはまだ時間がかかると予想される。また、「東北」は社長の高齢化が進んでいるほか、後継者不在率においても3年連続で上昇しているなど、事業承継においても課題が山積しており、震災の影響とも相まって事業停止を選択するケースが増える可能性もあるだろう。

 震災からまもなく9年を迎えるが、震災が企業経営へ与えた影響は完全に終息したわけではない。2016年4月からの「復興・創生期間」においても各種支援が継続されており、復興の総仕上げに向け取り組みが進められているが、今後も引き続きハード・ソフトの両面でより実感できる経済復興の実現が求められる。