そうした現状を変えるには、認めるにせよ、禁止するにせよ、新技術の存在を踏まえた新たなルールで、「ルールのない状態」を脱する必要があるのです。すでに厚底シューズを使用している市民ランナーや、技術の進化を止めるべきではないと考える人たちは、現状の製品を現状のルールでそのまま認め、何ら規制すべきではないという意見を持っていることでしょうが、それは選手を不幸にする道です。現状の製品を認めるにしても、厚底シューズの技術をどう評価し、この先どこまでを許容するかという、厚底シューズが存在することを前提とした新ルールを設けなければ、永遠に「ルールの隙間を突いた厚底シューズによる技術ドーピング」という誹りは免れません。

レーザー・レーサーの存在を踏まえた新たなルールを設けて「高速水着(と揶揄される)時代」を終わらせた競泳界のように、陸上長距離界も「厚底シューズ(と揶揄される)時代」を終わらせるべきでしょう。それはこの技術そのものに賛成の人も反対の人も、全員が一致して取り組むべき課題です。今、この時代に能力のピークを迎える選手たちとその記録を「厚底シューズによるものという誹り」から救うためにも。

文=フモフモ編集長