前方だけを撮影する「1カメラ型」は最も広く普及しているタイプ。写真は「JVC GC-DR20」(写真:筆者)

今やドライブの必須アイテムとして知られるようになった、ドライブレコーダー(以下:ドラレコ)。

間もなく訪れる年末年始は、多くの人が帰省や行楽でクルマを利用する機会も増えてくる。となれば、気を付けるべきは交通事故だ。

いくら自分が安全に気を使っていたとしても事故に巻き込まれてしまうケースはあるし、さらに事故に遭わないまでも、無理な割り込みや極端に短い車間距離など、安全をおろそかにする“あおり運転”に遭遇することも考えられる。そんな時にドラレコは貴重な証拠として活躍してくれるのだ。

出荷台数は前年比5割増し

ドラレコは少し前まで大半が業務用途だったが、あおり運転が社会の注目を集めるようになると、その主戦場は一般ユーザーへと移り始めた。

電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2019年度第2四半期のドライブレコーダー出荷台数は、前年同期比52.5%増の131万5146台と、四半期の出荷台数としては過去最高を更新している。


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2019年度第2四半期からは業務用とコンシューマー用が別々に統計されるようになり、それによると全体の92%がコンシューマー用とのことだ。ドラレコが、一般ドライバーの間では当たり前になってきている状況が、ここからも見て取れる。

では、ユーザーはドラレコにどんな効果を期待しているのだろうか。

それは、事故発生時の状況を動画データできちんと裏付けてくれることへの期待だ。とくに自分に不利益が発生しそうな状況下では、ドラレコのデータがあるかないかで大きな違いが出てくる。その意味でドラレコはデジタルデータによる“証言”をしてくれるマシンでもあるのだ。

装着理由を見てみると、「あおり運転」や「盗難」に対する抑止効果が上位にあがる。ドラレコを装着していることを外部へ訴えることで、これらの行為を少しでも控えてもらおうというわけだ。

また、ドラレコを装着したことで自らの運転を正そうという意識も働くし、そうなれば結果として安全運転の促進にもつながることもある。一方で、ドラレコをドライブの思い出記録として活用する人もいるようだ。

ドラレコは大きく「1カメラ型」「2カメラ型」「360度カメラ型」の3タイプに分類される。

「1カメラ型」は、1台のカメラで前方のみを捉えられるタイプで、ドラレコの基本形と言ってもいいものだ。電源をシガーライターソケットから取ることを前提にすれば誰でも簡単に取り付けられ、価格も安いので最も広く普及しているタイプでもある。


「360度型」のドラレコ「コムテック HDR360G」で撮影した映像(筆者提供)

もう1つが「360度型」で、これ1台で前方から両サイド、それに車内までカメラの周囲360度にわたって撮影できる。しかし、後方の撮影には適さず、最近はリア用カメラを追加装備するドラレコも登場している。

「2カメラ型」は「1カメラ型」の本体に加え、リア用あるいは車内用カメラを組み合わせるもので、価格は少し高くなるものの、後方からのあおり運転が監視できるとして今最も人気を集めているタイプだ。ただ、リア用カメラを取り付けるには配線を引き回す手間がかかり、その分だけ取り付け工賃は高くなる。

主流は「2カメラ型」に

ほかにカーナビと連携するタイプもある。映像はドラレコ本体に記録するが、カーナビの大きな画面で内容を確認できるのが最大のメリットで、自動車メーカーの純正ドラレコにはこのタイプが多い。また、最近はWi-Fi機能を使って映像をスマホなどに飛ばす機能を備える機種も増えてきている。

では、今後ドラレコはどんな機種に人気が集まっていくのだろうか。まず言えるのが、「2カメラ型」への人気は一層高まっていく、ということ。

その理由はやはり、あおり運転対策に尽きる。これだけあおり運転にまつわる事件が報道され、取り締まりも強化されるようになると、否応なしに一般ドライバーの危機意識は高まる。あおり運転の大半は後方からの動きであることから、リアカメラを組み合わせた「2カメラ型」への関心が高くなるのもうなずける話だ。

一方で「360度型」の人気も、急上昇している。本来、このタイプは前方だけでなく両サイドからの衝突に対して効果を訴えてきたが、ドライバーが乗車中に外部から暴力行為を受ける事件が発生したことで、がぜんこのタイプに注目が集まるようになった。まだ価格は高めではあるが、確実に人気を集めていくだろう。

また、これに伴って「2カメラ型」のリアカメラを室内用として使うタイプにも目が向けられてきた。このタイプは、元々タクシーなど業務用として開発されていたが、あの暴力事件を契機に一般ユーザーからの注目も浴び始めている。

通信機能つきドラレコの可能性

では、従来からある「1カメラ型」はどうだろうか。POSレジのデータを元に調査するGfKによれば、最近は低価格機種よりも価格が高い高付加価値モデルが売れる傾向が出ているという。


ドラレコの高付加価値化が進んでおり、安全運転支援機能はその1つ。写真は「ケンウッド DRV-630」(写真:筆者)

「1カメラ型」もその例に漏れず、センサーには夜間撮影に強いソニー製CMOS「STARVIS(スタービス)」を採用する製品が珍しくなくなってきた。さらに安全運転支援機能を搭載して、速度超過や車線逸脱などを警告するドラレコも相次いで登場している。その精度から、必ずしも信頼できるわけではないが、少なからず低価格機種にはないアドバンテージが支持されているのは確かだ。

そして、ここへ来てドラレコの形態に新たな動きが出てきた。これまでドラレコは内蔵するSDカードに記録するのが役割だったが、ドラレコに通信機能を持たせて、事故の通報を自動化したり日常の運転を監視したりといった、見守り的なサービスが搭載されてきそうなのだ。

きっかけは、保険会社がこの分野に参入したことがあるが、今や時代は高齢化社会を迎え、遠く離れた両親の運転を心配する声は大きい。そうした状況にこの見守りサービスを利用することで、運転状況の可視化につながり、事故の発生を未然に防止できるようになるわけだ。

これらは業務用で普及が始まった分野ではあるが、一般ドライバーにとっても決して避けて通れない道でもある。一般的なドラレコで普及するには少し時間がかかると思うが、今後は安心安全につながる観点から、ドラレコの次のステップとして注目したい。