病院再編で厚生連30施設 一律基準「問題」9割 公表に不満あらわ 本紙調査

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 日本農業新聞は、厚生労働省が実名で公表した、再編統合の議論が必要と位置付けた424公立、公的病院のうち31のJA厚生連病院に、その影響を聞くアンケートをした。回答した30のJA厚生連病院のうち、公表は29病院(96%)が「非常に問題」「やや問題」と回答。理由は「机上の数字だけで一律の判断はおかしい」が90%を超えた。農村医療のとりでであるJA厚生連病院の実態が反映されていない基準を問題視する意見が相次いだ。

 同省は9月下旬、全国の公立病院や赤十字、JA厚生連など公的病院1455のうち、医療財政の圧迫解消などを目的に再編や統合を議論すべきだとする424病院を実名公表した。2017年6月の診療実績に基づき、がんなど9項目の診療実績が低いこと、類似の診療実績を持つ病院が近くにあるなどを基準とした。

 アンケートは11日までに31病院の院長らに記述を求めファクスやメールで送付。30病院が回答した。

 公表の受け止めを聞いたところ、19病院(63%)が「非常に問題だ」、10病院(33%)が「やや問題だ」とし、96%が問題視した。「問題はない」は1病院だった。問題があるとした29病院のうち94%が、その理由(複数回答)に「机上の数字だけでの一律の判断はおかしい」を挙げた。次いで「唐突な公表はおかしい」(55%)、「病院の努力を踏まえていない」(45%)。その他の回答には「基準は地方の小規模病院にとって難しい」「基準が偏っている」などもあった。

 実名公表による病院運営に与える影響は「深刻な影響がある」8病院(27%)、「やや深刻な影響がある」9病院(30%)で合わせて半数を超え、「影響はない」(43%)を上回った。影響がある計17病院は「病院継続の信頼性など地域住民の不安が高まっている」(55%)を最も多く理由にした。次いで「医師や看護師らの確保が難しくなる」(35%)、「再編議論の加速化につながる」(6%)だった。「風評被害で外来、入院患者数の減少も懸念される」との意見もあった。

 自由記述では、公表を問題視する意見が大半を占めた。特に基準を問題視し、「診療実績の評価が不明瞭で正当性に欠ける」、「指標は明らかな大病院偏重。定性的評価をしたことはずさん極まりない」など厳しい指摘が相次いだ。「地域医療を下支えしている実情が反映されていない」とした意見もあった。既に再編・統合した病院も公表対象に含むことを疑問視する指摘もあった。

 唐突な公表に「病院経営に対する風評被害を懸念する。県市町と協議を進めている中の公表に驚きと威圧感を覚える」「県の方針を無視した国の対応は混乱を引き起こす」とした記述があった。自治体から補填(ほてん)が受けられる公立病院と厚生連など公的病院が同じ扱いであることを問題視する意見もあった。一方で「地域医療の機能分化や連携を促進する上で、再編や統合は避けられない」との記述もあった。