東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻講師・新山龍馬氏

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―ロボットの社会実装について、現状と今後の見通しを考察しています。執筆のきっかけは何ですか。

「私は柔らかい材料を使った体で、物を優しくつかんだりするロボット技術〈ソフトロボティクス〉の研究が専門だが、最先端の技術が社会へ出て行くまでには10年、20年かかることが多く、社会との距離を感じていた。そこでロボット技術と社会の接点についてあらためて考え、社会のいろいろな分野でロボット化がどう進むかを、予想してみようと思った」

―人とロボットが共生、協働する未来社会をどのようにイメージしますか。

「ロボット化社会というと、人型ロボットが家事をする姿が想像されがちだが、現実には円盤形の掃除ロボットが働いている。想像と現実の間には相当なずれがあり、思いもよらぬ姿のロボットが製品として登場することもある。不可能を可能にする技術を生み出すことと、その技術を社会で実際に使うことは別問題で、SF(空想科学)小説のようにきらびやかな未来が訪れることは多分ないだろう。もっと地に足がついた、それでいて今より良い未来社会を思い描いた。円盤形の掃除ロボットのように多種多様なロボットが、生活のさまざまなところで活躍する社会だ」

―人型ロボットはどこまで人間に近づけるでしょうか。

「ロボットには足りない要素がまだたくさんある。特に人工知能の領域がそうだ。ロボットの物理的な動きとちゃんと組み合わせなければならない。かつてはコンピューターの中で人間らしいロジックを組み立てさえすれば、人間らしく動く賢いロボットができると考えられていた。でも研究が進むにつれ、人のさりげない行動がいかにたくさんの機能によって成り立っているのかが分かってきた」

―足りない要素は何ですか。

「例えば“モチベーション”や“エモーション”だ。人が行動を起こすきっかけは何なのか、人はなぜえり好みをするのか、赤ん坊はなぜオモチャに興味を抱くのかといったことを、追究する必要がある。これらの裏側で何が機能しているのかを突き止め、この機能を論理的に組み立ててプログラムに落とし込めば、より人間らしく動かせるだろう。それには脳科学や神経科学がもっと進み、人工知能に生かせるようにならないといけない」

―産業用ロボットは今後、どうなると予想しますか。

「状況に応じていろいろな作業に生かせる汎用性が求められ、ロボットを誰でも手軽に使いこなすためのソフトウエアを、容易に開発できる環境が重要になるのではないか」

―これからロボットと共生する一般の生活者には、どういったことを望みますか。

「今のロボットは未熟で、できないことがまだまだ多い。しかし現代人の周囲では、一見するとそれらしくない姿だが、すでに多くのロボットが活躍している。身の回りのロボットにもっと興味を持って、目を向けてほしい。それがロボットとともに生きる社会への第一歩になる」(編集委員・宇田川智大)

書籍紹介
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新山龍馬・著、四六判、176ページ、税込1,620円

若手ロボット研究者がこれまでのロボットの歴史を振り返りながら、これからのロボット技術の進化を想像し、私達の生活がどのように変化するか、また私達が描くべき未来像のヒントを提示する。ロボットと距離のある人でも、手に取りやすい内容。

著者紹介
新山 龍馬(にいやま・りゅうま)
ロボット研究者。東京大学大学院情報理工学系研究科講師。
1981年生まれ。東京大学工学部機械情報工学科を卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了、博士(学際情報学)を取得。マサチューセッツ工科大学(MIT)研究員(コンピュータ科学・人工知能研究所、メディアラボ、機会工学科)を経て、2014年より現職。専門は生物規範型ロボットおよびソフトロボティクス。
著書:『やわらかいロボット』金子書房、2018年7月

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