走りや実用性など無視できてしまうほどの衝撃の質感

 クルマのほとんどは量産前提の工業製品だけに、製造のしやすさやコストによって、デザイナーが描いた本来のデザインが失われることがありがちだ。しかし、なかには惚れ込める部位を持つクルマが存在する。

1)レクサスLCのヘッドライト

 たとえばレクサスのLCだ。内外装の凝りようはハンパなく、とくにシャープにもほどがある、アローヘッドが突き刺さるようなヘッドライトはため息がでるほどカッコいいではないか。

 それがテールランプにまでリフレインされているのだ。オーナーになったら、クルマを一周し、感動する歓びを得られるはずである。

2)ボルボの高級シフトレバー

 その高貴な質感にそそられるのが、ボルボ上級車の北欧モダンと上質さを極めたインテリア(上級グレード)に添えられる、まるで宝石のようにきらめく、スウェーデン・オレフォス社のクリスタルガラス製(量産車初)のシフターだ。ひとつに15人の職人がかかわる手作りの工芸品であり、オーナーは、乗るたびにこのシフターの美しさと冷たい感触に触れ、満足するに違いない。なんとなれば、食卓にオレフォス社のクリスタルガラス製グラスを並べることもできる。

3)アバルトのサソリマーク

 エンジンルームを開け、息を飲むような演出が施されているのが、スーパーカーではないアバルト595である。

 そのエンジンは深紅のヘッドカバーにアバルトのサソリが刻まれ、どこも調子が悪くないのに、毎日のように思わずボンネットを開けたくなるクルマである。もちろん、前後のバッジ、フロアカーペット、ペダルにまで配される色鮮やかな(ペダルを除く)サソリや、センターコンソールにある特異なデザインの丸形シフトセレクターにも、オーナーは日々、そそられるはずである。

ドアの開閉音やオフロードの走りにこだわった1台も

4)DS3の内外装デザイン

 そのエクステリアデザインの素晴らしさもさることながら、フランスのアバンギャルドなデザインセンスが昇華したアーティスティックなインテリアにそそられ、そのデザインの美しさに感動できるのが、DS3クロスバックではないか。

 インパネ、センターコンソールのスイッチ類、シートにまでダイヤモンドパターンで統一され、まさに未来のクルマ、いや、宇宙船のコクピットのようでもある!

5)メルセデス・ベンツGクラスのドア開閉音

 次に紹介するのは、音である。それもエンジンサウンドやプレミアムオーディオではなく、ドアの開閉音だ。そう、ドアを開け閉めするだけでそそられるのが、メルセデス・ベンツGクラス。オープナーを引いた時の精密感溢れるカチッという音に加え、ドアを閉めた時のガチッという硬質で重厚な金属音は、このクルマの世界最高峰の堅牢さを如実に表わしていると言ってよく、シートに座りドアを閉めれば、外界と完全に遮断された世界に誘ってくれるのだ。

6)トヨタRAV4の4WD性能

 と、ここまでは高額車、マニアックなクルマのそそられぶりを紹介してきたが、最後に比較的身近な実用車の走りでそそられる部位で締めたい。それは新型RAV4のアドベンチャーグレードの曲がりの性能である。RAV4には3種類のAWDシステムが用意されているが、ガソリン車のアドベンチャーグレードのみに採用される、世界初、新型RAV4のために開発された「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」についてだ。

 後輪左右のトルクを別々に制御(0〜100%)するトルクベクタリングコントロールによって、オンロードはもちろん、オフロードでさえ、曲がる方向の後輪外側から押し出されるような、狙った方向にグイグイ曲がるコーナリング性能を、ハイレベルな安定感とともに発揮してくれるのだ。

 その気持ち良すぎる性能を、本格クロスカントリーに舵を切ったSUVで得られるのだから、RAV4全グレードで山道やダート路を走り込んだボクとしては、大いにそそられている。2リッターガソリンエンジンを高回転まで回したときの想定外の快音、アドベンチャーグレードにのみ用意される、アッシュグレーメタリック×シアンメタリック、アッシュグレーメタリック×アーバンカーキのツートーンカラーのボディカラーもしかり、である。