深川資料館通り商店街(東京都江東区)では、現在「かかしコンクール」が開催されている。

22回目を迎える今年は、内田裕也さん・樹木希林さんや、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」でお馴染みのチコちゃん、ジャスミン(アラジン)や鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)など、県内外から集まった約150体の多彩なかかしがずらりと並んだ。

そんな中、ひときわ異彩を放っているのがこの方だ。


おや?(2019年9月撮影)

東京五輪のボランティア服を着用し、バンクシー(世界各地で風刺画をゲリラ的に描くストリートアーティスト)作とおぼしき絵の前にしゃがむ小池百合子都知事。そう、これは今年1月に小池知事が自身のツイッターに投稿した写真を、忠実に再現した「かかし」だ。

しゃがむ様子や柔和な表情、地面についた服のしわまで、思わず足を止めてしまうほどの完成度の高さだ。当時はかなりの話題となった投稿の再現だけに、ツイッターでも話題になっている。

作品のタイトルは「東京への贈り物」。Jタウンネットは9月18日、作者の7Kgmさんを取材した。

銀賞を受賞するも「少し残念です(笑)」


並べると似ている?(向かって右は小池都知事のツイッターより)

7kgmさんはかかしコンクール初参加。プロではないが美術系の学校に在籍し、2019年から制作活動を開始。小池知事とバンクシーのビジュアルが非常に良かったため、何かの形で作品にしたいと思っていた。

7kgmさんの夫が前年からかかしコンクールに出品していたこともあり、今回の応募に至ったという。

こだわったのは強度と軽さ、誰が見てもわかる題材であることだ。展示期間中には台風15号が首都圏に上陸し、多少形が変わってしまったというが、台風通過後に記者が現地を訪れてもさほど影響はないように見えた。

しっかりした作りながらも、かかしは女性が片手で運べるくらいに軽い。今回のかかしコンクールのテーマは「オリンピック」「リアル」「自由部門」だが、それらをすべて兼ね備えたかのような作品だ。


目が合うとなんだか緊張する

作品は銀賞を受賞。7kgmさんはこの結果に対し、

「少し残念です(笑)」

と話している。

コンクールは9月23日まで。作品は会期終了後に順次撤去されるため、小池都知事のかかしを生で見たい人は、早めに訪れた方がよさそうだ。

かかしコンクール、きっかけは「商店街をよく見てほしいと思って」


内田裕也さん・樹木希林さん

それにしても、かかしがずらりと立ち並ぶ姿は迫力がある。近くに田んぼがあるわけでもない商店街で、なぜこのようなコンクールが始まったのだろうか。かかしコンクールを担当する、あづま屋文具店の分部登志弘さん(81)に話を聞いてみた。

20数年前、分部さんは東京都から補助金を出すため商店街で何か企画をしてほしいとの話を受けた。

稲穂が好きだという分部さんは、以前お店に来ていた営業マンに稲穂をもらってかかしと一緒に外に並べたことを思い出し、かかしコンクールの開催を思いついた。コンクールの形をとったのは、「かかし祭り」は他の地域でもたくさんあるという理由からだという。


「アラジン」のジャスミン

かかしコンクールをやると決めた後も、「なんでこの場所でかかしなのか」という批判は相次いだ。そのため呉服屋さんに骨組みに着物を着せてもらい、商店街の人に見せて理解を求めた。「作り方が分からない」という人には骨組みを配るなど、参加しやすい環境を作った。

分部さんは、

「この商店街は繁華街と違って空いているけど、かかしを見て歩いていけばこんなお店もあったんだって気づくよね。商店街をよく見てほしいと思ってかかしコンクールにしました」

と、その意図を語る。

次第に出品数も増え、多い時は180体ほどの応募があった。過去には新潟・越後妻有で3年に1度開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」にも出展するなど、商店街イベントの枠を超えている。

分部さんも他県に赴いてかかし作りのワークショップを開くなど、まだまだ元気に活動しているが、かかしコンクールの今後についてはこう話している。

「これから先、続くか分からない。絶対残せとは言えないしね...」

人通りの多くない閑静な商店街だが、近所の小学生が「すごい」と声を上げながら通り過ぎ、写真を撮るため立ち止まる人も。夜はちょっと怖いかもしれないが、この先もかかしで賑わう商店街であることを願う。

(Jタウンネット編集部 笹木萌)