JR東日本のE2系電車は、新幹線ネットワークの拡大などに対応するため開発されました。長野新幹線「あさま」や東北新幹線「はやて」などに導入され、JR東日本の新幹線の主力車両に。海を越えた中国でもE2系タイプの車両が走っています。

長野新幹線の開業などに対応

 E2系電車は1990年代半ばに登場したJR東日本の新幹線車両です。1997(平成9)年10月に開業した北陸新幹線 高崎〜長野間(長野新幹線)を走る「あさま」への導入と、同年3月にデビューした秋田新幹線「こまち」と連結して走る東北新幹線「やまびこ」の高速化を目的に開発されました。


長野新幹線の開業にあわせて開発されたE2系(2011年11月、恵 知仁撮影)。

 長野新幹線「あさま」用のE2系は8両編成。車体は上半分が白、下半分が紺で、赤の帯をアクセントに入れています。側面にはその風をイメージしたエンブレムも描かれました。

 長野新幹線は長野県と群馬県の県境(碓氷峠)に急な勾配があり、急勾配での走行に対応したブレーキ(抑速回生ブレーキ)を搭載。設定した速度で走り続ける機能(定速運転機能)も導入されました。また、JR東日本の新幹線で使っている交流電気の周波数は50Hzでしたが、長野新幹線が走るエリアの多くは60Hzのため、どちらの周波数にも対応できるようにしています。

 東北新幹線「やまびこ」用のE2系も基本的な性能や構成は「あさま」用と同じで、車体の塗装も白と紺がベースですが、帯の色はのちにピンク色に変わり、エンブレムは青森のリンゴをイメージしたものになりました。また、「こまち」用のE3系電車と連結して運転することから、それに対応した連結器も搭載しています。

 このように、E2系は電源周波数の違いや急勾配などさまざまな条件に対応。JR東日本が運営する新幹線なら在来線を改良したミニ新幹線を除いてどこでも走れる、汎用性の高い車両といえます。ちなみに、営業運転の最高速度は275km/h(長野新幹線は260km/h、上越新幹線は240km/h)ですが、設計上は315km/hとされ、走行試験では362km/hを記録しています。

乗り心地を向上させた改良型も登場

 東北新幹線 盛岡〜八戸間の延伸開業を2年後に控えていた2001(平成13)年には、改良型のE2系が製造され、東京〜八戸間(のちに東京〜新青森間)を結ぶ「はやて」に導入されました。


改良型のE2系は側面の窓が大きくなった(2017年8月、草町義和撮影)。

 10両編成で登場し、長野新幹線を走るための機能は省略。車体の構造を変えて車内の騒音を抑えました。窓の大型化も図られ、外の景色が見えやすくなりました。普通車の先頭車2両とグリーン車1両はフルアクティブサスペンションを搭載。それ以外の車両もセミアクティブサスペンションを搭載し、乗り心地が向上しています。

 E2系はJR東日本の新幹線ネットワークの拡大に合わせて数を増やし、1995(平成7)年から2010(平成22)にかけて502両が製造されました。東北新幹線「はやて」「やまびこ」「なすの」や上越新幹線「とき」「たにがわ」、長野新幹線「あさま」と幅広く使われ、JR東日本の新幹線の主力車両となったのです。

 しかし、後継車のE5系電車とE7系電車が登場したため、2014(平成26)年から廃車が始まりました。2017年には北陸新幹線から引退。2019年4月1日時点の車両数は最盛期の半分ほどです。

 E2系の活躍の場は東日本だけではありません。E2系を製造した川崎重工業が中国のメーカーと提携し、中国の在来線向け車両(中国の在来線は日本の新幹線とほぼ同じ規格)としてE2系ベースのCRH2形電車を開発。2007(平成19)年にデビューしました。

 CRH2形は改良型のE2系とほぼ同じ仕様で、初期に製造された車両は見た目もE2系にそっくり。食堂車と寝台車を連結した編成や、最高速度350km/hの営業運転に対応した高速鉄道向けの車両も製造されました。