D2C(Direct To Consumer:ネット直販)のマットレスブランド、パープル(Purple)は安価なデジタル動画の視聴を通じて、消費者の注目を集めることに重点を置くメディア戦略を掲げて、2016年に設立された。現在は、デジタルメディアに限定した支出から、リニアTVを含め、さまざまな支出の多様化へと移行している。

「大半のデジタルチャンネルと比較しても、CPMに関してテレビは競争力がある」と、eメールで同ブランドの代表者が回答している。パープルは、成果を上げているGoogleとFacebookのショッピングフィードも拡大しつつ、Snapchat(スナップチャット)やTikTok(ティックトック)のような新しいチャンネルも試している。

支出の拡大において、同社はD2Cブランドにとってありがちな成長へのハードルとアトリビューション(原因・起因)に関する悩みに直面している。同時に、新しいチーフ・マーケティングオフィサー、チーフ・ブランドオフィサー、チーフ・ファイナンシャルオフィサーを含む、3つのCレベル職の人材も積極的に探している(同社は、Cレベルの人材探しに関して詳細は開示していない)。

アトリビューションを重視



その戦略は依然として動画に大きく依存している。動画は、飽和状態のD2Cマットレスカテゴリーにおける同ブランドのブレイクアウト戦略の鍵となっている。6月最終週、同社はテレビで新しい広告を流し、さらにNBCで今年の夏に新しい番組、「ブリング・ザ・ファニー(Bring the Funny)」を担当するコメディグループ、ジェイケイ・スタジオ(JK Studios)とともにブランデッドコンテンツシリーズをYouTubeで初公開した。ジェイケイ・スタジオのオーディエンスが拡大するにつれて、パープルのオーディエンスも拡大することを期待していると、パープルの買収担当シニアディレクター、ダン・ビショフ氏は述べた。

同社はまた、ネイティブ広告の支出をベライゾン・メディア・グループ(Verizon Media Group)に移行した。3月にベライゾン・メディア・グループが発表したパープルのケーススタディは、インタラクティブなネイティブ広告フォーマットに関するベライゾンとの提携がパープルの広告費用対効果のベンチマークを130%上回る結果に貢献したことを示している。

さらに多くのオンラインチャンネルや実店舗で、同ブランドのマットレスを購入できることと合わせて、そのメディアミックスに12以上のチャンネルを追加したため、どのメディアバイが販売に繋がっているのかを同社が判断することは、とても難しくなっている。だからこそパープルは、メディアでどこに支出を増やすべきかを判断することが可能になるように、アトリビューションを理解することを重視している。

メディアバイイングは、社内チーム、そしてモーダス・ダイレクト(Modus Direct・テレビ広告)、エージェンシー・インサイド(Agency Inside・デジタル広告)、およびSMI(音声とポッドキャスト)などの社外エージェンシーによって行われている。同社は支出先を常に変えているため、社内メディアチームと社内データチームを持つことは、その戦略に影響力を持つ。「理解して、微調整する必要がある。このことに決まりはないし、そんなものは忘れなければならない。常に、業務を進めながら、それを微調整しなければならない」と、ビショフ氏は語る。

物理的なプレゼンス



2018年、パープルはオンラインメディア、屋外、テレビ、新聞、雑誌、ラジオなどに1700万ドル(約18.4億円)を支出したとカンター・メディア(Kantar Media)は伝えている。カンターによると、これは2017年の160万ドル(約1.7億円)から大幅に増加しており、2018年の第1四半期の360万ドル(約3.9億円)と比べて、2019年第1四半期にパープルは670万ドル(約7.2億円)を支出したとも伝えている。米DIGIDAYがすでに報じているように、同社はグローバル・パートナー・アクイジション・コーポレーション(Global Partner Acquisition Corp)に11億ドル(約1190億円)で2017年に売却されている。ビショフ氏は、支出金額、もしくは同社が支出を増やしている対象の発生率、または増加率については、コメントを控えている。

この1年半のあいだに、パープルは、マットレス・ファーム(Mattress Firm)、メイシーズ(Macy’s)、デンバーマットレス(Denver Mattress)、ベッドバス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)など全米の1100店舗で物理的なプレゼンスを確立している。ほかの問題は、パープルの長い販売サイクルだ。顧客が広告を目にしてからマットレスを買うまで3カ月から1年もかかる可能性がある。

「商品を購入できる場所は複数ある。YouTubeで広告を見て、テレビでそれを見て、そしてFacebookでリターゲティング広告をいくつか目にして、マットレス・ファームに行って商品を購入する。すると我々は、その購入につながった起因を見失ってしまう」と、ビショフ氏は述べた。

包括的な試みを実践



「パープルは、この分野でもっとも包括的な試みを実践しているブランドのひとつなのかもしれない。ほとんどのD2Cブランドは、Facebookで効率的に1カ月あたり500万ドルから1000万ドル(約5.4億円から10.8億円)を難なく費やすことができる。しかし、オフラインでは残念ながらアトリビューションの追跡に最適な方法は存在しない。アトリビューションを突き止める公式の方法はない」と、D2Cストラテジスト兼コンサルタントのニック・シャルマ氏は語る。さらにシャルマ氏は、アトリビューションに関する苦悩はパープルの成長に特有のものではなく、成長するD2Cブランドにとって典型的なものだと、つけ加えた。

無数にあるD2Cブランドは、FacebookとGoogleへ主に支出することから、もっと多くの従来型のメディアチャンネルへの支出へ移行している。そうすることで、データ重視のブランドは、アトリビューションだけでなく、物理的なプレゼンスをどのように広げるか、どんな製品を作るか、そして新しいカテゴリーに参入すべきかどうかを判断することに関して、パープルに似た成長の痛みに直面している。

パープルの立ち上げ当初の頃は、マットレスカテゴリーの検索用語に支出する多くの競合企業がキーワード価格をクリックあたり約20ドル(約2100円)まで上げてしまったため、同社は検索用語よりも一般的に安く購買できるオンライン動画にフォーカスしていた。同社のブランド認知度が高まるにつれて、「一番良いマットレス」といったキーワードよりも安価な、自社ブランド名に基づいた検索を実行することができるようになった。現在、同社はさまざまなチャンネル全体に支出しており、社内データチームを利用して、効果が上がっているものとそうでないものを特定する方法を見つけ出している。

「アトリビューションは一層分かりにくくなっている。インプレッション単価が高くなるほど、インプレッションの質も劣ってくる」と、ビショフ氏はいう。

マルチタッチアトリビューション



パープルは、マルチタッチアトリビューションを理解することで、これを解決しようとしている。「おそらく、それはマーケターが現在抱えているジレンマだろう。GoogleとFacebookは互いにうまくコミュニケーションを取れていない。ある人がGoogleで広告を目にして、ある人がFacebookで広告を目にしてコンバージョンする。広告を出しているFacebook、Google、そしてほかのどんなチャンネルでも、そのコンバージョンに寄与したと主張する。それぞれ異なるプラットフォームから収益をあげることができているのなら、今年の我々の収益は2倍になるだろう」と、ビショフ氏は述べた。

同社は、さまざまな消費者の接点に沿ったアトリビューションが何かというディレクショナルデータ(directional data)をデータチームに把握させることによって、その悩みを解決することをめざしている。「何が意思決定にもっとも影響を及ぼしているのかについて、より良いアイデアが得られたら、異なる分野にもう少し多くの予算を使うことができる」と、ビショフ氏は語った。

Kristina Monllos(原文 / 訳:Conyac)