ウィンブルドン 、アーカイブ映像で「マネタイズ」を計画
将来の収益安定化を目指し、ウィンブルドン選手権(全英オープンテニス)のビジネス面を担う幹部らは、過去の試合に目を向けている。アーカイブ映像を活用して、新たなファン層にリーチし、さらなるスポンサー獲得を狙う意向だ。アーカイブ活用の手立て
ウィンブルドン選手権は、知名度こそ世界有数のスポーツイベントかもしれないが、収益的には、世界最高峰からほど遠い。ファイナンシャル・タイムズ紙によると、英会社登記所に提出した最新報告書に記載の、2018年7月までの1年間の収益2億5670万ポンド(約308億円)のうち、半分以上を放送権料が占めていた。これに対し、[英サッカー]プレミア・リーグは2019年から2022年までの放送権料を45億ポンド(約5340億円)という破格の高値で販売している。
この6週間キャンペーンの一環として、ビヨン・ボルグ選手とジョン・マッケンロー選手による1980年の決勝戦を多角的に再体験できる劇場イベントを開催した理由も、そこにある。バーチャルタイムカプセルと称されたこのイベントにおいて、ウィンブルドン運営陣は自身のソーシャルメディアチャンネル上で、実際の試合のアーカイブ映像を公開した。さらに、100を越えるコンテンツをウィンブルドンの既存チャンネルだけでなく、今回のパートナー「リマッチ(Rematch)」のチャンネルでも配信。後者には、決勝戦を再体験するだけでなく、そこに至るまでの試合を時系列で辿りたい人に向けた没入型コンテンツを用意させた。デジタルエージェンシー、セヴン・リーグ(Seven League)が制作したこれらのコンテンツには、決勝当日の新聞記事のYouTube配信から、再現映像をもとに制作した縦型動画のインスタグラム・ストーリーズ配信まで、さまざまなものを網羅した。
この戦略が成功した暁には
初の試みとなるこの再体験イベントは、あくまでも注目を集めるための実験的な意味合いが強い。ただ、これが成功した暁には、2020年、同選手権をすでに放送している局への販売を計画しており、フランスと中東のビーイン・スポーツ(beIN Sports)、スペインのテレフォニカ(Telefonica)、日本のNHKなどを候補として考えている。実際、テレビとオンライン両面での露出増は、ウィンブルドンが欧州のスポーツスポンサーシップ市場へさらに進出するための一助になりうるだろう。ヨーロピアン・スポンサーシップ・アソシエーションによると、2018年、同市場の規模は過去最高の200億7000万ユーロ(約1.9兆円)に上った。
「この大会をほかの市場にも売り込み、国際的なコンテンツにしていきたい」と、ウィンブルドン選手権の運営組織オール・イングランド・ローン・テニス・アンド・クロケット・クラブ(The All England Lawn Tennis and Croquet Club)のマーケティング&コマーシャル部門トップ、ジェームズ・ラリー氏は語る。「理想としては、大会を放送局に売り込むためのアクティベーションプラットフォームをグローバルパートナーと共同で営みたい」。
計画が首尾よく進展した場合、主な収益源はテレビとなるが、ウィンブルドン運営陣は同時に、デジタルプラットフォームからの、なかでも再現試合に関するコンテンツのオンライン配信による収益増も視野に入れており、なによりもマネタイズにつながる新たなインベントリの創造を狙っている。スポンサーシップ契約価値の引き上げをフォロワー数だけに頼る姿勢は、自身のデジタルアセットに然るべき利益を求めるスポーツライツオーナーにとって、もはや十分な戦略ではない。
Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)
Image courtesy of the All England Lawn Tennis and Croquet Club.
