WPPとアクセンチュア(Accenture)の小競り合いが険悪な様相を見せている。広告業界の情報筋によると、エージェンシーの持ち株グループであるWPPは、アクセンチュアがWPPの情報を利用してWPPの価格を下回る有利な広告予算を提案する可能性があるとして、メディア監査用のデータ共有を拒否したとのことだ。

さらに、米DIGIDAYが確認した電子メールには、WPPは2020年、アクセンチュアが管理するメディアピッチへの参加を見合わせるとあった。WPPのメディア購入部門であるグループ・エム(GroupM)と仕事をしているある広告エージェンシー幹部は、WPPはすでに、アクセンチュアの監査人が監督する世界的なピッチからメディア投資への費用や量的データを引き上げるという脅迫めいた発言をしていると話す。「アクセンチュア・インタラクティブ(Accenture Interactive)が、ピッチにおいて監査人とある種のメディアエージェンシーの両方の役割を果たして、広告主がアドテクをインハウス化する手助けしようとしていることに原因がある」と、この幹部はいう。

この件についてWPPからもアクセンチュアからもコメントは得られていない。

WPPによるアクセンチュア外し



エージェンシーは通常、広告主が、購入されたメディアの質に対して自社の価格がどの程度競争力があるかを知りたいときや、エージェンシーごとのメディアレートを比較したいときに、アクセンチュアのような監査人に自社のメディアデータへのアクセスを認めている。アクセスされるデータには、テレビ広告の延べ視聴率あたりのコスト、ディスプレイ広告のクリック率(CPM)、ビューアビリティ(可視性)率、広告のリーチが同一人物がそれを見た回数と同等か、などが含まれる。

WPPがメディアを購入している価格をアクセンチュアが密かに知っているとしたら、このコンサルタント会社の広告部門はその情報を利用して、ピッチのなかでより安価で、より効果的なメディアレートを広告主に提供する可能性がある。そうした不安は、2018年にアクセンチュア・インタラクティブがプログラマティック購入部門の創設を明らかにしてから一層広がっている。

アクセンチュアは常に、監査部門がエージェンシー部門の競争を手助けすることを防止する社内バリアが存在すると言い続けてきた。しかし、そうしたバリアが十分に機能していると感じているエージェンシーはいない。

「公平性を危うくするだけでなく、メディア監査役がクライアントやエージェンシーの機密のメディアデータ、財務情報にアクセスしているような市場に対して、競争力のあるメディアサービスを合法的に提供できるビジネスはない」と、英国の広告業界団体IPA(Institute of Practitioners in Advertising)の事務局長を務めるポール・バインズフェアー氏はいう。「透明性が脚光を浴びている時代に、このような自明の利益相反は受け入れられない」

ほかの持ち株グループ5社がアクセンチュアに対して同様の動きを取っているかどうかは不明だ。ハバス(Havas)とIPGはコメントを拒否し、ピュブリシス(Publicis)や電通イージス(Dentsu Aegis)、オムニコム(Omnicom)からのコメントは、本記事発行までに得られなかった。

この騒動の行きつく先は



かつてグループ・エムで働いていた別の幹部は、WPPによるアクセンチュア外しの良い点は今後を見ないとわからない、と話す。

この幹部は次のように述べる。「これはWPPの上層部が出した結論だが、世界レベル、地域レベルで、どのような影響が出るかを見極めるのは難しい。こうした姿勢は、世界の広告主たちが使ってほしいと思う監査人がアクセンチュア以外に多くはいない現状のなかで、WPPが監査されることに『ノー』と言っていることを示唆している。広告主に対してこのボイコットを正当化する説得力のある議論をする必要がWPPにはある。エージェンシーとして、多くが同じ利益相反を体験するのではないかと思う」。

多くの場合クライアントは、自身のメディア投資に関連するデータを所有していることから、WPPがアクセンチュアに害を与えるためには、WPPのクライアントもアクセンチュアとの付き合いを拒否する必要がある。広告主が全データを所有しているかどうかは、エージェンシーとの契約による。ときにはエージェンシーがクライアントの名前でメディアを購入し、データを所有していることもある。広告主がデータを所有している場合、そのデータは、エージェンシーとの契約に織り込まれている人間や方法論、結果を測る監査会社との長年の関係性のなかでまとめられることが多い。そこから完全に離れることは、エージェンシーが潜在的な競合相手について不満を抱くことより、監査役にどれだけ満足しているかに依存している広告主にとっては難しい注文だ。

「利益相反の可能性は、ほとんど例外なく、マーケティングやメディア業界で仕事をしているエージェンシーグループ、監査役、コンサルタント会社のなかで至るところにあるというのが不愉快な真実だ」と、ボーダフォングループ(Vodafone Group)のコンサルタントでかつてメディア担当部門のグローバル責任者を務めたポール・エバンズ氏は話す。「そうした対立が管理され、責任が問われているかどうかは、最終的には広告主の姿勢にかかっている。つまり、彼らがそれを問題と感じているかどうかだ」。

次世代のメディア監査サービス



たとえば食品メーカーのマース(Mars)は、アクセンチュアと袂を分かった2020年以降に、メディア監査を行う新ビジネスを模索していると、審査の知識を持つ情報筋はいう。

マースは2018年8月、メディアコム(Mediacom)をグローバルメディアエージェンシーに指名しているが、このタイミングでの動きは、WPPによるアクセンチュアへの反撃に承認の印を与えるもののように見えるかもしれない。だが、これを取り巻くすべての要因が、単にモチベーションだけの問題ではないことを示唆している。マースは以前から時々、メディアの効果を厳密に把握する必要性について声高に主張し、昨年の審査ではこの課題を中核にしていた。アクセンチュアがメディア投資の透明化を助けていると考えたとしたら、エージェンシーがなんと言おうと、マースはアクセンチュアを使い続けたはずだ。

デジタルメディア・コンサルティング企業デジタルデシジョン(Digital Decisions)の最高経営責任者(CEO)であるルーベン・シュラーズ氏は次のように語る。「コストベースのプールベンチマーキングはデジタルメディアの目的には合わないので、次世代のメディア監査サービスへの需要が高まっている。特に、監査方法やデジタルメディアの審査に関するイノベーションの欠如が、業界にいる歴史あるプレイヤーから広告主が離れていく共通の理由だ」。

アクセンチュアがどうやって広告予算を稼ぐのかについての懸念は、同社のエージェンシービジネスにまだ影響を及ぼしていない。最新の四半期業績報告によると、アクセンチュア・インタラクティブは2019年に20%以上の収益成長を予測されている。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)