新システムでさらに増大したのが1トップ大迫への負荷。サポートを受けられない場面が多々あった。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 なんとも娯楽性に欠けた、物足りない内容のゲームだった。
 
 日本代表がどれだけ攻勢を仕掛けてチャンスを生み出そうが、ゴールはどんどん遠のくばかり。トリニダード・トバゴ戦が行なわれた豊田スタジアムのチケットは完売していたと聞く。ファンが支払った代金に見合ったパフォーマンスを示したとは、とうてい思えない。
 
 本来ならあのような大胆なテストは、練習場でこなしてほしい。現実的にその時間がないから強化試合で試したのだろうが、お粗末にすぎる90分間だった。
 
 酷い出来だったのは確かながら、収穫がなかったわけではない。オプション探索は重要なアプローチだ。それにトライし、大いに空回りした。監督と選手たちはそれなりの手応えを口にしていたわけで、ネガティブにばかり捉える必要はない。
 
 水曜日のゲームの最大のポイントは無論、森保ジャパンで初めて導入された3バックの出来映えだった。もちろん、指揮官・森保にとっての“初”ではない。むしろサンフレッチェ広島時代に代名詞としていたシステムであり、彼はそれを駆使してJリーグを3度も制している。青山敏弘を経由して、深い位置を起点とした鋭いカウンターが特徴的だった。佐藤寿人や浅野拓磨のダイナミックな走りで、ものの見事に敵の裏を取っていたのが想起される。

 
 だが、今回の森保ジャパンのアプローチはすいぶんと異なっていた。キャスティングが違うのだから当然だ。カウンター志向ではなく、どの方向からでも攻め込む、連続的な攻撃を仕掛けるための選手起用が見て取れた。大迫勇也に佐藤や浅野のように自由に走り回る役割など、求めるべくもない。
 
 いったいどうして、3バックをテストするに至ったのだろうか。
 
 ひとつには、ずっと採用してきた4バックシステムに問題はない、もはや十分に計算が立つと指揮官が判断したからだろう。これからも4バックが基準型と見て間違いない。いまのうちにオプションを増やしておきたいと考えるのは、チームの成長過程における自然の流れだ。
 森保ジャパンの弱点は明白である。
 
 がっちりと守備を固めてスペースを消してくる相手に手を焼き、突き崩す攻撃の迫力とバリエーションに乏しい。さらに、4−2−3−1でかさにかかった攻撃を仕掛けると、どうしてもカウンター対応に脆さが出る。ふたりのセンターバックだけでは凌ぎ切れない。この9か月間で何度も目の当たりにしたシーンだ。
 
 4バックで手詰まりになったとき、3バックが質の高いオプショとして用意できていれば、一連の悩みを解決できるかもしれない。試合中の4から3へのシステムチェンジによって、日本の攻撃の重心がやや後方に下がれば、相手は大いに戸惑う。どこからボールが出てくるか読み切れなくなれば、おのずとスペースは生まれてくる。ワールドカップのアジア予選を睨めばなおさら有意義なオプションだろう。
 
 3バック+2ボランチはカウンター封じには効果てきめんで、ウイングバックは位置取りによってはサイドの裏のスペースを突かれやすいが、百戦錬磨の長友佑都と酒井宏樹なら、そんな心配はさほどしなくてもいい。実際にトリニダード・トバゴは好機をほとんど作れなかった。守備面については及第点が付けられるだろう。

 
 ひるがえって攻撃はどうか。得点を挙げられなかった事実が重くのしかかる。
 
 普段の4−2−3−1ではなく、この日は3−4−2−1。純粋に攻撃の枚数がひとつ少なくなったことで、1トップである大迫の負担が増大した。中島翔哉、堂安律のシャドーコンビによる局面打開に期待がかかったが、こちらも結果を残せていない。やはり彼らふたりはワイドなポジションからタスクを担うのが得意なのだ。4バック時はサイドバックの長友、酒井と絡みながら波状攻撃を仕掛けたものだが、今回はそのような美しいコンビネーションはすっかり影を潜めた。その点ではガッカリした、と言うほかない。