気候変動の情報開示、なぜ日本はトップランナーに躍り出たのか
TCFDがG20の要請を受けて2015年12月に設立したことは広く知られていますが、歴史が動いたのはその3か月前にさかのぼります。当時、イングランド銀行総裁でFSB議長だったマーク・カーニー氏が英国ロイズ保険組合での講演で、気候変動問題の本質を捉えた講演を行っているのです。
「気候変動の影響は食糧や水の安全保障に加え、政治的不安定性などに対して生じることが予想されていながら、なぜ問題解決の取り組みがもっと行われていないのか」と、金融機関が気候変動という潜在リスクに対応しないまま突如、これが顕在化し、金融システムに甚大な影響を及ぼすことに警鐘を鳴らしたのです。
TCFDは2017年に統一的な情報開示のフレームワークを発表しました。しかし、分かりにくい部分もあります。とりわけ、将来の社会像を起点として、事業を継続するための戦略を立案し、これを開示する「シナリオ分析」はなかなか手強い概念です。気候変動関連の情報開示を求める国際的な潮流を踏まえ、日本からの情報発信を促すため、私が座長を務める経済産業省の研究会では、これを読み解くガイダンスを2018年末に策定しました。
力点を置いたのは、気候変動リスク・機会が異なる業種ごとに望ましい戦略の示し方や開示ポイント、視点を解説したことです。この結果、産業界の取り組みは加速度的に広がりました。同時に政策的にも大きく舵が切られました。TCFDを、日本の強みを国際的に発信する機会と捉え、官民一体で対応する機運が高まったのです。
「サプライチェーン革命」が起こる
実はこの5月、大きなトピックスがありました。TCFDの国別賛同機関数で、これまで第3位だった日本が一気に首位に躍り出たのです。周回遅れのようにみられていた日本の巻き返しは特筆すべきことでしょう。
