代表チームがざわついている。日本代表だけでなく、五輪世代のチームも、U−20日本代表も、である。

 5月下旬開幕のU−20日本代表のメンバーから、久保建英や安部裕葵らが選外となった。南米選手権(コパ・アメリカ)のメンバーに、彼らは選ばれる見込みだ。

 6月4日に18歳の誕生日を迎える久保は、早ければ翌日のキリンチャレンジカップで日本代表デビューを飾るはずだ。5日にトリニダード・トバゴと、9日にエルサルバドルと対戦するキリンチャレンジカップは、コパ・アメリカに出場するチームの準備となるべきものだからだ。

 久保らはU−20W杯でフル稼働したほうがいい、との意見はあるだろう。同世代の選手が集う大会でしのぎを削り、一発勝負のノックアウトステージを勝ち上がっていくことができれば、選手にもチームにも財産になる。今大会はポーランドで開催されるので、ヨーロッパのクラブのスカウトの目にも止まりやすい。

 一方で、日本代表での経験も成長剤となる。

 コパ・アメリカのグループステージは、中2日か中3日で行なわれる。試合はすべて違う都市で開催されるので、国内移動もある。選手のローテーションは想定の範囲内だ。五輪世代を中心としたメンバー編成で臨むことを考えても、森保一監督はより多くの選手をピッチに立たせるはずだ。 

 コパ・アメリカではスカウトのアンテナに引っかからない、ということもない。お目当ての選手をチェックするつもりが、意外にも相手に気になる選手がいた、というのは良くあることだ。コパ・アメリカという大会で将来性を感じさせれば、ヨーロッパのスカウトに注目される可能性はある。

 さて、ここまでは私たちの事情である。

 コパ・アメリカにフル代表で挑めないのは、日本の国際的な立場としてどうなのだろうか。南米王者を決める大会に2軍と言っていいチームを送り込むのは、個人的にとても失礼な印象を受ける。南米連盟の同意をあらかじめ得ているとしても、居心地の悪さを感じてしまう。

 ウルグアイ、チリ、エクアドルとのグループリーグが3連敗に終わるだけでなく、全試合で大敗したら──それも十分に考えられることで、本当にそうなったら、自分たちのブランドを傷つけることにならないか。「日本は東京五輪世代で参加したから、大敗もしかたないだろう」と、世界中の国が理解してくれるはずがない。

 U−20ワールドカップも“微妙な”大会になってしまった。90年代にはベスト8入りが驚きでなく、準優勝したこともある大会である。10年ぶりの出場となった17年大会でも、ベスト16入りしている。今回もノックアウトステージ進出はノルマになるはずだが、主力選手を欠いてしまっている。

 影山雅永監督と選手たちは、言い訳を用意しないだろう。それにしても、すでにエクスキューズはあるのだ。上位進出を逃しても、チームを責められないだろう。つまりは負けても評価が難しい大会、ということになる。
 
 コパ・アメリカにはヨーロッパでプレーする主力の出場が難しいことも、Jリーグと日程が重なってしまうことも、いきなり発覚したわけではない。事前に分かっていたことである。それでも参加に踏み切った必然性が「東京五輪世代の強化」だとしたら、違った選択肢があったのではないかと思う。大学生チームが出場する予定のトゥーロン国際に、五輪世代を派遣しても良かっただろう。久保や安部らはU−20ワールドカップでいい。
 
 より根本的な問題をあげれば、シーズン制があげられる。U−20W杯のメンバーには、所属クラブで定位置をつかんでいる選手もいる。スタメンに定着していないまでも、リーグ戦に絡んでいる選手は少なくない。選手を送り出すクラブ側からすれば、貴重な戦力を失うことになる。優勝、昇格、降格といったものはまだ輪郭を帯びていないが、この時期の勝敗も等しく重みを持つ。
 
 ヨーロッパと同じ秋春制のシーズンなら、少なくとも国内クラブの協力は得やすい。「1クラブから何名まで」といった制限を、設けなくてもいいだろう。
 
 シーズン制には多くの論点がある。それは分かっている。だが、クラブの利益を損なわず、不公平感を生まずに代表強化をしていくには、どこかで歪みが生じる。そして、このまま春秋制を採用していけば、いつかまた今回に類似した問題が起こるのは明らかである。