ただこれは、実際には苦境に陥った大宇造船の政府救済策に過ぎないとの見方もあり、日本政府は大規模金融支援が世界貿易機関(WTO)の補助金協定に違反する疑いが強いとして、18年11月、韓国をWTOに提訴している。単に大宇造船の救済なら合併新会社が安値受注をさらに加速させ、市況が悪化する懸念もある。

 日本造船業界もこの間に大きな変化を遂げた。かつては三菱重工業や三井造船(現三井E&SHD)、IHIなどの総合重工系メーカーが国内建造量シェアで上位を占めていた。

 だが、船価下落と過当競争の中、大手は造船事業を分社化して、相互に統合させる動きが加速。13年にはIHIとJFEホールディングス(HD)の造船部門が統合し、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が誕生した。

一方で川崎重工業と三井造船が同年、経営統合を断念するなど、再編の動きは必ずしも一直線には進んでいない。

 造船は船体の溶接、スクリューの仕上げ加工などに高精度の熟練技が要求される。船の種類はコンテナ船、ガス船、客船、タンカー、貨物船などさまざまで、各メーカーともそれぞれ得意な船種へ特化を進めている。加えて造船所は地方雇用の受け皿という基幹産業の側面もあるため、容易には合併・集約は進まない。

 とはいえ、このままで各社が小規模事業所を抱えて、生産性の向上と高採算部門シフトだけで生き残れるかというと、それはまた別問題である。

AI・IoTで生産性向上
 生産性向上では人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を活用した造船技術の開発が進んでいる。具体的には数万点に及ぶ船舶部品を拡張現実(AR)マーカーを用いて管理したり、3次元(3D)CADデータにベテラン設計者のノウハウを付加したりする取り組みが行われている。鋼板溶接や、塗装などの工程ではロボット化が進む。造船業界のロボット導入は自動車や半導体などの他産業よりも遅れているだけに、今後の成長余地は大きい。

 高付加価値分野へのシフトでは、三井E&Sが特殊船や舶用ディーゼルエンジン、運搬機械、環境エンジニアリングなどの強化を図っている。川崎重工業は海洋研究開発機構(JAMSTEC)から自律型無人潜水機(AUV)の長時間運用技術を確立する開発プロジェクト「深海底ターミナルの設計・製作」を受注した。不況下でもこれら特殊船は一定の需要があるだけに、技術力を磨いて受注を取っていく戦略だ。

 JMUも国土交通省の補助金制度などを活用し、造船所における人間の動きのモニタリングや、溶接ロボットの開発を進める。本社に設置した生産センターを中心にビッグデータ(大量データ)の活用も推進し、納入した顧客から運航データを取得して解析する取り組みや、燃費規制データから環境規制対応を図る取り組みも始めた。

 常石造船(広島県福山市)は船舶用の省エネルギー付加物装置「MT―FAST」で、18年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰を受賞している。

(文・嶋田歩)