情報過多な現代、生活者から自発的に「見つけてもらう」ことの重要性が高まってきた。しかし、その手法も多様化し、複雑さが増している。生活者目線に立った情報を、その人の欲しいタイミングで伝えることで、企業の商品やサービスを見つけてもらい興味を持ってもらう「インバウンドマーケティング」。HubSpot(ハブスポット)の創業者ブライアン・ハリガン氏が提唱したこのアイデアは、単純にSNSやオウンドメディア上で、ブログや動画などのコンテンツを作れば良いという話ではない。取り組むべき要素は多岐に渡る。たとえば、営業との連携、潜在的なニーズを持ったリードの管理、顧客満足度の向上などだ。そこで求められるのが、インバウンドマーケティングを効率的に実施できる、マーケティングオートメーション(Marketing-Automation/MA)ツールである。MAツールには、HubSpotをはじめ、Marketo(マルケト)やPardot(パードット)といった外資系プロダクトに加え、国産プロダクトも登場しはじめた。当然それぞれ異なる機能・特徴を備えている。「この状況は、SNSマーケティングを取り巻く状況と同じだ」。そのように、ラバブルマーケティンググループ(LMG)の代表取締役社長・林雅之氏は指摘する。

 

SNSとMAの類似点

「SNSマーケティングにおいては、Facebookやインスタグラム(Instagram)、Twitterの仕様・機能をどれだけ知っているかが重要だ。MAツールでも各ツールの技術・機能を理解していることが必要になる」と、林氏は語る。「LMGのグループ企業であるコムニコでは、SNSマーケティングにおけるオペレーションサービスを提供している。日々の運用が求められるのはMAツールも同じだ」。

林氏はオペレーションという切り口から、SNSとMAツールの類似性を指摘する

   

各MAツールは機能差こそあるものの、マーケティング活動の自動化という本質的な部分は変わらない。これも、各SNSが本質的には変わらず、共通の教育やオペレーションが成立しうるのと同じだ。林氏も「さまざま企業のSNSマーケティングのオペレーションを担い、蓄積されたノウハウをさらに活用していくというLMGの事業コンセプトが、MAツールにおいてもフィットするのではないかと考えた」と語る。すでにグループ企業の24-7では、MAツールの導入支援実績を重ねている。「グローバルシェアトップのHubSpotのパートナーとして、100社以上のMAツール運用に関する豊富なノウハウを蓄積してきた」とし、林氏は続ける。「HubSpotだけに特化しているわけではなく他MAツールの導入支援も行なっているが、最初に取り組むプロダクトはインバウンドマーケティングのコンセプトに共感したHubSpotを選んだ」。24-7の取締役COO・草皆直人氏も、HubSpot、Marketo、Pardotといった導入シェアの高いMAツールの実績が豊富であることが強みだと語る。「数多くのMAツールのベンダーを取り巻くパートナーのなかでも、私たちのように複数のMAツールを扱うことができ、運用までサポートできる企業はかなり限られると考えている」。

「豊富なツールの導入・運用実績が24-7の強み」と語る草皆氏

普及に追いつかない人材

MAツールの導入は年々伸長している。「2016年ごろまでは、大手企業やアーリーアダプターを中心にMAツールの導入が進んでいた」とし、草皆氏は続ける。「さらに、2017〜2018年で、中小企業やベンチャー・スタートアップでの導入も進んでおり、この傾向はさらに続くと考えている」。リード獲得や営業支援の面で強いニーズを持つBtoB企業でも、MAツールへの関心が高まっており、今後の拡大が見込まれる。「DMPサービス市場/MA市場に関する調査(2017年)[出典:矢野経済研究所]」を元に24-7が作成

   

普及と同時に課題となるのが、ツールを運用する人材の不足だ。林氏は「デジタル化の進んでいないレガシーな企業でも、ツール導入の必要性は理解している。BtoB企業も、展示会に出展し、名刺を集めるなどの従来の営業方法の限界を感じているはずだ。しかし、オペレーション人材が不足している問題から、導入に二の足を踏んでいる例も少なくない」と語る。「ここでもSNSアカウントのオペレーションと同じ話が当てはまる。『Facebookに習熟した人』『HubSpotに習熟した人』を募集しても、そんな人材はほとんどいない。いたとしてもオペレーターではなく、エグゼクティブクラスになってしまう。これでは運用は難しい」。組織の構造や運用体制もボトルネックになると、草皆氏も指摘する。「MAツールを導入するだけで成果は見込めないことがほとんど。マーケティングから営業活動までを考慮した戦略、実効性のある体制の構築、継続的な運用を実現することではじめて成果が期待できる。私たちもクライアントがこの3点を実現できるよう、常に働きかけている。企業の担当者自身が運用の中心となれるよう、ノウハウの提供や体制構築の支援などを強化していく予定だ」。

マーケティング人材の拡充を

SNSやMAツールに限らず、今後新たなプラットフォームやツールが登場すれば、そのためのオペレーターは必ず求められるようになる。「マーケティングは常に人材の視点から捉えるべきだと考えている」と、林氏は続ける。「マーケターと言っても、上流でプラニングやクリエイティブに携わる人材だけではない。日々オペレーションに取り組んでいる人材も、マーケティング活動に従事するマーケターだ。こうしたマーケティング人材を増やしていくことが重要になるはずだ」。すでにLMGでは人材サービスに取り組むグループ企業、ハウズワーク(How'sWork)を立ち上げている。同社の取締役CEOである本門功一郎氏​は、「変化が激しく予測がしづらい時代に、興味・役職・年収などの条件だけでキャリアを描いても、その通りにならない可能性が高い」と指摘する。「以前は、マーケティングのオペレーションという職種は存在しなかった。これらのニーズが高まれば、必然的にその人材価値も高まる。きめ細かい対応が求められる場面も多く、過去に営業や接客の経験をもつ人が活躍できる可能性もある。これまでの肩書きや役割にとらわれず、オペレーターとしてのキャリアも提案していき、予測不可能な未来を前提として、働く人の不変的な『価値観』や『仕事を通じて得たいもの』を見つけるというハウズワークの価値のもと、マーケターを増やしていきたい」。

「働く人の『価値観』や『仕事を通じて得たいもの』を見つけたい」と語る本門氏

   

林氏が目指しているのは、単純な人材サービスではない。オペレーションにまつわる課題を解決するソリューションだ。「試行錯誤をしている段階だが、グループ各社で活躍しているノウハウのあるオペレーターを紹介する、といったことも可能かもしれない」と、林氏。「コムニコがSNSに関する正しい知識の普及と、SNSマーケティングに携わる人材育成を目的に2016年に立ち上げたSNSエキスパート協会で資格を取得した人を、企業の人材ニーズに応じて紹介するなどの取り組みも行なっていきたい」。

オペレーションの強みを生かす

LMGは、すべてのマーケティング活動を愛されるものにするために、M.O.S.(Marketing Operating Service)が成り立つ世界を実現していくことを目指している。そのためには、SNSやMAツール、人材などオペレーションに関わるさまざまな領域を幅広くカバーする必要があり、買収にも取り組んでいくと林氏は語る。「24-7やハウズワークの母体は、買収によってグループ企業となった。買収といっても私にとっては仲間を増やす手段。これからグループが進むべき道筋は見えており、そのための手も打っている。ビジョンに共感し、力を貸してもいいと感じた会社が増えている感覚だ」。未上場で決して大きくはない規模の企業で、買収という手段を実施するところは多くないだろう。だが、林氏は買収という経験やノウハウも強みになり得るという。「今後、会社がより拡大していけば、これまでとは規模の違う買収を検討することもあると考えている」と、林氏は締めくくる。「すべてのマーケティングをラバブルにするというビジョンに共感してもらったとしても、やはり買収には困難があり、スムーズに進むものではない。そんなとき、積み重ねてきた買収経験が生かされるはずだ」。

 

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