一般道でも安全な「自動運転」に立ちはだかる大きな壁
検証するプロセスについてはコンセンサスができつつある。次のステップは、「自動運転がどのくらい安全なら社会に受け入れられるか」の議論だ。
重要なのはどれだけ自動運転で安全性が増しても、事故がゼロになることは決してない点だ。ブレーキをかけてから停車するまでの制動距離は自動運転だろうと大きくは変わらない。人と機械のどちらが運転しても、防げない事故は残る。自動運転への要求水準は物理的な限界と、人間が気付いて回避できる限界との間に設定されることになる。
自動運転基準化研の河合所長は、「安全性の要求基準は社会受容性による。まずは機能を限定して提供しつつ、社会受容性をみながら徐々に拡大していくことになるだろう」と説明する。
まず専用道から/一般道への展開手探り
課題は技術への過信だ。過信するドライバーであっても事故が起きないように、設計は保守的になる見込みだ。システムとしては自動化レベルにかかわらず、高度なセンシング機能と認識機能、判断機能が求められる。そのため車両の機能はポテンシャルがありコストもかかるが、利用シーンは制限される。
また自工会の安全検証法を果たして一般道にまで拡大できるかは未知数だ。専用道では車両のみのシーンを検証するが、一般道は歩行者や自転車など、より多様なシーンの検証が不可欠だからだ。
河合所長は、「専用道は検証シナリオを絞り込むことができた。ただ一般道に展開すると条件が多岐にわたり、カバーしきれないかもしれない」と危惧する。まずは専用道で運用を始め、一般道への拡大は手探りで進める。
ここで現実世界からレアケースを集める仕組みが注目されている。検証シナリオがあらゆる交通シーンを網羅できているのか、実際に交通環境を観測してシナリオと照合し、希少でも例外があれば追加し、更新する。
自動運転は専用道での実用化が先行し、一般道はより高機能な自動運転車を人間が運転して走り回ることになる。この車両は高度なセンサーの塊だ。車両から交通環境を観測してケースを収集することが可能だ。データが集まれば検証シナリオは充実する。安全性を担保した範囲でしか利用シーンは広げられないものの、ユーザーとシステムの安全性、利用範囲がともに拡大する仕組みを作れる。
こうした走行データは人間の運転手の安全性向上にも応用できる。データベースを人工知能技術の開発基盤としてベンチャーに提供したり、自動車保険や物流のリスク推定に利用したりと、幅広く2次利用が可能だ。
だが横山主査は、「放っておいてデータが集まる世界ではない。採算がとれなければ事業を維持できない」と振り返り、民間主体でデータ基盤を維持するのは負担が重くなることを懸念する。
一方で監督官庁には民間が提示する安全性を評価するための技術基盤が必要だが、現状では予算や体制が定まっていない。安全性と産業振興が、この評価基盤の上にある。2次利用を含めて自動運転の基盤を支える議論が求められる。
(文=小寺貴之)
