長岡ジュニアユースFCと中高一貫の体制を作っている帝京長岡は、まるでチーム全体が家族のような連帯感を持っている。写真:早草紀子

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[高校選手権・3回戦]帝京長岡2-1長崎総科大附/1月3日/浦和駒場
 
「家族ですかね。ずっと一緒にいるし、『仲間』というよりそんな感じです」
 
 FW晴山岬は、帝京長岡高校サッカー部をそんな言葉で形容する。地元の長岡ジュニアユースFC出身者が多く、昔からの顔なじみばかりというのも大きいだろうし、そもそも長岡ジュニアユースが「上下関係とか全然ない」(DF小泉善人)気風である影響も大きい。
 
 2年生たちは3年生の先輩を普通に呼び捨てにしているし、“タメ語”である。「中には敬語を使う選手もいる」(MF田中克幸)という感じなので、別に「敬語を使うな」と言われているわけでもない。ナチュラルである。遠く岡山県からやって来た田中などは当初、そんなフレンドリーな雰囲気に大いに戸惑ったと話す。だが、今では3年生を「むしろイジる側」になっているそうだ。「それで(3年生が)怒ってきたりもしないし、何でも話せる関係になってきた」と言う。
 
 主将の小泉は「どちらが先輩なのか分からない関係です」と笑いつつ、風通しの良いチームであることをポジティブに捉えてきた。下級生を押さえつけたりはしないし、それで押さえられるとも思っていないようだ。古沢徹監督が「3年生たちが2年生を伸び伸びやらせてくれているのが大きい」と分析する、独特のムードが作られている。
 
 長岡ジュニアユースFCは帝京長岡と日本サッカー協会のクラブ申請の制度を利用する形で繋がっており、中学生の内から高校年代のリーグ戦へ出場してきた選手が少なくない。中にはMF谷内田哲平のように、中学生ながら高校のレギュラーとしてシーズンを戦った選手までいる。
 
 中高一貫の体制を作っている高校自体は珍しくないが、リーグ戦まで使って下の世代を育てているチームとなると、そう多くはないだろう。それもこれも、上下関係を作らない「家族」の気風があるからこそ、できることだ。もちろん、そうした起用に応えられる実力もあっての話だが、それでもこれが普通の高校ならば、「なんで選手権に出られもしない中学生を出すんだ⁉」という声が出てきてしまうに違いない。だが、帝京長岡では「弟が出てるなあ」みたいな話である。
 
 ピッチ上に描くサッカーも特長的だ。雪国であることを逆手にとり、特にジュニアユース年代では体育館で行なうフットサルに力を入れて強化してきた。3〜4人の関係性を絡めつつ、確かな技巧で切り崩していく技術・戦術は特筆モノである。そして、そうしたグループでの攻守の妙は、ピッチ内外での「家族」としての信頼関係に裏打ちされたものなのだ。
 
取材・文●川端暁彦(フリーライター)