みんな成功側だけ見ていませんか? 音大出身の異色経営者が語る“起業論”/LEADERS online
起業を目指す人へのアドバイス
タケ:
起業したい人へのアドバイスは?
カズ:
起業した後も色々あるので、自分の中での成功のイメージを持っているか。例えば、ウミーベはクックパッドに買収されたが、他にももっと大きい会社を目指すという選択肢もありました。
こういった基準がないとずっと苦しくなる。
「自分のペースや考え方をはっきりさせた方がいい」というのがカズワタベさんの「起業論」だ。
ウミーベもまだまだ成長させないといけないフェーズではあるが、やっていて楽しいのは間違いないという。
自分で決められるからこそ、スタンスが明確になっていないと逆に何も決められない。そこが一番大事。
タケ:
成功には失敗はつきもの。失敗についてはどう思う?
カズ:
スタートアップはほとんど失敗。ウミーベが成功かと言われたら、諸手を挙げて成功とは言いづらいです。
起業はもちろん、楽ではない。カズワタベさんの周りのコミュニティでは、ひっそりと退場する人、1〜2年でなくなる会社もある。
成功した人はメディアで話す機会がたくさんあるものの、失敗する人はあまり話さないので、みんな感覚的に成功側だけを見ていることになる。
起業家のコミュニティにいると、失敗している人はいくらでもいて、今成功している人も過去に何回も失敗していることが多く、カズワタベさんの仲の良い起業家には現在5社目と言う人も...。カズさんは起業家に必要なのは「体力と図太さ」だという。
クックパッドの買収が意味するもの
ウミーベは8月末にクックパッド株式会社に買収され、子会社となった。
カズワタベさんにとって、これはゴールなのか?それとも道半ばのことなのか?
タケ:
これは、望んでいた買収ですか?
カズ:
単独で上場まで行けたら、それはそれでいいだろうし、かといって『絶対上場するぞ!』みたいな起業家でもないので。
「絶対上場するぞ!」という強い意気込みは全然なく、むしろ世間的には上場しない会社がほとんどで、さらに言うと中小企業のままやっていたり、ウミーベのように買収されるという形を選ぶ企業もある。
アメリカのシリコンバレーだと9割近くイグジットの形が買収になるという。
タケ:
買収は嬉しかったですか?
カズ:
はい。特にクックパッドというのが嬉しかったです。インターネット黎明期からウェブサービスの中では圧倒的にユーザーに対して価値を提供できていて、ウミーベが将来実現したいようなサービスの形態が近く、企業のイメージもすごく良い。いろんな企業さんとお話をしましたが、文化として一番マインドが近い会社だと思いました。
同じITという共通点があるとはいえ、扱うものは釣りから料理へと変化する。クックパッドは何を彼に望むのだろうか?
カズ:
買収されて、ウミーベの代表をやりつつ、クックパッドの新規事業立ち上げもやることになりました。既存事業はもちろんですが、自分のサービス立ち上げの能力を買われた部分もあったと思います。
経営者の中でも、メディアでよくみるIT系の起業家と言えば、野心に溢れ、時としてギラついた印象を与える。
カズワタベさんは常に落ち着いた語り口のお兄さんという、これまで見てきたIT系の起業家とは一線を画すイメージであった。
音楽大学出身の異色の経営者は今、新たな海で、新規事業という名の魚を釣り上げようしている。