トラックへの割り込みは、一般車とトラック双方に損害をもたらしかねない

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「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。前回は、トラックがノロノロ運転をする理由について説明したが、今回は、トラックドライバーが運転中に出くわす「危険な割り込み」について述べていきたい。

 トラックがノロノロ運転をする理由。それが、煩雑なシフトチェンジやバタ踏み、渋滞誘発などの回避であることは、前回説明した通りだ。

 それに加えてもう1つ、トラックが車間を空けてゆっくり走ることで回避するものがある。「荷崩れ」だ。

◆トラックが取る車間距離の意味

「荷崩れ」とは、トラックの荷台に積んだ荷物が、振動や衝撃によって崩れてしまうこと。ほとんどのトラックドライバーは、それまで培ってきた経験をもとに、積んでいる荷物の重さや積み方、道路状況、ブレーキの効き具合などから制動距離(ブレーキが効き始めてからクルマが完全に停止するまでの距離)を感覚で把握し、この「荷崩れ」を引き起こさずに止まることができるスピードと車間で走っている。

 つまり、その大きく空いた車間は、他のクルマに前を譲るためのものではなく、「荷崩れせず安全に止まるためにトラックが必要としているスペース」なのだ。

 そんなスペースに、突然クルマが割り込んでくれば、当然トラックは安全な車間が保てなくなり、やむを得ず急ブレーキを踏むことになる。急ブレーキを踏んだトラックは、結果的に「前方の割り込み車との衝突」だけでなく、「後方の積み荷の荷崩れ」の危険性にも対峙することになるのである。

 急ブレーキを踏む際、トラックドライバーの脳裏には、“荷崩れが引き起こす最悪な事態”が、2つよぎる。

◆積み荷の賠償はドライバーにのしかかる

 1つは、「破損した積み荷の賠償責任」だ。

 突然の割り込みに急ブレーキを踏み、そのクルマとの衝突を回避できたとしても、運んでいる大事な積み荷が荷崩れを起こして破損すれば、その後、ドライバー側は「損害の賠償」という重い負担を背負うことになる。

 世間では、トラックドライバーはハンドルを握って走っているだけだと思われがちだが、彼らの本当の役割は「トラックの運転」ではなく、「荷物を無事に届けること」。こうした立場から、荷物が破損した際の賠償は、トラックに荷物を積み込んだ時点で、ドライバーが所属する運送業者側が負わされることがほとんどなのだ(荷積みと損害賠償については今後詳しく説明する)。

 運搬する荷物の中には、筆者が積んでいた金型や、より慎重な扱いが求められる精密機械など、その額が「億」を軽く超えるものもあり、破損した際の損害額も巨額になる。そのため、危険運転を繰り返す悪質な一般ドライバーによって引き起こされる荷物事故を少しでも食い止めようと、最近ではトラック車内にドライブレコーダーを搭載し、その車両を特定しようとする運送業者も増えてきている。

◆割り込みによる急ブレーキは、荷崩れの原因となる

 もう1つの“最悪の事態”は、「身の危険」だ。

 過去にも何度か述べてきているように、急ブレーキを踏んだトラックは、前方のクルマとの衝突を回避できたとしても、後ろに積んだ荷物が「慣性の法則」によって前になだれ込んでくることで、運転席が潰れたり、バランスを崩して横転したりする危険に晒される。

 元トラック運転手である筆者もかつて、縦3m、横1.5mにもなる板状の金型を積んで高速道路を走行している際、急ブレーキを踏んで大規模な荷崩れを起こしたことがあった。もしあの時、道が緩やかな上り坂になっていなければと考えると、今でも背筋が凍る。 トラックドライバーももちろん、こうした荷崩れ対策のために手間を掛け、工夫を凝らして日々荷積み作業を行ってはいるが、残念ながらこうした努力は、右足1本の「ひと踏み」で簡単に吹っ飛んでしまうことが多い。