伝統工芸の生き残りをかけたブランディング
経糸(たていと)を通常の織物より多く使う博多織は締めやすく緩みにくいとされ、繊細な柄を表現できる。締める時にキュッと音が出る「絹鳴り」も絹織物としての特徴の一つ。
5代目となる岡野社長が挑戦を仕掛ける裏には危機感がある。廃業を視野に入れていた家業を継いだ時、経営は慢性的な赤字続き。財務体質改善のため、人員整理に踏み切らざるを得なかった。
その後、赤字が出ない会社にするために進めたのが流通経路の確立。問屋へ卸す従来の商習慣を少しずつ変えていくため、2005年に直営のアンテナショップを開いた。
「モノを作る文化はあったが売る文化がなかった」と振り返る岡野社長。消費者と直接の接点を築く過程で「エルメスなど欧州の高級ブランドがなぜ生き残ったのか」と海外の伝統工芸の歴史にヒントを得たのが、高級路線にかじを切る契機となった。
業界の反発にも配慮しながら戦略を練り続け、満を持して17年にブランドを「OKANO」に統一。店舗展開を一気に加速させた。そんな岡野社長が見据えるのは「技術をどうビジネスに変えていくか」。伝統工芸が産業として生き残るためさらなる高みを目指す。
【メモ】鎌倉時代に中国・宋に渡った博多商人が織物技術を持ち帰ったことが始まりとされる博多織。76年に国の伝統工芸品に指定された。18年は発祥から777年の節目として記念行事やロゴマーク作成などを展開し、普及を進めている。11月には福岡県で「伝統的工芸品月間国民会議全国大会」が開かれる。
