野町 直弘 / 株式会社クニエ

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私が愛読しているサイトでIt's購買系という情報提供サイトがあります。これは購買ネットワーク会の幹事をされている寺島さんが運営しるものです。

特に海外の調達購買に関するトレンドなどの情報リンクを日本語のサマリーなどを付けて分かりやすく情報提供をされていていつも興味深く読ませていただいております。

今回はこのサイトにも掲載されていたスバルの購入品の品質向上に関する新聞記事について述べていきましょう。

「スバル常務執行役員に聞く、調達部品の品質向上策 不良出ない生産ライン構築へ」という記事です。

この記事によりますとSUBARU(スバル)は調達部品の品質を高める取り組みを加速しています。具体的な内容としては「調達部門内に2017年4月に設置した『外製品質改善
推進部』が中心となって、1年間で重要保安部品のサプライヤーを中心に生産工場329拠点を回り、各社の強みや弱みを把握した上で、今後は品質に課題のある会社を重点的に訪問し、不良の出ない生産ラインや部品の良品条件などを一緒に作りこんでいく。」というものです。

この記事で感心するのは調達部門が中心となりサプライヤの品質改善に貢献している点でしょう。従来のバイヤーは品質改善に詳しい人はあまり多くありませんでした。何故なら事務系社員が殆どだからです。ですから品質改善などの活動はどちらかというとサプライヤに任せきりでした。不良率、直行率などの数値管理を行って改善要請はするものの、改善自体は各サプライヤにお任せしているというのが実態です。

一般的に多くの企業で行われている購入品の品質管理の手法としては2つの取組みが上げられます。一つ目の取組みはサプライヤの評価や審査、監査です。これは誰でもイメージできるでしょうが、新規取引開始時に品質管理がきちんとできているかどうかの審査や定期的な監査などサプライヤの工場や工程の評価を行うことで、品質管理を実施することになります。サプライヤの評価については定期的に品質評価を行い、評価が低い場合にその内容をフィードバックし改善を依頼することも普通に行なわれているでしょう。

もう一つの取組みは部品認定です。これはサプライヤの管理とは別に購入品単位に評価を行い、評価に合格して初めて利用が可能となるという仕組みになります。量産部品で代替品の採用などでこの認定が取れないことでマルチソースができないなどの課題にもつながります。

これらの2つの取組みは品質を一緒に改善していきましょう、という取組みではありません。そういう点から考えても、この記事の取組みは画期的なものと言えるでしょう。

SUBARUのは従来から地場サプライヤとの取引きが多いと言われていました。また昨今の供給力不足も考慮すると、一方的にサプライヤを評価したり、監査したり、認定したりする上から目線の仕組みだけでなく、このような品質改善を一緒に進めていきましょう、という取組みが欠かせないもの、とも言えます。そのためには品質向上のための手法や指導できるスキルがバイヤーにも求められるでしょう。

日本企業のこのような取組みはサプライヤとの関係性づくりで画期的な事例として特筆すべきと言えます。