野球ファンなら誰でも一度は考えたことのある、「あの高校のOBだけでプロ野球チームをつくったら……」。第1弾は、甲子園で圧倒的な強さを誇る大阪桐蔭高校編──。

 甲子園を初制覇してからまだ26年。出場回数こそ3校の中で最も少ない(春夏で18回)が、優勝回数は6回を誇る。夏の甲子園に限れば、勝率が8割を超える”平成の名門校”だ。

 層は薄いものの、OB最強チームの顔ぶれは、プロ野球でバリバリ活躍している選手ばかり。特に目を引くのは、中村剛也中田翔をはじめ、クリーンナップを誰にするか迷わせるパワーヒッターたち。常に長打を警戒しなくてはならない相手投手は、かなり神経をすり減らすことになるだろう。

 エースは”荒ぶるストレート”が代名詞になってしまった藤浪晋太郎。後に紹介する他の2校のエースとは格の差があるが、甲子園での活躍は素晴らしく、プロでの実績も十分。それでも、「辻内崇伸が活躍していたら……」と思わずにはいられない。



【ピッチャー】
ストレートがまっすぐいけば怖いものなし
◆藤浪 晋太郎(阪神)

「死球→両球団ファンからの悲鳴」が恒例となっているが……。甲子園で春夏連覇を果たし、4球団競合のドラフト1位で阪神に入団した逸材であることは間違いない。高卒3年目で14勝を挙げ、221奪三振を達成したピッチングは圧巻だった。その時の姿をもう一度見たいという期待も込めての”エース藤浪”。


2012年に甲子園を春夏連覇したチームでエースを務めた藤浪


【キャッチャー】 
ここなら正捕手。高校時代の中田の女房役
◆岡田 雅利(西武)

 高校3年時に、当時エースだった同級生の中田翔とバッテリーを組む。春のセンバツには出場したが、夏は大阪大会の決勝で涙をのんだ。その後、社会人野球を経て2013年のドラフト6位で西武に入団。打撃の調子は上がらないものの、今季は後輩の森友哉が負傷離脱中に、炭谷銀仁朗に次ぐ第2捕手の座を射止めた。

【ファースト】
勝負強さで打点を荒稼ぎ。FA移籍はあるか
◆中田 翔(日本ハム)

 大阪桐蔭では高校1年から5番レギュラーとして活躍し、高校通算87本塁打を放った”怪物”。今季は、WBCの影響もあって極度の不振に陥り、金に染めた髪とヒゲは大不評と散々。しかし、3年連続で100打点をクリアした勝負強さは心強く、ファーストでゴールデングラブ賞に輝いた守備でも投手を助ける。


本塁打を量産しただけでなく、エースも担っていた中田

【セカンド】   
豪快なスイングで長打を量産するキャプテン
◆浅村 栄斗(西武)

 2016年に3年ぶりの3割を達成。24本のホームランを放つなど、ベストナインに選出された。送球難が課題でファーストを守っていたが、セカンドに本格転向した後は徐々に安定してきている。今季は、自由奔放な性格から「絶対に向いていない」とも言われていた、野球人生初のキャプテンを無事に全うした。


【サード】    
圧倒的パワーで本塁打王6回の”おかわり君”
◆中村 剛也(西武)

“飛びにくい”統一球が導入された2011年に48本のアーチを描き、ロッテのチーム本塁打数(46本)を上回ったことはもはや伝説。三振が多く、打率は高くないが、スイッチが入ると手がつけられなくなる。体格のわりに足が速く、守備も軽快。ちなみに、奥さんの誕生日に行なわれる試合でよくホームランを打っている。


【ショート】   
ロッテ下克上を呼び込んだ切り込み隊長
◆西岡 剛(阪神)

 PL学園のセレクションに落ちた悔しさをバネに、大阪桐蔭で大きく成長。ロッテ入団後にスイッチヒッターに転向してスタメンに定着し、2006年のWBCで活躍。”史上最大の下剋上”を成し遂げた2010年もリードオフマンを務め、首位打者を獲得した。つい忘れがちだが、今回のOBメンバーの中で唯一のメジャー経験者。


【レフト】    
高校時代から流浪の野球人生で悲願のプロ入り
◆大西 崇之(元中日ほか)

 大阪桐蔭を1年の夏に中退しているが、メンバー不足の事情で特別選出。亜細亜大学も中退して社会人野球に進み、1994年にドラフト6位で中日に入団した。守備固めの起用が多かったが、1998年のMVPである横浜の守護神・佐々木主浩から、その年唯一の本塁打を放った選手として覚えているファンも多いだろう。


【センター】  
落合も認める、三拍子そろったマルチ外野手
◆平田 良介(中日)

 甲子園で通算5本のホームランを放ち、同級生の辻内と共に”超高校級”の選手として注目された。2005年のドラフトでは、当時の落合博満監督が「俺が認めたのは平田だけ」と発言。徹底指導を受けて2011年に飛躍を遂げた。普段はライトを守るが、今年のWBCで見せた走力、守備力の高さからセンターで起用。


【ライト】   
重すぎる阪神の背番号「31」を託された男
◆萩原 誠(元阪神ほか)

 1991年にセンバツで甲子園に初出場し、連続出場となった夏に初優勝を果たしたチームの4番打者。その活躍ぶりから阪神にドラフト1位で指名され、掛布雅之がつけていた背番号31を渡された。”ミスタータイガース”を継ぐ者として期待されたが、プロでは結果を残せず。引退後は地元・大阪で整骨院を開いている。


【DH】    
フルスイングの小さな大打者は人命救助も
◆森 友哉(西武)

 170cmの体を目いっぱいに使ったスイングで、高卒1年目で3試合連続ホームランを放つなど、非凡な打撃センスを披露。藤波との”春夏連覇バッテリー”復活も見たいが、プロ入り後の実績からDHで選出した。一時期は”やんちゃ”な時代もあったが、高校時代に駅のホームから線路に転落した男性を助けた正義感の持ち主。


高校時代から「打てる捕手」として名を馳せた森


【理想の打順】
1番 西岡 剛(両)
2番 大西 崇之(右)
3番 浅村 栄斗(右)
4番 中村 剛也(右)
5番 中田 翔(右)
6番 平田 良介(右)
7番 森 友哉(左)
8番 萩原 誠(右)
9番 岡田 雅利(右)

 西武色が強く、右打者だらけになるものの、それが気にならないくらいの重量打線だ。1番・浅村、2番・西岡、3番・森という超攻撃的な打順でもいいが、7番以降が”ノーチャンス”になるのを避けるオーダーにした。


【控え投手】
◆今中慎二(元中日)
◆川井貴志(楽天ほか)
◆桟原将司(元阪神ほか)
◆辻内崇伸(元巨人)
◆岩田稔(阪神)
◆澤田圭佑(オリックス)など

 代名詞のスローカーブを武器に、1993年に最多勝を獲得した今中も十分にエース格。川井や岩田やなど、地味ではあるが経験豊富な投手に加え、プロでは登板がなかった辻内も、甲子園補正でメンバー入りとなった。


【控え野手】
◆森本学(元ソフトバンク)
◆江村直也(現ロッテ)
◆香月一也(現ロッテ)など

 華やかなスタメンからは想像できない絶望感が漂う。森本は内野のバックアップ要員として、ロッテのふたりはこれからの飛躍も期待できるが……。強豪校としての歴史が浅いことを、あらためて実感する。

(次回・横浜高校編につづく)

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