今、一般的に着用されている下着は、基本的には洋服に合わせたものとして開発されてきたものだ。
便利だったり、身体のラインをきれいに見せるためだったり、ゴムやワイヤー、補正の役割もある。

その昔、日常的に着物を着ていた頃は、下着は肌襦袢と腰巻だった。そんな「開放的な」下着のスタイルを取り入れたのが、「JUBAN DO ONI(ジュバンドーニ)」の下着だ。

素材はオーガニックコットン。イタリア歌謡「フニクリ・フニクラ」の替え歌、「鬼のパンツ」の歌詞のような「いいパンツ」を目指して開発された。名称は、この歌と「襦袢」からきている。


専門知識ゼロから下着を自作


現在はネットでの流通だが、「JUBAN DO ONI」代表の黒川紗恵子さんが自分で下着をつくりたいと思ったのは、20年ほど前にさかのぼる。もともと肌が弱かったという黒川さん、下着売り場で、がく然としたことがあった。
「どこを見ても化学繊維のレース、リボン。ブラジャーにはワイヤーと大きなパッド。ギラギラしたものであふれかえっていて、こんなに自分が欲しい下着はないものかと、あ然としました」

当時はまだ、天然素材の下着は少なかった。
「あったとしても、とても買う気がしないほど地味なものも多かったです。仕方なく買った下着についているリボンを自分で外すという作業をしながら、なんとかならないものかと思っていました」

そこから何年かたった後、自分で作ろうと思い立つ。ただし、黒川さんには下着作りの専門知識は全くなかったという。まずは、100円ショップで購入したパンツを分解して型紙をとり、自己流で縫って直しての試行錯誤を繰り返した。
「公開されている情報も少なく、個人規模でお取引をしてくださる業者、工場を探すのが本当に大変で時間もかかりました。現在は専門のパタンナーの方にお願いしています」

JUBAN DO ONIの下着のデザインは、ごくシンプルなものだが、黒川さんがはじめに作った下着は、「かわいい」ものだった。
「天然素材でかわいい下着であればいいと思っていたんです。綿の派手な柄の布で、水着のようにサイドが紐になっているパンツを作ったりもしていましたが、やはり何か違う。履き心地にこだわるようになるなかで、今のようなデザインになりました」


締め付けなしのはき心地は男性にも好評


試行錯誤を経て、販売開始したのは2016年5月。1周年をむかえた。
大きな特徴のひとつがウエスト部分のリブ。ゴムを使わず、まるで腹巻のようにおなか部分まで覆われる。その締め付けずゆったりしたはき心地は、「何もはいてないみたい」という声もあがるという。
「私自身、ゴムがきついとおなかが痛くなる体質だったり、化繊だとかぶれたりしていたので、自分で作るならそこをなんとかしたいと思い、リブ素材なら締め付けないのではと思いつきました。妊婦さんや産後の方にも好評です。男性も冷えておなかを壊しやすい方は多く、腹巻パンツは予想以上に好評です。男性ものは女性ものよりもさらに選択肢が少ないので、体にやさしい下着を探されている男性に喜んでいただいております」

ちなみに、素材の都合上、下着による補正効果がなかったり、下着の線が出てしまうこともある。
「ピッタリしたラインの服装には、あまり合わないかもしれません。一方で、ローライズなど、少し浅いズボンの時に見えても気にならないと言っていただけます」

現在は、ブラジャーやキャミブラ、さらに違う素材での下着を試作中だという。
「あったらいいなと思う下着を、お客様のリクエスト、ご意見を反映しながら作っていきたいと思います。下着にはまだまだいろんな可能性があると思っていますので、アイデアを考えるだけでワクワクします」

「見えないところにこそオシャレ」、「勝負パンツ」、下着へのこだわりは色々あるが、素材や着心地にもこだわってみてはどうだろうか。
(太田サトル)