カブトムシといえば、幼少期から小学生の時期によく興味を持って観察したものだ。カブトムシやクワガタを戦わせる遊びは定番だった。ただ、カブトムシについて知らないことは多い。そこでカブトムシに詳しい教授に、あらためてカブトムシについての素朴な疑問をぶつけてみた。

カブトムシは何のために戦うのか


今回、カブトムシについての質問に答えてくれた、基礎生物学研究所の新美輝幸教授に、カブトムシは何のために戦うのかの理由を教えてもらった。

「カブトムシのオスは、よいエサ場を確保するために、オス同士で戦います。戦いに勝利したオスは、エサ場にやってくるメスと交尾して子孫を残すことができます」


カブトムシの戦う相手はカブトムシの他に、クワガタとも対戦しているのをよく写真やテレビなどで見かける。その他に、戦う相手はいるのだろうか?

「スズメバチも、カブトムシやクワガタと同様に、樹液をエサにします。スズメバチは大あごを用いて、カブトムシの脚や腹部に噛みついて戦います。時にはカブトムシに勝つこともあります」

カブトムシの戦いトリビア3つ



続いて新美教授に、カブトムシの戦いに関するトリビアを教えてもらった。

1.カブトムシの角はそれぞれの戦闘スタイルに特化した構造と強度がある
「カブトムシの角(つの)は、種(しゅ)によって特徴のある形態になっています。例えば、日本のカブトムシは、頭部の角は先端部分が平たく、2回、二股に分かれています。この構造は、相手をすくい上げるのに適した構造であり、相手を投げ飛ばす際の負荷に対する構造上の強度もあるといわれています。
また、ヘラクレスオオカブトムシの頭部と胸部の角は、長く伸びた形態をしています。この形態は、相手をはさんで投げ飛ばすのに適した構造と強度を持つことが知られています」

2.カブトムシのオスは黒に反応して攻撃する
「カブトムシのオスは、白色よりも黒色に反応して攻撃するそうです。カブトムシの体色は黒色なので、色を識別しているようです」

3.角で相手の身体サイズを確認してから戦う
「カブトムシのオスは、戦う前に角の先端を突き合わせます。カブトムシの角の先端には、細かい毛 (感覚毛) が多く生えていて、戦う前に角の先端を突き合わせることで、相手の身体のサイズなどを評価していると考えられています。
カブトムシは戦うことで負傷するリスクがあるため、このような行動は、負傷のリスクを回避するためだと推測できます」

今さらながら、カブトムシは思ったより頭が良さそう。周りに子どもがいるなら、ぜひ教えてあげよう。
(石原亜香利)

取材協力
新美 輝幸 教授
基礎生物学研究所/総合研究大学院大学・教授。1965年愛知県半田市生まれ。名古屋大学大学院農学研究科博士課程(後期課程)修了。博士(農学)。名古屋大学大学院生命農学研究科助教などを経て、2015年より現職。昆虫特異的な適応形態の発生と進化に関する研究に従事。