『クレヨンしんちゃん』の世界に私がいる――夢をかなえた志田未来が語る、理想の家庭像
“プライベート、仕事を問わず”と前置きしたうえで、志田未来に夢を尋ねると、迷うことなく「結婚したい! 幸せな家庭を築きたいです」という答えが返ってきた。じつは、23歳の実力派女優にはもうひとつ、長年にわたって公言してきた別の夢があったのだが、最近、その夢がついにかなった。それは映画『クレヨンしんちゃん』において声優を務めるということ。しかも『クレヨンしんちゃん』には、冒頭に掲げた結婚願望にも深〜い関わりがあり……!?

撮影/平岩 享 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.



小さい頃から大好き…「しんちゃんと一緒に育ってきた」



――以前から『クレヨンしんちゃん』の大ファンだそうですね。“最強の5歳児”野原しんのすけを主人公に、TVアニメの放送が始まったのが1992年。映画第1作『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』の公開が、志田さんが生まれた1993年ですが、志田さんはいつ頃から見ていたんですか?

いつからなのか記憶にないです。本当に小さい頃から大好きで、物心ついた頃には当たり前にあったので。しんちゃんと一緒に育ってきたという感じです。

――昨年までに24作の映画が公開されていますが…。

全部見てます! DVDで見たものも多いし、どこから映画館で見始めたのかも、さだかではないんですが…。『嵐を呼ぶジャングル』(2000年)を映画館で見たのは覚えています。『ヘンダーランドの大冒険』(1996年)がすごく面白かったのも記憶にあるんですけど、映画館なのか、家で見たのか…?

――志田さんから見た『クレヨンしんちゃん』の魅力はどんなところにありますか?

子どもの頃は、ただ単純に面白くて笑ってました。しんちゃんたちの掛け合いが面白いんです。みんなボケで、みんなツッコミって…ほかのアニメにはないですよね(笑)。



――長く愛される一方で、「子どもがしんちゃんのマネをして困る」「お下品だから子どもに見せたくない」という親の声も常にあります。

たしかにお下品なところもありますが(笑)、それ以上に魅力的なところがいっぱいあります!

――具体的には? 大人になっても惹きつけられるのは、なぜなんでしょう?

大人になって観ると、大切なメッセージが、ひとつひとつの作品に込められてるんだってことに気づかされます。しんちゃんは一見、おバカでお下品で、どこでもお尻を出しちゃうけど(笑)、誰に対しても差別することなくまっすぐで、間違った大人を正しい道に連れ戻してくれる、最強の5歳児なんです。



――大人が見て、泣いてしまったという話をよく聞きます。私の周りでも、妹のひまわりが生まれた回などで「泣いた」という人が多かったです。

とくに映画は泣けちゃいます! 最初は、そんな感動って感じの流れでもなく、いつもの野原家なんですけど、後半に進むにつれて、涙腺がゆるんできちゃう(笑)。大人のツボをついてくるんです。

――これまでの映画でとくに忘れられない作品は?

『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(2014年)はボロ泣きでした!

――わりと最近の作品ですね。

しんちゃんのとーちゃんであるひろしと、その記憶をコピーされたロボとーちゃんが、「俺が本物だ!」って言い合うんです。最後に、ロボとーちゃんが本物のひろしにすべてを託す腕相撲のシーンがあって…。ロボットに感情移入して、切なさとか、父の秘めた思いとか、すべてにやられました。私が、ひろしが好きというのも大きいですが…。ぜひ大人の人に見てほしいです!




しんちゃんに「未来ちゃん」と呼ばれるのが楽しみで(笑)



――そんな愛してやまない『クレヨンしんちゃん』の映画に今回、声優として出演されることを最初に知らされたときは、どんな反応を?



ついに夢がかなった! という感じで、そのときも電話越しに泣いちゃいました(笑)。

――しかも演じるのは、志田未来本人役。映画の中で、しんちゃんが女優・志田未来の大ファンで、志田さんが出ている連続ドラマを欠かさずに見ているという設定でしたね。

別のキャラクターとしてではなく、私自身があの世界にそのまま入れるというのは、すごくうれしかったし、しんちゃんに「未来ちゃん」と呼ばれるのが楽しみで楽しみで(笑)。



――実際に、アフレコの収録をしてみていかがでしたか? アニメーション映画の声優は『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)、『風立ちぬ』(2013年)に続いて3回目の挑戦ですね。

難しかったです。3回目とはいえ、やはり、声だけで役柄を作りこみ、表現するのって、普段とは全然違って大変でした。

――本人役なので、何をやっても志田未来なんだから“正解”というわけでもないんですか?

本人役ではあるんですけど、映画の中のTVドラマ内で、役を演じているという設定なので、あくまで演じています(苦笑)。息づかいだったり、銃を撃ったりというアクションを、声だけで表すのは難しかったです。



――しんちゃんが見ているTVドラマ内にいるということで、直接、しんちゃんと会話のやりとりがないのが、ちょっぴり残念ですね。

でも、すっごくうれしいです。しんちゃんに憧れられる存在ですから。“ななこおねいさん(※シリーズにたびたび登場する、しんのすけが恋する女子大生)”的なポジションですし、おいしいですよね(笑)。

――キャラクターとしてデザインされたご自身の姿を見ていかがでしたか?

すごくかわいらしく描いていただいてうれしかったです。違和感なく、あの世界観にマッチしてるなって(笑)。動いてる姿が早く見たい! って思いました。

――これまでのシリーズとは、また違う気持ちで映画館に見に行くことになりそうですね?

普段、自分が出ている作品は試写で拝見するんですが、気恥ずかしくて、むずがゆくなるので(苦笑)、映画館にはなかなか行かないんです。でも、今回は何度も行くと思います! 「しんちゃんの世界に私がいる!」って何度も実感させてもらいます(笑)。




ひろしの優しさに「こんなカッコいい男性はいない!」



――先ほども少し話に出ましたが、一番好きな登場人物は、しんのすけの父・ひろしだそうですね。これはいつ頃から…?

これも記憶にないです。もうずっと小さい頃からです。

――「好きなキャラクター」であるという以上に、「理想の男性」だとも伺いました。

もちろん、好きなキャラクターではあるんですけど、「結婚するなら、ひろしみたいな男性がいいな」と思ってます。これも、けっこう昔からです(笑)。

――「理想の男性はひろし」ということについて、周りの反応は…?

そんな「変わってるね」って言われたことはないです!(笑) ひろしみたいな人は本当に、理想的な男の人だなぁって思います。



――し、失礼ですが、ひろしのどんなところに魅力を…?

やっぱり家族思いなところです。どんなときも、自分を犠牲にしてでも家族を守ろうとする。普段は、そういうところを表に出さないギャップも素敵です。本当に、ここ一番! というところで、熱い思いが出てくるところがいいなぁって。

――先ほど、ロボとーちゃんとのシーンの話がありましたが、ほかにひろしが関わっているシーンやセリフで心に残っているものがあれば教えてください。

TVシリーズなんですけど、妻のみさえが手作りの品をバザーで出したけど、全然売れなくて…。そこにひろしが内緒でやって来て、みさえが席を外しているあいだに買って帰るというエピソードがあったんです。それを見たとき、こんなにカッコいい男性はいないって思いました。



――それを見た時期は…?

よく覚えてないですけど、まだ10代の頃だったと思います。

――そもそも、志田さんが『クレヨンしんちゃん』を見始めた頃は、年齢的にもしんちゃんと変わらないはずなので、ひろしはポジションとして“父親”ですよね。そんなひろしを男性として好きに? いわゆる“ファザコン”的な要素をお持ちなんでしょうか?

たしかに父のことは大好きで、仲もいいですし、それはあるかもしれないです。でも、やっぱり、それだけひろしが魅力的なんだと思います。私が思うに、この世に“ひろしファン”はかなりの数、いるはずです!

――本当ですか?(笑)

絶対にいます! 立場は父親なんですけど、亭主関白でもないし、子どもたちとも一緒の目線で遊んでくれるし、全力でしんのすけをかまってくれるんですよ。



――たしかに子どもたちが冒険する多くのアニメと比べて、『クレヨンしんちゃん』は、ひろしとみさえがしんのすけと一緒に、危機に立ち向かいますね。

そこが素敵です! でも、結婚するならひろしがいいけど、恋人となるとちょっと違う気もするんですよね…(苦笑)。

――その差はどこに?(笑)

普段は、若い女の子が好きで、デレデレするじゃないですか? そういうところで一緒にいて、イヤな思いはしたくないです。家庭を大事にするというところはいいんですけど。

――もともと、志田さん自身、家庭を持つことへの憧れが強いんでしょうか?

すごく強いと思います。うちは両親がすごく仲が良くて、家族が大好きなんです。だから、自分もいつかそういう家庭を持ちたいって気持ちが強いんですよね。『クレヨンしんちゃん』を見て育ってきて、「野原家みたいな家庭だったら笑いが絶えないで、幸せだろうな」という思いもあるんだと思います。



――野原家のような家庭は大変そうでもありますが…(笑)。

たしかに(笑)。毎日があっというまに過ぎていきそうですね! しんちゃんみたいな子がいたら、いろんなハプニングもあって…。でも、それをみんなで乗り越えていくのがいいですね。自分も成長できそうな気がします。

――ひろしの妻であり、しんのすけの母親であるみさえは、いわば志田さんの憧れのポジションですね。

大変そうですよね(笑)。でも、みさえがいないと野原家は何も回らないと思います。みさえはみんなのことを本気で怒るじゃないですか。“怒る”ってすごくエネルギーがいることですよね。でも、そこにちゃんと向き合うってスゴいことだし、だからこそ、野原家はひとつにまとまるんだなって思います。