『日本全国酒飲み音頭』に「2月は節分で酒が飲めるぞ」という一節がありますが、節分とは関係なく、昨日、記者は美味しいお酒を飲んできました。

なぜか、アンドレイ・コピィロフがラベルに大写しされた日本酒


パルコミュージアム(池袋パルコ 本館7F)にて、本日(2月10日)より3月5日まで「I LOVE SAKE日本酒マニアック博in東京」が開催中です。


近年、国内外で盛り上がりを見せている日本酒。そんな日本酒ブームを背景に「より若い世代に日本酒の魅力を知ってもらう」「日本酒が持っているポテンシャルを引き出す」ことを目的として立ち上がったこのイベント。日本酒を“遊べる素材”と捉え、日本酒の二次創作を多様な切り口で「面白い現象=カルチャー」として生み出して発信することで、日本酒の新しい魅力や価値を見つけていこう! ……という試みだそう。

このイベントの内覧会が昨日に開催されており、記者もお邪魔してきました!




ちなみに同展では、特色のあるお酒をコーナーごとに区分けして展示している模様。まずは「踊る大マニアック銘柄展」と題し、“飲み終わった後にボトルを大切にとっておきたくなるようなデザイン性の高い日本酒”が登場です。



例えば、福島県二本松市の酒蔵「人気酒造」の『人気―地球侵略 ウルトラマン基金』は、ウルトラマンの生みの親・円谷英二氏の故郷からほど近い同酒蔵に突如宇宙人が現れ、宇宙人によって酒造りが行われたという愉快な設定です。


越銘醸(新潟県)による『ほだれ酒』は、五穀豊穰、子宝祈願、安産を願う新潟の奇祭「ほだれ祭」にちなんだお酒。見ての通り、男性器をモチーフにしています。


棟方志功が絶賛した故・盛秀太郎氏は「湯湯こけし」の第一人者。その盛秀太郎の代表作品を原型そのままに再現した陶器に蔵の特別純米酒を詰めた『菊乃井こけしボトル』は、鳴海醸造店(青森県)の一品です。



そして、個人的に驚いたのはこちら。


ラベルに写ってるの、誰だかわかります? コピィロフです。コマンドサンボの使い手、アンドレイ・コピィロフ!


お酒の名前は『ビクトル投げからの膝十字固め』で、喜久盛酒蔵(岩手県)による一品。ビクトル投げからの膝十字固めはコピィロフの得意技であり、また蔵元の得意技でもあるそうです。



キラキラネームの日本酒



思わず吹き出してしまいそうなユニークな銘柄ばかりを集めたコーナーも楽しい。例えば、いきなり「死神」「うっぷんばらし」と書かれていたら気圧されてしまうはず。


それぞれ「日頃たまりにたまった鬱憤をこのお酒を飲むことで晴らしてほしい」「蔵元の好きな落語『死神』より命名」という意味が込められているそうです。



国権酒蔵(福島県)による『俺の出番』は、名付け親である先代社長がプロ野球某球団の大ファンだったことから命名されたそう。2年ほど前の発売当時は劣勢で、苦しい場面でも巻き返しを願う気持ちが込められているようです。


石井酒蔵(埼玉県)の『辛口ばっか飲んでんじゃねえよ』には「辛口は旨い。甘口はまずい」という固定観念を覆す意図があるとのこと。米本来の味わいには甘味がある。米を原料とする日本酒も、また甘みに味わいがあります。

“酒”と“グラビア”と


蔵元がモデルとなった「SAKE漢(MEN)グラビア写真展」なるコーナーも設置されていました。


いつもは見られない彼らの素顔を見ると、「この男が造った酒を飲みたい」と思えてくるかもしれません。




また、写真家・藤代冥砂撮りおろし「きらめく一升瓶女子写真展」も展開されていました。





赤塚不二夫、楳図かずお、蛭子能収、しりあがり寿、安野モヨコらが創作したワンカップ


全国各地に棲息するいろんなカップ酒が集まったコーナー「集合! 全国ご当地カップ酒」も見ものです。










また、「ワンカップ」でおなじみ大関株式会社とのコラボにより、多彩な分野の30名のクリエイターによって創作された“デザイン・ワンカップ”も展示されていました。


まず、こちらは蛭子能収さんによる作品。タイトルは『みんな幸せ?』。


「楽しみにお酒を飲んでる人や嫌々上司に連れられて飲む人とかもいるだろうし、オールしたい人も早く帰りたい人もいるだろうし、そういういろんな人の顔を描きました」(蛭子さん)

しりあがり寿さんによる『Sake & moon』も展示。


「自分の理想の呑み姿です。月夜に外で寝っ転がってうい〜っと♪」(しりあがり寿さん)

赤塚不二夫さんがデザインした『祝! バカボン・ア太郎50周年!』がありました。


「おやパパと×(ばつ)さん、珍しいね。連載開始から50年も働いて(?)んだ、たまにはオヤジ同士水入らず、ゆっくり飲(や)ってくんな!」(赤塚さん)

楳図かずおさんによるワンカップ「楳図かずおの恐怖ぬりえ『ヘタに塗らないでー! わたし“洗礼のさくら”よ!! イヤーッ、やめてー!!!』」はこちら。


「このカップで飲めば、きっと、美味しいお酒が飲めるでしょう! 好きな色で、カップを塗ってね!!」(楳図さん)

こちらは、安野モヨコさんによる『着物ガール』です。


「Instagramに投稿した着物ガールのイラストを元につくってみました」(安野さん)

松本零士らが日本酒をイメージキャラクター化!


歴史と伝統、土地と人。それぞれの日本酒は「ものがたり」を持っています。日本酒に宿る物語を作家が描き出す日本酒キャラクター化プロジェクト、その名も「日本酒ものがたり展」も展開されていました。



これは、西田酒造店の特別純米酒『田酒』を松本零士さんがキャラクター化した「田酒泉心(たさかせんしん)」。年齢は138歳。無口でコミュニケーションは不器用だが、一口、杯を交わすと彼自身の強い信念が伝わり、溢れる旨みに多くの人が心奪われると言われています。


ささきむつみさんがキャラクター化した「澄(すみ)」。年齢は137歳。得意とするのは舞。ひとひら袖振るだけで、その姿を見たものは華やかさに見惚れ、透き通った香りに心清らかになるそう。


美樹本晴彦さんによる「明利(あかり)。年齢は160歳前後。あちらこちらで騒ぎがあれば「彼女がいる」と囁かれる傾奇者です。

新酒ができたことを知らせる「杉玉」が吊るされていた



イベント期間中は、一日4〜5種類のお酒が用意され、試飲チケットと引き換えに希望の銘柄を選んで一口飲むことができるらしい。昨日は内覧会だったので特別に4銘柄を試飲させていただいたのですが、全部美味しくて困っちゃったくらいで!
悩んだ挙句に記者は以下の2銘柄を購入し、持ち帰って、一日で飲み干しました。




ちなみにこれ、何だかわかります?


これは「杉玉」と呼ばれるもので、新酒ができたことを知らせるために吊るすものだそう。今回の展示会場内にも吊るされていました。

はっきり言って、展覧会の全てのコーナーが興味深かったです。お酒をこんなにもサブカルチャー的に掘り下げるだなんて、切り口が斬新!
(寺西ジャジューカ)