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 山本一郎(やまもといちろう)です。最近ポケモンGOを半年ぶりに復帰したところ、なんか新しいフィーチャーが山盛りになっててキャッチアップが大変です。困ったもんです。

 ところで、この原稿を書いている1月18日、まもなくアメリカ新大統領に就任予定のトランプさんの支持率が40%だとかいう面白ネタが回ってきて、市場がドン引きするという流れになっております。

 本人曰く「支持率は不正操作だ」。そうですか。さらには、トランプさんの大統領手運式に民主党議員を中心にボイコットが続出する見込みが伝えられ、大統領処女航海の船出前に座礁しかねない勢いです。どういうことなんでしょう。


 ボイコットの引き金になったルイスさんはマイノリティの政治参画・公民権運動で尊敬されている政治家で、Newsweekにも詳細が載っていますが、いろいろ活動の音頭は取るものの穏健な御仁です。そのルイスさんをネタにツイッターでトランプさんが「お前の選挙区の犯罪者多すぎ解決してからにしろ」とか「どうせ何もできない口だけ野郎のくせに」みたいな罵声がストレートに飛び出して凄いことになるわけです。ヘイ! 何してるんだいドナルド!

 もっとも、もともとルイスさんもトランプさんを正統な大統領と認めないみたいなことを言ってるわけでして、なんかこう、尊敬されるべき世界帝国アメリカの中枢では偉い人同士が右と左に分かれて、汚物の投げ合いでクソまみれになっている現状を憂慮するわけであります。

Congressman John Lewis should finally focus on the burning and crime infested inner-cities of the U.S. I can use all the help I can get!

- Donald J. Trump (@realDonaldTrump)

Congressman John Lewis should spend more time on fixing and helping his district, which is in horrible shape and falling apart (not to......

- Donald J. Trump (@realDonaldTrump)

 そのような状況で日本だけが無風でいられるはずもなく、トランプさん大統領就任で「意外と経済重視の穏便な政治をやるんじゃないか」と期待する向きが勝手に作り上げたトランプ相場が崩れ落ち、1ドル120円を伺うかという円安を享受していた日本は「やっぱトランプさんかなりのアレじゃね」という現実に気づいてしまった相場にやられて112円まで円高になってしまいました。

 時事通信の窪園さんも、実質的に無防備な状態に晒される可能性のある日本銀行の脆弱性が理由で、主導権なき乱気流に巻き込まれるのではないかという観測を出すほど、微妙な情勢になっているわけであります。いわれてみれば、markethackの広瀬さんも「トランプ相場の早期終焉」は年始にはっきり予言はされていたわけで、お祭りの終わりを感じさせる何かはやはりあるんじゃないかと思うわけです。

 そんな動乱待ったなしのトランプさんですが、閣僚人事や繰り返される発言を紐解いてみると、どうも対中強硬派を中心に経済タカ派的な動きをするのではないかという見立てが強くなってきています。

■トランプ政権の余波

 トランプさんは政治家としてのキャリアは皆無であるため、いわゆる外交的な立ち居振る舞いについては無知である前提でいろんな観測があったわけなんですが、大統領就任前の面白演説の際にもロシアとの関係が突っ込まれたり、CIAなど身内である情報部門との対立がうさわされる以上に「一定以上、状況を分かってて中国との対立構造を演出しているのではないか」と見られる節があります。そのひとつが台湾接近と「一つの中国」の原則を正面から正論で踏みにじるトランプさんのアプローチです。

 トランプさんはアメリカに尊厳を取り戻し、保護主義的な経済アプローチを目指すと大統領選のころから主張を続け、中国の経済政策を強く批判したうえで、45%の関税をかけると言い放って閣僚人事でも対中強硬派を揃えているところを見ると、駆け引きとかブラフではなく正気かつ本気で中国との対立政策を実施する可能性は高いのではないかと予想されます。

 正直、米中の経済においては呉越同舟的な互恵関係がある中でトランプさんの強硬策が本当にアメリカの国益に資するのかというのはいまの段階では良く分かりません。ただ、それがおそらく必ずしも合理的な選択とは思わない層がアメリカ人にも多く、メディアとも対立している現状を見るに「見返りが少なく分の悪い賭け」であるようにも感じられます。

 ある意味で、酔っ払いドライバーの助手席に乗せられているのが日本だとも言えるわけで、ここで本格的に米中経済断絶でも起きて中国に深刻なリセッション(不況)が発生すると、一番最初に経済失調の波をかぶるのは他ならぬ日本であります。

 そういうこともあって、急な不況でも大丈夫なような準備だけは粛々とやっておく必要があるんじゃないかと思いつつ、まだ心のどこかで「トランプさん、実は穏便な経済政策をやる人だった」というどんでん返しがあるんだろうかねえ、と、うっすらとした希望を持ってたりする乙女心が止まりません。

 いやー、どうにかならないものですかね。

著者プロフィール


ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研