金正恩氏

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北朝鮮当局が平安南道の介川(ケチョン)にある14号管理所を拡張していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。管理所とは、いわゆる政治犯収容所のこと。人間が想像し得るあらゆる残酷な行為が行われている「この世の地獄」である。

29日、RFAに出演した米ジョンズホプキンス大学米韓研究所のカーティス・メルビン研究員によれば、今年3月30日に撮影された14号管理所の衛星写真から、本部建物の隣に270メートルの射撃場が新設され、さらには魚の養殖場も新たに作られたことが分かるという。

いずれ「皆殺し」か

同研究員はまた、同管理所の敷地内では射撃場などの施設や建物がほかにも作られており、「14号管理所は大きくなっている」と指摘している。

デイリーNKジャパンは近く発表するムック『脱北者が明かす北朝鮮』の中で、管理所の非道を告発し続けている脱北者、安明哲氏のインタビューを行った。安氏は1980年代から90年代にかけて、4つの管理所に警備隊員として勤務した経歴を持つ。

安氏によれば、かつて10カ所以上が存在した管理所は、現在では5カ所にまで減り、うち1カ所は教化所(一般刑務所)に転用されたと見られているという。しかし、それは金正恩体制が恐怖政治を止めようとしているからではなくて、「国際社会の圧力などの理由から国内で合理化を図ったもので、残った管理所を拡大する方針を取っている」のだという。

また、過去には収容者が釈放される例もあったのが、最近では例外なく「無期刑」とされているそうだ。元収容者が脱北し、管理所での残虐行為が国際社会に告発されるのを防ぐためだ。

そうした実態にも増して、安氏の話で衝撃的だったのは、「仮にいまの体制がもたないと北朝鮮の指導部が判断したら、証拠隠滅のため、収容者を皆殺しにするだろう。私もそのように教えられた」との説明だ。

核・ミサイル開発を巡り、米韓との対決姿勢を強めている金正恩党委員長の頭に、「万が一、敗れたら」との思いがあってもおかしくはない。それを考えたとき、管理所内での射撃場増設の動きに背筋が寒くなる思いがするのは、筆者だけだろうか。

(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」