3番目は、外国の中央銀行、特に中国の中央銀行が巨額な米債投資を行っているのが要因というシナリオだが、グリーンスパン議長は「疑いもなく、それらの外国の中央銀行による米国の長期債購入が長期金利の低下をもたらしているのは事実だが、米国債市場の大きさを考えると、それらの投資の増加は緩やかなものだ。また、最近のFRBの調査研究でも、外国の中銀による投資は、なぜ米国債以外の長期債の金利もかなり低下しているのかについて、うまく説明できないことが分かっている」として、否定する。

  最後は、旧ソ連の崩壊とインドと中国の世界貿易体制への参入で低コストの生産能力が増し、同時に世界の金融市場の一体化が進んだ結果、世界の貯蓄資金が国境を越えて、自由に動いて長期債投資が以前に比べて増えた。それによって、低インフレがもたらされ、低インフレのプレミアムが長期金利の低下に寄与しているという説だ。しかし、同議長は「これは過去10年間の経緯の説明にはなるが、ここ1年間で生じた長期金利の低下の説明にはならない」として、否定するのだ。

  スーザン・バイズFRB理事は8日、ボストンで講演した際、長期金利の低下のリスクについて、長期金利が低下して最も心配なのは、ここ数年日本で見られているようなゼロ金利近くまで金利が押し下げられるかどうかだと述べたが、同理事は、日本では銀行が弱いため、ゼロ金利政策という尋常ではない政策が取られたためだとし、「米国の銀行は基盤がしっかりしているので、我々は銀行や資本市場を通じて、流動性資金の供給が可能であり、金利水準はかなりプラスになることが可能だとして、そうした懸念を払拭している。【了】

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