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●どうして電気ケトル?
バルミューダは9月26日、電気ケトル「BALMUDA The Pot」の発表会を開催。開発経緯を説明したほか、BALMUDA The Potを使ってコーヒーをハンドドリップする体験会を実施した。

BALMUDA The Potは、2015年に発売したトースター「BALMUDA The Toaster」に続くキッチンシリーズ第2弾で、「小さくて美しい」をコンセプトに開発。コンパクトで持ちやすい形状と、コーヒーポットさながらの細い注ぎ口が特徴だ。

バルミューダ代表取締役 寺尾玄氏は、バルミューダの製品開発に対する姿勢を「ものより体験」と説明する。第1弾のトースターについても、トースターという「もの」ではなく、焼きあがったトーストのおいしさ、食卓に並んだ時の嬉しさを提供したかったのだという。それが理解されたのか、結果的に販売台数はこれまでで15万台超を記録。バルミューダの製品で最も売れた製品となった。

キッチン製品の展望としては、「すっごくおいしい炊飯器」「オーブンレンジ」「コーヒーメーカー」などの投入を予定。特に炊飯器については2016年の発表を目指して開発しているが、実際に年内に披露できるかどうかは「……微妙です! 」とのことだ。現在は量産化に向けて"味出し"の検証を重ねている段階らしいので、こちらも期待して待ちたいところだ。

話をBALMUDA The Potに戻すが、開発に至る経緯としては、寺尾氏が1冊の本と出会ったことが大きなきっかけとなっているそう。その本は、東京・浅草の洋食店、レストラン大宮のオーナーシェフによるレシピ本『本当においしく作れる洋食』。寺尾氏は「これに載っているレシピを家で作って、お父さんすごい! と子どもに言われたかった。本そのものでなく、すごい! と言われる体験を買った」と話す。なんでも、これに載っているハンバーグをレシピ通り作るべく、スキレット(鉄製のミニフライパン)も購入したというから、かなりの力の入れようだ。ちなみにこのスキレット、「ベーコンをカリカリに焼いて卵を落とすと最高」だそうで、空腹の筆者、このパートは聴いてて本当につらかった。

これまで、BALMUDA The Toasterとトースター(とスキレット)のおかげで充実した朝食ライフを楽しんでいた寺尾氏だったが、「(トーストと一緒に)丁寧に淹れたコーヒーも飲みたい」という欲求が生まれ始めたという。自らコーヒーについて調べ、ハンドドリップに挑戦するようになったが、やってみてわかったのは、とにかくお湯の注ぎにくいケトルが多い、ということだった。注ぎ口の細いポットを使えばいいのだが、ハンドドリップ用のポットは湯沸かし機能がないうえ、コンロで直接火にかけられないので、ケトルで沸かした湯をポットに入れかえて使う必要がある。ただでさえ工程が多く、ストレスが多いハンドドリップなのに、これじゃあんまりだということで生まれたのが、「最高の注ぎ心地」を追求した、BALMUDA The Potだ。

●夜明けの即席ラーメンにも
BALMUDA The Potのウリは、お湯を注ぎやすい形状と美しいデザイン。寺尾氏は、BALMUDA The Toasterが受け入れられた要因に、「デザインの良さ」が少なからずあると分析しており、BALMUDA The Potにおいても「なるべく気持ちよく、楽しく暮らすために、どういう大きさ・質感であるべきかを考えた」という。

容量は600mlで、コーヒー3杯分、即席ラーメン2杯分を作るのにちょうどいいサイズだ。と、ここで急に即席ラーメンの話が出てきたが、これには寺尾氏の思い出が関係。「高校時代、バイクで夜通し走った後、夜明けの県道沿いで、自動販売機の即席ラーメンを食べるのが最高においしかった。今でも即席ラーメンを食べるときは、夜明けの寒い日に、あえて外に出て食べる。それがとてもおいしい! 」と、ここにも寺尾氏ならではの熱が垣間見えた。

BALMUDA The Potの注ぎ口は細くなっているが、「即席ラーメンはなるべく早く食べたいだろう」という配慮のもと、お湯を注ぎきるまでに時間がかかりすぎないよう設計。最高のハンドドリップと、普段使いでもストレスのない速度を両立したという。どうでもいいが、ここまで聴いて筆者、ラーメンも食べたくなってきた。

●世界最高峰のバリスタが教える、コーヒーの淹れ方
続いて、コーヒーショップ「REC COFFEE」のオーナーで、ジャパンバリスタチャンピオンシップで2連覇の経験がある岩瀬由和氏が登場し、BALMUDA The Pot、バルミューダオリジナルのドリッパー、サーバーを使ったハンドドリップのデモンストレーションを行った。今回は、コーヒー豆20gで2杯分を抽出。以下、筆者が実践したときの写真を中心に紹介する。

まず、ペーパーのフィルターの継ぎ目を一度織ってドリッパーにセット。引いた豆を入れる前に、フィルターを濡らすようにお湯を通しておく。

通したお湯は捨てるか別の容器にはけ、濡れたフィルターにコーヒー豆を全てセット、コーヒー豆がすべて浸る程度のお湯を入れて、30秒ほど蒸らす。お湯はドリッパーの真ん中に注ぎ、「の」の字は無理に描かなくてもよいそう。コーヒーが2杯分落ちたら、マグカップに注いで終了となる。

筆者は運よく岩瀬氏が淹れたコーヒーをいただけたが、あまりのすばらしさに驚かされた。酸味や苦味のいやらしさがまったく無く、口の中でとろける感覚すら広がるような、やさしい深み。とりあえず、ベーコンやラーメンを食べたくなっていたことは完全に忘れた。

プレゼンテーションのあとは、岩瀬氏によるレクチャーのもとペーパードリップを体験。筆者も岩瀬氏のレクチャーの通り淹れてみた。つもりだが、味が違う……。おいしさのストライクゾーンには確実に入っているが、岩瀬氏が淹れたコーヒーがど真ん中だっただけに、差を感じてしまう。BALMUDA The Potが発売されたら、プロのコーヒー目指して家で練習する人が増えるんだろうなあ、と想像が膨らんだ。

(藤谷佳奈)