「ジョジョの奇妙な冒険」塵も積もれば山となる、ごしぇんえんぐらいにはなったかな〜
重ちー=山口勝平さん!
山口勝平だー! 今回から登場するスタンド使い・ハーヴェストの重ちー(矢安宮重清)の声が聞こえるや、全国でそんな歓声が上がったはず。億泰の高木渉さんや音石明の森久保祥太郎さんと同じく、ゲーム版からのハマり役の一人だったからだ。
中国でもアイドル的な人気があり、サイン会や握手会も押すな押すなの大盛況という勝平さんは声優歴が30年近い大ベテラン。有名どころでは『らんま1/2』の早乙女乱馬(水をかぶると変身する女らんまが林原めぐみさん)や『ワンピース』のウソップに『犬夜叉』の主演。『機動武闘伝Gガンダ』のサイ・サイシーや『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日 -』の草間大作などロボットアニメの少年役も数々ある。
そうした「主役声」の一方で、『Persona4 the ANIMATION』のクマなどクセのある役の印象は強烈。『乱歩奇譚』での役は、殺人事件の現場を再現するための「死体君」ですよ!!
実は今回の重ちー役はジョジョ出演の「二作目」で、勝平さんの初ジョジョは
第三部の『スターダストクルセイダース』。船と一体化したスタンド「ストレングス」、その本体であるオランウータンのフォーエバーだった。ウホウホ言ったり奇声を上げたり演技が自然すぎて、エンディングのクレジットを見て山口勝平だー!と驚かれたもの。でも勝平さんである必然性があまりなく、スタッフも驚かすためだけにやったんだろうなあ……。
億泰の高木渉さんとも浅からぬ縁があり、CGアニメ『ビーストウォーズ』シリーズでは豹ロボのチータス&ネズミロボのラットルとして名コンビ。特に最終作『ビーストウォーズ・リターンズ』はテレビ放送がなかった分、アドリブ合戦のタガが外れてるので絶対見るべし(dアニメストアで配信中)。
第18話は、こんなお話
貯金の残高、285円! 金欠に頭を抱える仗助は、ATMの下から1円玉を拾った小型のスタンドを見つける。途中で合流した億泰とともに後を追うと、、そこには新たなスタンド使い、矢安宮重清(重ちー)との出会いがあった。無数の群体スタンド・ハーヴェストで町中の小銭を集めていた重ちーに、仗助はある「ビジネス」の提案をするのだった……
くれるっつーもんなら病気以外ならなんでももらう!
第四部で一番しょーもなく、最も人間くさいエピソード! 仗助も主役らしからぬ欲望と人間性がむき出しで、「第四部らしい」と人気も根強いお話が、前後編で二話かけて丁寧にアニメ化される嬉しさ。
「まるで自覚症状もなく病のように僕達の街、杜王町には何者かが潜んでいて街のどこかで殺人を行っている。しかも殺人自体に誰も気づいていないのです。なんてショッキングで心のうすら寒くなる情報でしょう」
杉本鈴美の墓参りする露伴先生はアニメオリジナル。傷跡は癒えないどころか、深刻な病巣が杜王町の何処かで広がっている。本当の第四部、「町を守る戦い」がいよいよ始まったのだと想いを強くする康一くんのモノローグだ。
「そして人は自覚症状のない大問題よりは今晩の夕食のおかずは何にしよう、といった目の前の事柄に頭を悩ますものです」
貯金の残高が285円しかない!手持ちの金も12円しかなくて途方に暮れる我らの主人公。まぁ「目の前の金欠」は心を掴んで離しませんよね。
「あのクソジジイのせいだ!13万円も赤ん坊グッズを俺のカードで買ったから!」(第13話参照)
「13万はジジイに後で払わせたがちょっとぐれー使ってもいいかななんて金銭感覚がマヒしちまったんだ!」
完全に八つ当たり! この俗っぽさと崇高さが同居する仗助の性格、歴代ジョジョの中では異色……いや父ジョセフと生き写しですかね。
そこに、ATMの下から1円玉を持って這い出してきた小さなスタンド。追っかけてみると、億泰がブッ殺してやるぜコラー!と爆走してきた。スタンド攻撃を受けたからではなく、ビックラこいてカルピスウォーターを学ランにこぼしちまっまたから。その顔でカルピス、しかも逆恨みというギャップ萌えの可愛さ。仗助とのコンビ、実にディ・モールトベネ(非常に良しッ)!
一匹また一匹と増え続けて無数になったスタンドは、億泰の兄・慶長のバッドカンパニーと同じような群体型。一つずつは非力だが、一匹潰しても本体に大したダメージはなく、群れで襲われると厄介極まるタイプだ。
その本体は、すばしっこいスタンドとは正反対の丸まっちい体型をした矢安宮重清。「みんなよく拾ってきたね〜。塵も積もれば山となる、ごしぇんえんぐらいにはなったかな〜」とキモカワイイしゃべり、山口勝平さんにベストマッチである。
「おい…あいつが本体だぜ。スタンド相手にお話してるぜ……」
お話してるという表現をする主人公がヒドい、ヒドイぐらい的確な表現で困る。
重ちーの「切手の41円と62円と150円に味の違いあんのかな〜」というセリフに90年代後半という時代を感じつつ、お金の重さはいつの世も同じ。誰にも褒められたことないという重ちーの小銭集めを「金額は少ないが眠ってる金を日本経済に戻してやってんだからな、立派なことだぜ」と褒める仗助。しかし今まで12万円ぐらい拾ったけど……と聞いて目の色が変わる。
オラ達仲間だよねと差し出された小銭を受け取らない仗助。「そう簡単に人に金やモノをくれてやるもんじゃないぜ」といい子ぶるが、腹に一物あり。「俺はくれるっつーもんなら病気以外ならなんでももらうかんな!」とぶっちゃける億泰=高木渉さんのセリフに、『真田丸』(高木さんも出演)で真田昌幸パパが同じようなこと言ってた!とTwitterが盛り上がっていて最高でした。
現ナマは人を狂わせる
「これはもらえない。今オメーがやろうとしたことは金で友情を買おうとしたのと同じことだぜ。友情っつーもんは何かを通して育てていくもんだと思うのよ」
さすが仗助、主人公にふさわしい黄金の精神。「友情は成長の遅い植物である」という『キン肉マン』最終回をほうふつさせるいい言葉だ……。
「でだな。これから一つのビジネスを通して友情を育てていこうじゃあないか!」
うさんくさいこと言い出した! 感動の言葉をセールストークにつなげる抜け目なさ、究極生物にいっぱい食わせた不動産王・ジョセフの血が濃いですよね。
仗助の言い出したアイディアはこうだ。東日本最大のチェーンデパートの一つ・カメユーで買い物すると100円につき1枚くれるシールがある。その捨ててるやつを集めて、キャッシュバックで金儲けしよう……。いい考えだ、ほぼポイントカードになってる現在では使えない手だけど。
ちなみに、カメユーデパートの名前は覚えておいて損はない。重ちーの運命に深く関わるあの男の勤務先として……。
「アイディア料として稼いだ半分を俺と億泰にくれ!半分は重ちーが取る。3人で組んで一大プロジェクトを達成するんだよ!それでみんなが幸せになれるっつーわけよ!」
よく考えるとアイディア料で半分はボッタクリ、しかも億泰は何もしてない! これが後々の火種になるわけだ。あと「カネの取り分で口約束はヤバイ」という教訓もあり。
ハーヴェストが街中から集めた何千枚ものシールや補助券をウキウキと換金しに行く三人。それを遠巻きに見ていた康一くんは、原作にはいなかったはず……それを見ている山岸由花子! たぶん1ヶ月先になる話の伏線も張っているアニメ版は、芸が細かいっすね。
予想外に6万1千500円にもなったキャッシュバック、重ちーが得意絶頂! アニメで色の付いたトゲトゲ頭のアヘ顔は破壊力バツグン。しかし金を渡された重ちーはネーチャンを遊びに誘ったり、3万円以上の分け前を1万円に値切ったり。ああ、現ナマって人の心を狂わせるという話だ。
「それに集めたの全部オラのハーヴェストの仕事だぞ…全部やったんだぞ…あんた達は喋ってるだけで何もしなかった」
重ちー、ぐう正論。仗助のクレイジーダイヤモンドは破れたシールを直したが、それにしたって半分は取り過ぎ。そもそも、数千円なら払っていいが万単位になると急に払うのが惜しくなってくる心理は避けがたい。
俺達が大人になって引くとしようと、億泰と自分をなだめる仗助、精神年齢が高いなあ。ここで喧嘩したってしょうがねえ、少しずつ大人の契約ってものを教えていくんだ……もはや起業家マインド!
重ちーが何か飲みたいのある?と聞かれてカルピスウォーターと答え、飲めば〜とスカされる億泰のガキっぽさが素敵。しかし億泰、謎のカルピスウォーター推しである。
が、さらなる儲け話をひねり出したのは億泰のザ・脳みそ。さっきついでに拾ってこいといったゴミ券の中に、500,万円のあたりくじが混じってた! それを隠しもせずに叫んで重ちーに知らせる億泰はやっぱり億泰でした。二人の脳内には花火がドーン! JOJOとHAPPYは原作にあったが、URYYYYとDORADORAはアニメスタッフの仕業だ!
「換金する時とき行でいちいちうるせぇ事言われても正々堂々と俺達が買ったってことにする。ここまではいいか?」
「つまり俺達の500万円だ!」
もちろん日本の法律では、拾った宝くじはあくまで買った人のもので(原作でもそう言われてます)堂々と悪巧みをする少年マンガの主人公たち。重ちーもゴゴゴと不穏な気配をはらみつつ、次回に続く!
(多根清史)