さらに圧巻だったのは、35分の3点目。これもボランチからのサイドチェンジが起点だった。柏木のボールに反応した岡崎が右コーナーフラッグ付近で粘り、小林悠に折り返す。小林悠がグラウンダーのクロスを中央に送った瞬間、清武が鋭い動きでスルー。ボールはゴール前の香川へ渡った。背番号10をつける男は反転で相手DFを巧みにかわしながら左足でフィニッシュ。このゴールには5選手が絡んでいた。「あの一連の流れはチームとしての(得点に至る)形だった」と、香川は理想的な崩しの形だったことを明かしている。

 この3ゴールから分かるように、本田のような圧倒的存在感を誇る個への依存を脱するためには、選手同士、グループ、そしてチーム全体の連係や連動性を突き詰めること。それが1つの解決策になり得るのだ。

「今回は圭佑がいない分、違う選手の特長があるから、それを生かしたいと思ってやりました。キヨとか真司、オカちゃんも非常に素晴らしいプレーしてくれたし、悠もすごくいい動き出しをしていた」と、長谷部は攻撃陣の長所を引き出すことを第一に考えたという。それは清武も同じだ。「圭佑君は日本代表にとって欠かせない重要な選手だとは思うんですけど、出た人がその人の良さを出していかないとチームは良くならない」と語り、岡崎の動き出しの速さとヘディングの強さ、香川の創造性あふれるプレー、小林悠の前へ出ていくスピード、柏木の左足からの多彩なパスを頭に入れながら、自分の動きを微妙に変化させていったのだ。

 こうした結果、前半の日本はダイレクトのパスワークや展開を劇的に増やし、ブルガリアの守備陣を翻弄することができた。もちろん、吉田麻也(サウサンプトン)が「期待していたけど拍子抜けだった」と本音を吐露したように、相手が予想外に弱かったのも事実だが、誰が出ても今回のような高度な連係や連動性をピッチ上でコンスタントに示せれば、本田や香川、岡崎のいずれかが離脱しても、日本代表の攻撃力はそこまで落ちることはないはずだ。

 代表は活動期間が極めて少なく、短期間でコンビネーションを熟成させるのは難しいが、あえてそこにトライしていくことでしか、世界に伍していくのは難しい。この日の前半の理想的な戦い方を何度も繰り返していくことが肝要だ。7日に行われるボスニア・ヘルツェゴヴィナ代表との決勝では本田と香川を欠く可能性も十分に考えられるだけに、選手たちにはより密に意思疎通を図り、攻撃のバリエーションを増やしていってもらいたい。

文=元川悦子