左から、特製ツナマヨおにぎり(¥200)にプチプチ嬉しい玄米塩にぎり(¥180)。お味噌汁(¥180)の具は日替わり。けんぴは各種パック売りで販売(1パック¥320〜)。けんぴもおにぎりも日によっては売り切れてしまうことも。全種から吟味したい場合は朝の来店がおすすめです。

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フードライターとして活躍している平野紗季子さんが、オススメの飲食店を紹介してくれました。教えてくれたのは『加藤けんぴ店』の芋けんぴと、日本人の本能をくすぐるあの黄金コンビです。

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世の中には非常に輝かしいけれども毎日は食べられない、という味があれば、気づけば隅っこからじわじわ日々を支えてくれるような味もある。物珍しいカラフル横文字スイーツが前者なら、地味な茶色系おやつは後者。そしてそんな地味おやつの一員こと芋けんぴを主役に店を開いたのが加藤晶夫さん。昨年10月に東京・国分寺に誕生した『加藤けんぴ店』はその名の通り芋けんぴの専門店で、なんともじわじわくる良さがある。

加藤さんが5年の歳月をかけてマニアックに追求してきた芋けんぴは、芋の品種によって揚げ方・切り方・味つけを変え、芋の個性を生かすことに尽力した一級品。かみしめるほどに広がる芋の味わい深さに食べる手が止まらないのは本能だと思う。芋けんぴの脇を固めるのは、おにぎりにお味噌汁、という日本人のDNAに刻み込まれたスタンダードコンビ。昔ながらの鉄の羽釜で炊き上げるお米は、甘さがあって冷めても美味しい。

店の畳敷きの小上がりでおにぎりを食べ、一番出汁の効いたお味噌汁を飲み、芋けんぴをガシガシやっていると、もうこのままごろんと横になりたくなるような実家マインドが醸成される。この平穏さ、じわじわ愛しい。息のつまる日々の中にこんな時間が一点でも存在すれば、それだけで救われる思いがする。

◇左から、特製ツナマヨおにぎり(¥200)にプチプチ嬉しい玄米塩にぎり(¥180)。お味噌汁(¥180)の具は日替わり。けんぴは各種パック売りで販売(1パック¥320〜)。けんぴもおにぎりも日によっては売り切れてしまうことも。全種から吟味したい場合は朝の来店がおすすめです。

◇加藤けんぴ店 東京都国分寺市東元町2‐18‐16 吉野ビル103 TEL:042・312・2370 7:00〜10:00、12:00〜17:00(土・祝日11:00〜18:00) 日・月曜休 http://www.kato-kenpi.com

◇ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードライター。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。

※『anan』2016年1月13日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子 《anan編集部》