いよいよ秋本番。日が落ちると肌寒い季節になってきた。そろそろ、温泉にでも入ってゆっくり温まりたいものだ。
温泉といえば、AV撮影やいかがわしい行為が横行していたことが原因で栃木県那須塩原の混浴露天風呂「不動の湯」が一時閉鎖となり話題となった。
いったいなぜ公共の場でAVを撮影するのか。真面目に取材した書籍が発売されている。

『温泉批評』2015秋冬号では「共同湯は誰のものか?」という76ページにわたる総力特集を組んでおり、そのなかに「混浴AV撮影の実態」という『温泉批評』取材班による記事がある。



混浴AVはそれほど儲かるわけではない


取材班はまず、アダルトショップに趣き、温泉もののAVが数多く売られている現場を視察。中にはパッケージを見るだけで、どこの温泉か特定できるAVも販売されていたという。特集ページには、該当のAVと思わしきパッケージ写真がいくつか掲載されているが、温泉事情に明るくない筆者には、どこで撮影されているのかまったく見当がつかない。それでも、彼らのような温泉愛好家が見れば、パッケージ写真の限られた情報だけで、どこの場所かすぐに判別できてしまうようだ。

これをふまえて、なぜ公共の場である混浴温泉で撮影をするのか、AVメーカー社員に取材している。
近年は無料でアダルト動画が見られるサイトの人気などによって、“とにかく過激でマニア受けするもの”を作らざるを得ない環境にあると説明。さらに「よりスリリングな場所で撮影するのは必然の成り行きでした。もはや制作スタッフの撮影リスクはお構いなしになっています」と語っている。

驚きなのは、逮捕されるリスクを冒してまで制作しているにも関わらず、そこまで儲かるものではないそうだ。同誌では制作会社のスタッフにも取材しており、低コストで作らなくてはならず、人員もあまり割けない懐事情が明かされている。それでもAVを作り続ける制作会社の人間も、もしかしたら一種の愛好家なのかもしれない。

『温泉批評』取材班は、メーカーや制作会社だけでなく、出演する女優にも話を聞いている。「ギャラがもらえて温泉にも入れるなんてラッキー! って感じです」と女優歴11年の32歳女性がコメントしていた。たしかに仕事で温泉に入れるのであれば誰でも嬉しいだろう。だが、温泉の運営団体や、純粋に入浴を楽しむ温泉愛好家の人たちにとっては由々しき問題であることは間違いない。

ちなみに冒頭でふれた那須塩原の「不動の湯」は一時閉鎖から2カ月というスピードで再開しているそうで、『温泉批評』2015年秋冬号では閉鎖から再開までの詳細も掲載されている。
もちろん温泉にまつわる問題だけでなく、「共同湯はなぜ熱いのか」について語る座談会や、観光地のように整備されていない野外温泉へ単独で行く旅行記といった温泉専門誌らしいコラムのほか、全国から選り抜いた編集部おすすめの共同湯をカラー写真で紹介するなど充実の内容。温泉の奥深さを感じる書籍となっている。
(しげお)