エジプト観光といえば、ピラミッドにスフィンクス。人生で一度は見てみたいと思う人も多いのでは? だが、エジプトを訪れる日本人観光客は、2011年の民主化運動「アラブの春」で、ムバラク政権が崩壊して以降、政情への不安などから減少している。

そんななか、9月に開催された世界最大級の旅の祭典「ツーリズムEXPOジャパン2015」にはエジプト政府観光局も出展。来日していた日本担当のイスマイル・ハミド氏に、エジプトの今について、あれこれ聞いてみた。



エジプトを訪れる観光客数が多い国はどこ?



――エジプトって今、ふつうに観光ができる状況なんですか?
「旅行者にとっては安全です。4年前にクーデターもありましたが、それはあくまで国内の問題。実際、2011年のクーデター以降も、毎年エジプトには約1000万人の観光客が来ています。今はすでに大統領がいて、10月には新しい組閣も始まります。国が整い、より旅行者を迎え入れる準備ができているといえます」

クーデター前は約1470万人の旅行者がいたというから、約30%も減少しているが、それでも1000万人というのは、かなり大きな数字! ちなみに2014年の訪日観光客は約1300万人強だ。

ただ、日本人観光客に限っていえば、その数の落ち込み方は著しい。2010年には年間約12万6000人いた旅行者が2014年には約1万2000人になってしまった。実に90%の減少だ。

「日本は時差もあるし、距離も遠いので、情報が少ないということも一因だと思います。いま一番多いのは、ロシア人観光客。クーデター前にも年間約280万人の旅行者がいましたが、2014年は約320万人にまで増えました。ロシアやヨーロッパは距離が近く、関係も深いため、私たちの状況を理解しやすいのだと思います」

ちなみにヨーロッパの中ではイギリスやドイツが多く、アジアの中で多いのはインドだそう。

日本人はピラミッド、ロシア人はビーチ好き


――エジプト観光といえば、やっぱりおすすめはピラミッドでしょうか?
「そうですね。日本人旅行者の方のメインアトラクションはピラミッドです。でも、他にもいろいろありますよ。名高いダイビングスポットもあるし、砂漠もあるし、リゾートホテルも充実。ゴルフや買い物、ナイトライフも楽しめます」

日本人がわざわざビーチやダイビングだけを目的にエジプトまで行くことは、そうないだろうが、ピラミッドを見たうえで、プラスアルファのお楽しみが多いのは嬉しいかも。ちなみにロシアの人たちは、寒い冬から逃れるようにエジプトにやってくるそうで、ビーチリゾートでくつろぐのがメインの目的とのこと。
「ロシアがマイナス20度の真冬でも、エジプトは20度前後。モスクワからのフライト時間はわずか4時間。そんな短時間で40度の気温差を超えられます」

エジプトの気候は都市によってことなるが、ピラミッドを見られるギザやカイロは季節を問わず、一年中がベストシーズン。ルクソールからアスワン周辺の古代神殿巡りを楽しむなら、真夏を避けた9月〜5月あたりがおすすめだそう。


なお、エジプトの主要な観光都市の治安は、日本の外務省の危険情報では「レベル1:十分注意してください」になっている。また、エジプト自体の問題ではないが、イスラム過激派組織の動向などにも注意は必要だろう。それでも、2015年の1〜7月の日本人観光客は前年比で約54%アップだというから、観光は回復基調にあるようだ。個人的にもぜひ死ぬまでに一度は訪れて、本物のピラミッドの迫力に圧倒されてみたい。
(古屋江美子)