日本と戦うイラン代表の「本気度」は?メンバーから採点する
8日に行われたシリア戦で0-3と勝利を収め、シンガポールとの痛い引き分けで負った傷を完全に治した日本代表。
内容としてはピークに達したとは言えないものの、とにかく最大のライバルに差を付けて首位に立ったことは完璧とも言える結果である。
そんなハリルジャパンが本日戦うのは、カルロス・ケイロス監督率いるイラン代表チーム。
昨年はワールドカップに出場を果たし、アルゼンチンを相手に健闘したことで大きく名を上げており、FIFAランキングでも日本を大きく上回る39位に付けている。
今回の親善試合に臨んできたイラン代表のメンバーはどれだけ本気なのだろうか? Qolyでアジアを担当する編集部K(籠信明)が採点する。
編集部Kの採点
今回のイラン代表の本気度は……ズバリ、65点です。
編集部Kのコメント
日本でも比較的有名なアジアのチームと言えるイラン。ワールドカップの出場経験も豊富で、選手の知名度も高い。
昨年のアルゼンチン戦では左サイドのマハルダード・プーラディがリオネル・メッシを抑え、ロスタイムに失点するまで耐え抜いた。
その守備力こそがカルロス・ケイロス監督が就任してから植え付けてきたものであり、苦戦していたアジアのチームの中で意地を見せたと言える。
アジアカップではイラクに競り負けてベスト8で散ったものの、FIFAランキングは高止まりしている。3月の親善試合では強豪チリにも勝っており、今年の対戦相手の中では実力ナンバーワンだろう。
もちろん、今回のインターナショナルマッチウィークではオマーンとの公式戦があったので、「本気」という点で気持ちは100%で間違いないのだが…
メンバーから見る「本気度」
なのに現在のイラン代表が「100%」と言い切れないのは、2つの要素がある。
1つめは世代交代だ。先日のアジアカップを最後に重鎮ジャヴァド・ネクーナムが代表を引退しており、中核となっていたキャプテンがいなくなってしまった。
さらにカルロス・ケイロス監督は30台を超えたハシーム・ベイクザデーとアミール・ホセイン・サデギの2名を落としており、更なる若返りを図っている。
もう1つは怪我人とサスペンションの多さだ。
イングランドでプレーしているFWレザ・グーシャネジャド、そして招集されていたアリレザ・ジャハンバフシュの2名が負傷でプレーできない。
マハルダード・プーラディは兵役逃れのためにイランに戻れず、ムハンマド・レザ・ハンザデーは4月にカタールでファンを殴って9ヶ月の出場停止になっている。
そのため今回のメンバーの構成は「実績あるメンバーで組めはするが、とにかく層が薄い」という状況にある。
誰もが知っている選手と言えば、ジャラル・ホセイニ、ホスロ・ヘイダリ、イフサン・ハジ・サフィ、マスード・ショジャイー、アシュカン・デジャガー、そしてサルダル・アズムンと言ったところだろうか?
知名度が高い選手で組めば半分と少しくらいと考えれば、力量としてはおおよそ65〜70%と考えて良いのではないだろうか。
このところのイランの解説と注目点
アジアカップを終えてからのイランは、カルロス・ケイロス監督の辞任騒ぎが大きなニュースになったものの、それは結局元サヤに収まっている。
3月末にはチリを相手に2-0で勝利(中立地開催)し、スウェーデンには健闘したものの3-1と敗北。
ワールドカップ予選ではこれまで2勝2分けと結果は出ているが、アウェーのトルクメニスタン、オマーン戦で引き分けており、その内容は比較的低調で、プレーにスピード感がない時間が目立つ。
特に苦しんでいるのはセンターハーフだろう。アンドラニク・テイムリアンはもちろん重鎮であり信頼できる選手であるが、そのパートナーが固まっていない。
このところは9番を好むウミド・イブラヒミをよく使ってきているが、彼もどちらかと言えば「パサーではあるがコントロールタワーではない」タイプで、リーダーにはなれていない。
3センターを使用していたカルロス・ケイロスが4-4-2、4-2-3-1に切り替えているのも、おそらく中央の人材不足がかなり影響していると思われる。そのためか、メディアでは「カルロス・ケイロス監督がネクーナムを呼び戻そうとしている」という話もある。
イラン代表に興味がある人は、カルロス・ケイロスがここにどういう手を打ってくるのかを注目してみると面白いかもしれない。もちろんホームなので、アウェーゲームとは違う力も見せてくるはずだが。
怪我人がいても魅力ある攻撃陣
一方、日本代表が警戒しなければいけないという点で見れば、やはり攻撃陣だ。トップは少し人材不足になっているとは言え、2列目の選手は面白い才能を持つ。
アシュカン・デジャガーとサルダル・アズムンはもう言わずもがなの存在であるが、今回呼ばれている2名のウイングを警戒したい。
ヴァヒド・アミリはナフト・テヘランで攻撃の中心人物となっているレフトウインガー。左利きのスピードあるアタッカーで、切れ味あるドリブルと強烈なシュートを持ち、積極的な突破を図ってくる選手だ。
左利きの左ウイングにしては珍しく、カットインの頻度もかなり高い。さらに彼の特徴はロングスローであり、小柄であるが鋭いボールを投げ込んでくる。
そしてもう一人はウミド・アリシャー。クラブでも代表でも2番を付けるのだが、左サイドを得意とする右利きのアタッカーである。圧倒的な加速力を生かしたドリブル突破が魅力で、勢いよくゴールを狙ってくる。
組織力がまだ未完成の状況だからこそ、彼らの個人の能力が生かされる可能性はある。日本代表がイランの勢いを止められるかどうかに注目したいところだ。
あと攻撃面で忘れてはならないのがGKのアリレザ・ビランヴァンド。ちょっとクラブと揉めて出場停止を受けたりとオイタをしているが、彼のスローイング能力は世界でも屈指である。
立場としてはアリレザ・ハギギとの併用(ビランヴァンドの方が序列がやや下)なので試合に出てくるかどうかは分からず、注目選手には入れにくい。ただ、彼は相手のゴール前にまで手で投げてくる選手なので、隙を見せないよう注意したいところだ。
注目選手は?
サルダル・アズムン
弱冠20歳の「ペルシャのメッシ」。別に左利きでもなく小柄でもないのだが、高いドリブル技術と華麗なシュートを兼ね備えているところから呼ばれている。
継続性が課題ながらも、はまったときの能力はまさに天才だ。グーシャネジャド不在だとセンターフォワードが人材難なので、おそらく日本戦でも出てくるだろう。
ヴァヒド・アミリ
おそらく攻撃面ではかなり彼の活躍が求められると思われるレフトウイングだ。説明はもう前のページで書いてしまったが…
豊かなスピード、ファイティングスピリット、運動量、シュート、そしてロングスローを兼ね備える。様々な形でチャンスを作ってくるアタッカーである。
アシュカン・デジャガー
イランの攻撃を司る役割になっているのはやはり経験あるデジャガーである。スピードは以前より落ちた感はあるが、巧みなボール扱いで起点となり、セットプレーから味方のゴールを導く。
彼を経由すればチャンスは作れる。右サイドに起用されるであろう彼を自由にさせてはいけないだろう。
なお長谷部とはヴォルフスブルク時代の同僚であり、2012年以来3年ぶりの再会となる。アジアカップ前にはAFCのインタビューで「長谷部と決勝で対戦したい」と言っていたが、どちらもベスト8で散ってしまった…
国際親善試合 イラン対日本の試合は本日午後10時半からアザディ・スタジアム(テヘラン)でキックオフ。全国フジテレビ系列にて生中継(22:00〜)。
メンバー表
GK:
アリレザ・ハギギ / Alireza Haghighi
(ルビン・カザン)
アリ・レザ・ビランヴァンド / Alireza Safar Beiranvand
(ナフト・テヘラン)
スーシャ・マカニ / Sosha Makani
(ペルセポリス)
モハマドラシド・マザヘリ / Mohammadrashid Mazaheri
(ゾブ・アハン)
DF:
ヴリア・ガフーリ / Vouria Ghafouri
(セパハン)
ラミン・レザイーアン / Ramin Rezaeian
(ペルセポリス)
サイード・ジャラル・ホセイニ / Seyed Jalal Hosseini Khoshkebejari
(ナフト・テヘラン)
ペジマン・モンタゼリ / Pejman Montazeri
(アル・アハリ/QAT)
ムルタザ・プーラリガンジ / Morteza Pouraliganji
(天津泰達/CHN)
イザートラー・プールガーズ / Ezatollah Pourghaz
(マラヴァン)
ホセイニ・カナーニ / Hosseini Kanani
(マラファン)
メイサム・マジーディ / Meysam Majidi
(エステグラル)
イフサン・ハジ・サフィ / Ehsan Haji Safi
(FSVフランクフルト/GER)
MF:
ホスロ・ヘイダリ / Khosro Heydari
(エステグラル)
アンドラニク・テイムリアン / Andranik Teymourian Samarani
(ウム・サラル/QAT)
アシュカン・デジャガー / Ashkan Dejagah
(アル・アラビ/QAT)
サイード・イザトラーヒ / Saeid Ezatolahi Afagh
(ロストフ/RUS)
ウミド・イブラヒミ / Omid Ebrahimi
(エステグラル)
マスード・ショジャイー / Masoud Soleimani Shojaei
(アル・ガラファ/QAT)
ウミド・アリシャー / Omid Alishah
(ペルセポリス)
FW:
サルダル・アズムン / Sardar Azmoun
(ロストフ/RUS)
マフディ・タレーミ / Mehdi Taremi
(ペルセポリス)
ヴァヒド・アミリ / Vahid Amiri
(ナフト・テヘラン)
マフディ・トラービ / Mehdi Torabi
(サイパ)
アリレザ・ジャハンバフシュ / Alireza Jahanbakhsh Jirandeh
(AZ/NED)
カヴァー・レザイー / Kaveh Rezaei
(ゾブ・アハン)