『スウェーデン映画祭2015』より『同窓会/アンナの場合』
(C)Photo Jonas Jorneberg
本作が長編デビュー作となるアンナ・オデルの実体験を元にした、フィクションとノンフィクションの世界が入り交じり、人間の内面を鋭く抉り出す、異色の問題作。

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『シンプル・シモン』『100歳の華麗なる冒険』『フレンチアルプスで起きたこと』、そして現在公開中の『さよなら、人類』と、昨年から衝撃を受けた映画、「大当たり!」と感じた映画が、ことごとくなぜかスウェーデン映画であることを不思議に思っていた。
しかも、それらのいずれも全く違うテイストで、「スウェーデン映画っぽい」色というのも、つかめない。
調べてみると、3年前から「スウェーデン映画祭」なるものが渋谷・ユーロスペースで開催されていて、今年は9月19日〜25日に開催されるという。

いま、なぜスウェーデン映画がキテるのか。近年の北欧ブームの流れなのだろうか。「トーキョーノーザンライツフェスティバル」代表の笠原貞徳さんに聞いた。

監督の作家性が高いスウェーデン映画


「スウェーデン映画はここ3年ほどで日本での配給が増えています。もともと5年ほど前から北欧五カ国の映画を集めた『トーキョーノーザンライツフェスティバル』を開催しているのですが、そのなかでもスウェーデンは一番大きい国で、映画も一番作られていますし、また、イングマール・ベルイマン監督のように世界中で注目されている監督もいます。ただし、北欧映画というと、日本ではちょっと暗く、人間の内面に迫るドラマが多い印象を持たれていたのです」

スウェーデン映画には、『フレンチアルプスで起きたこと』のようなブラックな人間ドラマが多いほか、実はコメディもメロドラマもあり、多様性があるそう。
「スウェーデン映画がこれまで日本であまり知られていなかったのは、日本に知られた有名な役者があまりいなかったため、クオリティは高いものの、商業的に成功するかどうかが難しかったということはありますね」

だが、近年、デンマークやノルウェーなども公開作が増え、配給会社が北欧映画に注目し始めたそう。
「例えば、昨年公開となった『なまいきチョルベンさんと水夫さん』などは、1969年に制作された古い作品なのに、日本の今のお客さんに十分届く内容でした。こうしたヒット作から、『スウェーデンではどういう作品を作ってるの?』と注目する人が増えていることもあります」

『さよなら、人類』のロイ・アンダーソン監督は映画ファンの間で以前から人気があるし、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』をスウェーデンで公開した後、『ギルバート・グレイプ』『ショコラ』『サイダーハウス・ルール』など、ハリウッドで成功したラッセ・ハルストレム監督もやっぱりスウェーデンの監督だ。
「スウェーデンの映画は、監督の作家性が高いため、これまで『スウェーデン映画』と特に意識していなかっただけで、実は意外と観ていたということもあると思います」

『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』で世界的に注目を集めたノオミ・ラパスは、スウェーデン映画から、ハリウッドにも進出しているし、そういえば、イングリッド・バーグマン、グレタ・ガルボ、アニタ・エクバーグもスウェーデン出身だ。

ちなみに、今回の『スウェーデン映画祭2015』で上映される『劇場版:長くつ下のピッピ』をはじめ、今まで意識していなかっただけで、気づくと「あれもこれもスウェーデン映画だった!」と再認識することもあるかも。

シルバーウィークは、スウェーデン映画を観に出かけてみませんか。
(田幸和歌子)