1回戦屈指の好カードは両者、力を出し尽くした名ゲームに!

 選抜優勝の敦賀気比vsまだ夏の甲子園では初戦敗退がない明徳義塾。敦賀気比にとって難しい初戦で、いきなり試合巧者かつ負けたことがない明徳義塾の対戦は苦戦することが予想されたが、そのような試合展開となった。

 1番七俵 龍也(3年)のいきなり不規則なバウンドにより内野安打。そして明徳義塾は高知大会で20犠打で堅実な野球を見せた明徳義塾はしっかりと送り、さらにバッテリーミスで一死三塁から3番が前進守備の内野陣の頭を超える当たりを放ち、先制。 敦賀気比にとって嫌な流れ。そして2回裏、一死満塁から併殺でチャンスをつぶし、さらにプレッシャーがかけられる。 3回表、敦賀気比からすれば、無失点に抑えて、その裏の攻撃につなげたいところだが、明徳義塾はそこを逃さない。あっさりと二死に終わったが、2番真田 一斗 (3年)が安打で出塁すると、3番神藤 廉大(3年)の四球で二死一、二塁のチャンスを作ると、4番古川 卓人(3年)の左前適時打を放ち、2点目を取ると、佐田 涼介(3年)も中前適時打で3対0とリードする。先発の平沼 翔太(3年)は立ち上がり、ストレートとスライダーともに高めへ浮き、平沼らしからぬ投球内容。やはり重圧が感じられる投球であった。

 さらに明徳義塾の先発・飛田 登志貴(3年)は微妙にボールを動かす投球で敦賀気比打線を打ち取っていく。右オーバーから投げ込む直球は常時130キロ〜135キロ前後と突出した球速はないが、微妙にボールを動かしており、シュート回転をかけたり、フォークを投げて縦変化で勝負する。初球もなかなか際どいところから投げ込んでくるので、初球攻撃しようとしてもなかなかできない。だがそこから打てるボールに狙い球を絞り、チャンスを作る敦賀気比。

 5回裏、二死二塁から栗栖 千真(3年)の中前安打で二塁走者は突っ込むも、真田 一斗の好返球でアウト。試合の主導権は握ったかように思えた。だが6回裏、敦賀気比は幾度も好守備を見せてきた3番林中 勇輝(2年)が本塁打を放ち、反撃ののろしを上げると、一死満塁のチャンスから木下 翔吾(3年)の左飛義で2対3の同点に追いつく。 さらに8回裏、山本 皓大(3年)が右中間を破る三塁打を放つと、6番松本 哲幣(3年)が右前適時打で同点に追いつく。

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 平沼は4回以降、立ち直りを見せ、常時135キロ〜142キロの速球、キレ味鋭いスライダー、ツーシーム、チェンジアップ、カットボール、カーブと多彩な変化球を両サイドに投げ分け、打たせて取る投球。本来の制球力が蘇り、甘い球を投げ込まない、緩急自在の投球にはまさに大人の投手を見ているかのようであった。

 だが明徳義塾の3番手・佐田も野手兼任とは思えない投手で、オーバーハンドから振り下ろす130キロ後半の速球、130キロ中盤のツーシーム、120キロ台の縦横のスライダーのキレは絶品でまさに好投手である。敦賀気比もあと1本が出ず、試合は延長戦へ。

 10回裏、敦賀気比は苦しんでいた佐田から一死満塁のチャンスを作り、1番で主将の篠原 涼(3年)が振り抜いた打球は中前安打となり、サヨナラ勝ち。敦賀気比が延長10回に及ぶ激戦を制し、2回戦進出を決めた。

  春夏連覇の期待がかけられ、勝って当たり前という重圧の中、最初は苦しいスタートだったが、そこからしっかりと持ち直した試合運びは見事であった。明徳義塾はエース候補の2年生投手が相次いでケガで離脱する中、もともと投手を務めていた野手が投手に復帰し高知大会を勝ち抜いたのは見事であった。3投手とも力があり、ここまでの投手に育てた育成力、また抜擢した馬渕監督の眼力の高さにも恐れ入るばかり。 1回戦屈指の好カードはお互い力を出し尽くした最高の形で締めくくった。

(文=河嶋 宗一)

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