花巻東vs専大松戸

写真拡大

原嵩に求めたい新たなフォームの動き、高橋樹也から漂うベテラン投手の風格

高橋樹也(花巻東)

 花巻東・高橋 樹也と専大松戸・原 嵩の対決に注目が集まった一戦。それぞれストレートの最速が140キロ台後半を記録する本格派である。この試合では原が144キロ、高橋が140キロと自己最速には遠く及びなかったが、4対2のスコアが示す通り持ち味は十分発揮した。

 原は投球フォームが随分変わった。よくなった部分と悪くなった部分が混在し、一言で「良い・悪い」と言えないのだが、よくなったのは過剰な上半身のねじりがなくなった部分、悪くなったのは二段モーションっぽい動きで、ピッチングの流れが悪くなった部分。初回、花巻東の攻撃が終わったとき球審の桑原和彦さんに何か言われていたのは、二段モーションの指摘だと思う。桑原さんはさすがに見逃してくれない。

 この投球フォームの変化は軸足への体重の乗り方を考えたためだろう。後ろに残したパワーをリリースで全開にするための二段モーションっぽい動きだと思うが、たとえば前日に登板した中京大中京の先発・上野 翔太郎は軸足に体重を残しながら、マウンドの傾斜に気持ち良く体を預けていた。今の考え方を維持しながらああいう形を追求できないかと思う。

 花巻東の高橋は大人のピッチングをした。スカウトには物足りないと思うが、スタミナ切れに配慮した“7割ピッチング”はたとえば社会人のベテラン左腕を思わせた。私はスカウト的な見方をする人間なのでもちろん物足りなさはあったが、右肩の早い開きを抑えた投球フォームはボールの出所を見えづらくし、1回の投球前にきちんと歩測してステップ位置を確認するしぐさなど、感心することが多かった。

関連記事・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」

 いい投球フォームで力強いストレートとキレのいい変化球を安定して投げられることが、プロ・アマに関係なくいいピッチャーの証しなので、高橋にはまず「力強いストレートを安定して投げたい」という強い欲望を持ってもらいたい。聞けば、東北大会の高橋はエンジン全開で140キロ台中盤のストレートをがんがん投げていたらしい。甲子園の大舞台が自身のパフォーマンスより勝負優先にさせたのか。

 ストレートは物足りなかったが、スライダーのキレは話題になるだけあった。一番いいのはストレートを同じ腕の振りで投げられること。これに115〜120キロのチェンジアップと90キロ台のスローカーブを交えたピッチングは、くどいがベテランの風格があった。キレのいい変化球を制球よく投げるというのも得難い長所なので、この部分を残しながらストレートに磨きをかけてもらいたい。

 この試合ではもう1人、“プロ注”と話題になった選手がいた。専大松戸の1番、渡辺 大樹(遊撃手)だ。第3、4打席で右、左にヒットを打ち分けたが、まだまだだと思った。「腰を落として、バットを担いで、右肩上がり」というのが構えたときの形。内角ストレートに対する対応が不十分で、大学の4年間でどう変われるかだろう。

 話題になっていない選手で注目したいのは花巻東の2年生捕手、福島圭斗。170センチ、68キロと小柄でも、最速1.95秒の二塁スローイング(イニング間)は見応えがあった。未登板ながら千葉 耕太(191センチ)という2年生の大型右腕も控え、次代のチームへの配慮も行き届いている。

(文=小関 順二)

関連記事・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」