時間の経過とともに相手の勢いに押された日本。後半に中盤をテコ入れしたものの、相手のハイボール中心の戦略にその中盤を消されてしまった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 出足は悪くなかったよね。開始3分に武藤の代表初ゴールで先制に成功して、相手も動揺しただろうし、その後もチャンスがあって、見通しは明るいものだった。

【マッチレポート】日本 1-2 北朝鮮

 
 でも、時間の経過とともに雲行きは怪しくなっていったよね。徐々に北朝鮮も落ち着きを取り戻してきて、逆に日本は引き気味になって、そうなれば余計に相手の勢いが増してくる。前半の途中から相手のペースになりつつあった。
 
 日本は特にサイド攻撃が機能しなくて、中央に偏って仕掛けていたけど、体格に勝る北朝鮮のブロックに弾かれてしまっていたね。
 
 後半に入ると、北朝鮮は選手を入れ替えるたびに勢いが出てきていたし、ボール際の激しさや運動量、つなぎのリズムも落ちなかった。同じく3人を入れ替えた日本にポジティブな変化は見られなかった。後半は足が止まって、相手の良さしか目立たなかったし、逆転されるのもうなずける展開だった。
 
 特に気になったのは、日本の左サイドの守備。藤春はかなり難しい対応を迫られていたけど、前の選手が帰ってくるのか、中盤がサポートするのか、曖昧なままだった。まだ右サイドは、永井が懸命な戻りを見せていたけど、左サイドはボロボロだったね。
 
 試合運びも拙さがあったというか、北朝鮮は状況に応じて戦えているのに、日本はずっと同じパターンでやろうとしている。前でボールは収まらないし、ボランチは両方ともゲームを作れない。
 
 56分には柴崎を投入して、2ボランチ+トップ下から、アンカー+インサイドハーフにして現状打破を試みたけど、長身のパク・ヒョンイルを途中出場させてハイボールを駆使してきた北朝鮮の戦略の前に中盤を消されてしまっていた。パクをターゲットにそこに当てて、落としを拾って展開する。そうしたゲームプランの中で、日本は反撃の糸口を見つけられずにいた。
 
 そもそも、どうして柴崎はスタメンではなかったのかな。怪我明けで大事をとった? それなら、なぜ連れてきたのか。今さらだけど、万全のコンディションにない選手を招集したことに違和感が拭えない。クラブでなら分かるけど、代表でそれは違うんじゃないかな。もしかしたら、それだけ人材難ということなのかもしれないね。
 
 ピッチ上で誰がリーダーシップを取っているのかもよく分からなかった。上手くいっていないなかで、少しやり方を変えるとか、ペース配分を調整するとか、そういう舵取り役はいたのかな。
 
 ベンチも混乱していたんじゃないかな。霜田技術委員長の姿があって、時には彼が指示を出しているようにも見えたんだけど、実際にそういうことがあったなら、疑問に思うよ。だいたい技術委員長がベンチにいること自体、僕はおかしいと思う。彼がコーチみたいな立場でいたのなら、これは由々しき事態だよ。
 
 先制しながらも手痛い逆転負け。ハリルホジッチ監督も、うかうかしていられないよ。仮に「ベストメンバーではないから」とか言い出したら、それなら「監督の仕事ってなに?」って聞きたいよ。エクスキューズを用意したいなら、五輪代表で来れば良かったんだ。
 
 いずれにせよ、日本は球際の勝負で弱さを露呈していた。激しく来られれば、逃げている感じがしたし、ルーズボールの奪い合いでも勝率はかなり低かったはず。
 
 気持ちの面でも負けてしまっていたんじゃないのかな。今大会でチャンスをもらった選手たちに、チャレンジ精神というか、ここから這い上がっていくんだという強い意気込みはほとんど感じられなかった。
 
 対する北朝鮮は無我夢中に戦って、日本に立ち向かってきた。ゲーム内容を見ても、そういった勝負に対する必死さには雲泥の差があった。スライディングしたり、当たりに行ったり、身体を張ってプレーするのは、ほぼ赤いユニホームのほう。ハリルホジッチ監督がチームに求めているものを表現していたのは、北朝鮮の選手たちだったね。
 
 日本の選手たちは、途中から下を向いていたけど、この大会の意義が中途半端ではしょうがないのかもしれない。勝ちに行っているのか、経験を積みに行っているのか。それが明確ではないように見える日本に対し、北朝鮮ははっきりと“勝ち”に来ていたんだ。
 
 今回の敗戦で得たものがあるとすれば、試合に勝ちに行くとはどういうことかを学べたこと。北朝鮮には足をつる選手もいた。彼らはそれぐらい必死で戦っていたんだ。
 
 勝負ごとの原点とはなにか。今回の逆転負けで、北朝鮮相手に日本は貴重なレッスンを受けたと考えるしかないね。