【福田正博フォーメーション進化論】
 8月2日から中国の武漢で始まる東アジアカップに臨む日本代表メンバーが発表された。欧州組を招集せずに国内組だけで編成したが、気候条件や日程なども含め、過酷なアウェーの環境でどういった戦いを見せてくれるのか興味深い。

 また、今大会は韓国や中国も欧州組を招集していない。そのため、それぞれの国のリーグの実力を推しはかる舞台になるといえる。現在のJリーグがどの程度の力を持っているのか、どれぐらいのレベルにあるのか、この大会から見えてくるはずだ。

 本田圭佑、岡崎慎司、香川真司ら、海外組が外れた攻撃陣は、新たな選手たちがアピールする舞台になる。FWの軸になるのは宇佐美貴史(G大阪)だろう。左サイドに宇佐美を置き、1トップには興梠慎三(鹿島)と川又堅碁(名古屋)のどちらかが入り、右サイドを永井謙佑(名古屋)と浅野拓磨(広島)が争うのではないか。

 アジアの戦いにおいては「高さ」は大きな武器になるため、川又にはヘディングからの得点を期待したい。永井と浅野はどちらも絶対的なスピードが武器の選手だけに使い方が重要になる。スペースがないと特長を発揮しにくいタイプだけに、監督がどう判断して起用するのか注目したい。

 いずれにしろ、6月のW杯アジア予選のシンガポール戦で「決定力不足」を露呈した日本代表にとって、ゴールをこじ開けられる選手の出現が待たれるところだ。9月に控えるW杯アジア予選のカンボジア戦でも、相手は守備に人数を割いてくることが予想されるだけに、今回招集されたFW陣にはどんな形からでもゴールを決めて、生き残りをかけてアピールしてもらいたい。

 攻撃陣で楽しみな存在が、初選出となった武藤雄樹(浦和)だ。昨年は仙台でそれほど目立った活躍はなかったが、浦和に移籍して今季ここまで9ゴール。ペトロヴィッチ監督のサッカーにフィットして力を存分に発揮している。クラブでは2列目のポジションをつとめ、ドリブルやDFライン裏への抜け出しで攻撃のアクセントとなり、今季の浦和躍進の原動力になっている。

 浦和のサッカーは、選手同士の緻密な連係や連動で攻撃を組み立てるスタイルだが、代表は練習時間が少ないためそうしたコンビネーションを熟成させる時間がない。そのため、個の力で打開しなければならない局面もあり、そうした時に、武藤をはじめ興梠や柏木陽介ら浦和勢がどこまで個の力を発揮できるか興味深いところだ。また、柏木にはフィジカルの強い相手に対して、ボランチとして守備でも通用するところも見せてもらいたい。

 ボランチは、柴崎岳(鹿島)が故障を抱えているので誰が先発になるのか微妙な部分もあるが、国際経験豊富な山口蛍(C大阪)、守備に定評のある谷口彰悟(川崎F)も名を連ね、レギュラー争いがどうなっていくのか楽しみだ。

 多士済々のボランチで、私が期待しているのは米本拓司(FC東京)だ。彼には以前から注目してきたが、Jリーグ2ndステージの試合を見た限りでは以前のようなインパクトがない。元来はいいものを持っている選手だけに、アグレッシブさを前面に出して、代表のボランチ争いを活性化してほしい存在だ。

 DF陣は8人が選ばれたが、4バックを敷くならCBは森重真人(FC東京)と槙野智章(浦和)がつとめることが予想される。問題はサイドバックだ。長友佑都、内田篤人、酒井高徳、酒井宏樹の4選手が長く代表のSBをつとめてきただけに、国内組で彼らに匹敵する実力のあるSBはまだ少ないと言わざるを得ない。

 左の太田宏介(FC東京)は代表経験があるものの、国際経験が豊富とは言えず、藤春廣輝(G大阪)も代表歴はまだ1試合。右の米倉恒貴(G大阪)は初の代表選出になる。所属クラブでは3バックとして出場している水本裕貴(広島)、遠藤航(湘南)を含めて、DFラインをどう組むかは監督の腕の見せどころになりそうだ。

 槙野を含めて、クラブでは3バックの一角をつとめる選手をこれだけ招集しているだけに、3バックを試すこともありえる。いずれにしろ、国際試合の経験が豊富な選手が少ないので、まずはしっかりと守備をして、機を見て攻撃面でもアピールしてくれればと思う。

 7月29日までJリーグを戦い、7月30日に集合して中国に向かう日本代表にとって、練習できる時間はわずかしかないこともあり、国内組だけで臨む今大会は「新戦力発掘」という意味合いが強い。しかし、東アジアカップは真剣勝負の公式戦ということを忘れてはならない。

 初招集や代表歴の浅い選手が多く、連覇に向けた戦いは厳しいものが予想される。だが、それだけにライバルから勝利を手にする経験値や自信は、大きな財産になるはずだ。日本代表の戦力を底上げしていくためにも、今大会に臨む23選手には、結果を求めて戦ってもらいたい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro
津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro