全国には約3万3000軒のラーメン店があるといわれる。人口10万人あたりの店舗数が最も多いのは意外にも山形県だが、出店の密度でいえば東京の高田馬場や池袋、新宿の駅前になるだろう。

これらの繁華街で最近、横浜家系ラーメンの店舗が増えている。

都内に直系はない!?

横浜家系ラーメンは、豚骨ラーメンと鶏油(ちーゆ)、濃い醤油ダレなどが組み合わさってできたスープとコシのある太麺が特徴で、ホウレンソウとチャーシュー、海苔をトッピングするのが基本形だ。

総本山は1974年創業の「吉村家」(横浜市西区)。暖簾分けを許された直系は意外にも少ない。「杉田家」(同磯子区)、「横横家」(同金沢区)、「末廣家」(同神奈川区)、「まつり家」(神奈川県藤沢市)、「厚木家」(同県厚木市)、「はじめ家」(富山県魚津市)などがある。


吉村家のラーメン(Akitoishiiさん撮影、Wikimedia Commonsより)

家系の流派はこれだけではない。
吉村家で修業しつつも独自に開業したり、そこからさらに分派した店は数えきれない。

その代表的存在といえば神奈川区の「六角家」だ。東京都台東区と千葉県船橋市にも支店を出している。
このほか家系ファンの間で有名なのは「近藤家」「介一家」「横濱家」の3店。中でも横濱家は神奈川と東京に21店舗を展開している。


六角家本店(Takkitakitakiさん撮影、Wikimedia Commonsより)

吉村家と直接接点のない人物が横浜家系を名乗る、インスパイア系も数多く存在する。
例えば、横浜市磯子区にある「壱六家」は、吉村家に触発されて1992年に誕生した。家系フリークのあいだでは「壱系」と親しみをこめて呼ばれている。

東京都新宿区のマックグループは傘下に「壱角家」を有する。焼き牛丼で一世を風靡した東京チカラめしの68店舗を譲り受け、壱角家を中心とする別業態に転換させた(参照:徹底調査! 「東京チカラめし」の跡地は今、どうなっているのか)。

2015年3月放送の「スーパーニュース」でもこの話題が取り上げられた。
番組の取材に応じたチカラめしの國松晃CEOは、東京だけで100店舗はいけると主張。手間のかかるスープなどはセントラル(工場)で作り、店員がマニュアル通りに調理することで味のブレをなくしているという。

筆者は壱角家西新宿本店を訪れた。ヨドバシカメラ新宿西口本店のすぐ近くにある同店は、家系ラーメンを看板に掲げる一方で、博多とんこつラーメンや東京名物油そば、チャーハンも提供している。


横浜家系ラーメン壱角家西新宿本店

家系のフランチャイズも増えている

ネットで「家系 FC」をキーワードに検索すると、家系ラーメン店の開業を支援するサービスがいくつかヒットする。例えば、「松壱家」(藤沢市)の開業パッケージには最短18日の研修で味をマスターできると書いてある。

ラーメンという食べ物は、世界各地の料理のエッセンスを貪欲に吸収しつつ、「誰もが気取らず食べられる庶民のグルメ」として今も進化を続けている。

整理しきれないほど様々な流派に分かれている家系だが、見方を変えれば日本のラーメンの歴史が凝縮されているとも言えそうだ。