そのセキュリティ・ソフト、本当にインストールされていますか?/日沖 博道
一般向けITサービスに関しては玉石混交というのは昔から変わらない。実にいい加減なものが平気で提供されて費用請求されていながら、目に見えないためになかなかその実態に気づかないことがある。信頼していたPCショップで最近直面した、意外な事態とは?
先日のauの海外通信明細書の顛末に続き、我が家が経験した「もう一つのお粗末」をレポートしましょう。ちょっと情けないといった側面もあるのですが、もしかすると同様の事態に陥っていて実害を蒙りかねない世帯もあるかも知れませんので、注意喚起にもなると考えるからです。
我が家ではPCおよびその周辺機器に関しては、その大半を近所のPCデポで長年購入してきました。近所といっても車で行くしかない、隣町にある店舗です。入口は交通量の多い交差点近くに面しており、我が家の方向からは入るのも出るのも不便なロケーションです。小生が経営者だったら決して選ばないようなそんな店舗で長年購入し、しかも有料の会員契約までしているのは、PCデポが専門性の高いPCショップだと評価してきたからです。
PC・周辺機器の購入だけなら他にいくつも選択肢はあります。最寄りの駅にはヤマダ電機、よく行くモールにはビッグカメラがそれぞれありますし、品揃えも上です。値段だけを考えたら、アマゾンをはじめとした通販ショップのほうが明らかに安くて手軽です。でもPC・周辺機器の購入後の接続、ソフトの更新、ハードに関するトラブルや修理などで様々な相談が生じることを考慮して、安さよりも店舗スタッフの知識の確からしさに軍配を上げ、この店を頼りにしてきたのです。
でも一方で、一部ベンダーのコールセンター対応がレベルアップし、しかも技術進歩のお蔭でコールセンターからの遠隔操作すらできるようになり、リアル店舗の有難味が着実に減っていることは小生も実感しています(店舗を運営する経営者には気になる点でしょう)。それに加えて最近、この店に対する小生の信頼感に陰りを生じさせる事態が続いているのです。
はじめは某メーカーのノートPCに関する修理でした。高額なビジネスユース用の製品でしたが、持ち運びを常態とする小生の使い方に耐え切れなかったのか、時折バッテリーなどのプラグのゆるみが生じる度にフリーズするので、現物を持ち込んで修理をお願いしていました。しかしPCデポは受付窓口をしているだけで、診断すら実質的にできず、付加価値がないと感じました。でもこの時点では、小生のPCデポに対するロイヤルティはほとんど揺らいではいませんでした。
しかし最近続けて直面したのが、セキュリティ・ソフトの契約・説明に関しての不手際です。実はその種は約1年前に蒔かれており、それに気づいたのが最近だというものです。
約1年前の3月、大学入学を控えた娘が自分用のPCを欲しがりました。そしてPCデポに2人で出掛け、娘が欲しがっていたMacBook Airを購入しました。
同店でのその製品には、セキュリティ・ソフトのKがバンドル(パッケージ販売)されており、「マルチデバイス」(面倒を見る対象は5台まで)かつ「年間更新版」(放っておくと自動更新)でした。我が家では別のセキュリティ・ソフトWをずっと使っていましたが、PCは既に3台あってWの対象台数ぎりぎりでした。そのため新たに増えた娘のPCのセキュリティ用にはちょうどよかったのです(既存3台のうち1台は1年以内に廃棄を見込んでいたので、その際に娘のセキュリティ・ソフトもWに切り替えようと考えていました)。
さらに購入の際には、アプリとしてMS Officeも追加購入し、一種の「お任せサービス」的なアプリケーションインストール・サービスをお願いしました(ここで大いなる誤解が生じたのですが、この時点では全く気づきませんでした)。そしてセットアップが済んだ状態での新品の製品が我が家に後日届き、娘は機嫌よく大学の履修登録などを進めていたのを覚えています。
さて約1年経過した、この3月です。何となく虫が知らせたのか、小生は同店の契約書類などをざっと確認していました。そしてセキュリティ・ソフトKに関する自動更新が1年単位であることに気づきました。ソフト購入時に発行されたサービス会員登録証(PCデポではサービス購入ごとに発行されます)によると発行が3月30日なので、急いでPCデポのコールセンターに電話し、セキュリティ・ソフトの切り替えを相談しました。
そこで意外なことが分かりました。既に2月末時点で自動更新になっており、年間料金の引き落としもされていたのです。確かにその月の月額料金がいつもより高いなぁと思ったことを思い出しました。コールセンターの窓口の人いわく、「(たとえ1日といえど)3月からの契約なので、2月末までに契約解除を申し入れていただかないと、自動更新となります」とのことでした。
サービス会員登録証には、そうした注意事項はもちろん、サービス期間すら記載がなく、あるのは発行日だけなのです。そして3月末に購入したのに3月頭からの使用者と同じサービス対象期間なのです。しかもそうした注意すべき事項を、店舗でも全く伝えてもらっていませんし、書類にも全く記載していないのです。
正直あきれ返る思いでしたが、コールセンターの人に怒っても仕方ありません。次回の年間契約更新時に解約するかどうかを検討するため、改めて最新のサービス会員登録証を発行していただくよう、依頼しました。
その際にはきちんと契約期間を明記するようお願いしたのですが、当初かなり抵抗されました。後日、自宅に送付されてきた最新のサービス会員登録証を見ると、一見そうした契約期間が明記されていないようでした。しかし最後のメモ欄に手書きで、契約期間と契約終了日が記載されていました。なるほど、PCデポの契約管理システムには、顧客に対し契約期間を明記し伝える機能は備わっていないことが、これでよく分かりました。
本件は相対的に罪の軽いものですが、もしかすると確信犯的なものかも知れません(顧客の「うっかり自動更新」を狙っているということです)。正直、同社に対して失望し、少し不信感も芽生えました。
その翌週でしたか、またPCデポで自宅作業用の新しいラップトップPCを購入し(小生も懲りないですね)、旧PCからのデータ移行などを進めました。しかし完全な移行にはまだ日数が掛かると判断し、当面は廃棄せずに旧PCを残すことにしました。そうなると一時的にセキュリティ・ソフトWの対象台数をオーバーしてしまいます。
そこでハタと思い出し、半ば強制的に自動更新させられたセキュリティ・ソフトKをこちらのPCにインストールしたのです。するとWと違ってKの場合、画面の下部で鼓動しているような動きをすることに気づきました。
そこで小生は娘に「Kの動きは面白いね」と話し掛けました。すると娘はきょとんとして、「Kって何?」と問い返すのです。小生と娘の間でしばらく、噛み合わないやり取りが続きました。娘は自分のPCではそんな動きをするソフトはないと言い、しかもウイルス駆除などのレポートも受け取ったこともない、定義ファイルの更新もしたことがないと言います。
ようやく事態がおかしいことを感じた小生は娘のMacBookの画面をみましたが、小生の使っているWindowsと違って、インストールされているソフトを確認する方法が分かりません。PCデポに電話し、「もしかすると契約しているはずのセキュリティ・ソフトがインストールされていないかも知れない」「どうやればインストールされているか否かを判断できるのか」などと問い合わせました。しかし電話越しでは分からないとのことで、店舗に娘のPCを持ち込んで診てもらうことになりました。数日後(何とか娘と小生の都合を合わせて)、店で現物を診てもらうとすぐに、セキュリティ・ソフトは全くインストールされていないことが分かりました。
当時のサービス会員登録証には細かい記載は何もありませんが、たまたま残していた店発行の「パソコン購入メモ」(一種の購入商品・サービスの明細書)には「設定」の項目にしっかりとチェックマークがついていますが、「万全セキュリティ」の項目にはチェックマークが入っていません。店側に好意的に解釈すると、セキュリティ・ソフトは売ったけど、インストールを引き受けてはいない、ということでしょう。
しかしソフトのインストール・サービスをお願いした当方は、その対象にMS Officeと一緒に購入したセキュリティ・ソフトも当然含まれていると解釈し、全く疑っていませんでした。当然、娘も小生もそれに関し「セキュリティ・ソフトはご自分でインストールしてくださいね」といった注意は一言も受けていません。
事情が判明してから、PCデポの店の人にはしっかりと苦情を告げました。「確かに書類上はそちらにセキュリティ・ソフトのインストール責任はないのかも知れないが、セキュリティ・ソフトを売っておきながら、そのインストールに関し何の説明もないし、説明書も渡されていません。明らかに片手落ちです」と。当時担当してくれた人とは別の方でしたが、恐縮していました。今後注意をしていただくよう要請し、こんなことが続いてちょっと不信感が募っていることも伝えました。 どうやらたまたまウイルスによる被害はなかったようですが(Windows PCでなくマイナーなアップル製のMacBookだったことが功を奏したのかも知れません)、今考えると冷や汗ものです。何せ1年間、セキュリティ・ソフト無しの状態で娘はPCを使っていたのです。しかもその間、年間のソフト使用料金だけはしっかりと徴収されていたのです。やっぱり少し腹が立ちますね。
先日のauの海外通信明細書の顛末に続き、我が家が経験した「もう一つのお粗末」をレポートしましょう。ちょっと情けないといった側面もあるのですが、もしかすると同様の事態に陥っていて実害を蒙りかねない世帯もあるかも知れませんので、注意喚起にもなると考えるからです。
PC・周辺機器の購入だけなら他にいくつも選択肢はあります。最寄りの駅にはヤマダ電機、よく行くモールにはビッグカメラがそれぞれありますし、品揃えも上です。値段だけを考えたら、アマゾンをはじめとした通販ショップのほうが明らかに安くて手軽です。でもPC・周辺機器の購入後の接続、ソフトの更新、ハードに関するトラブルや修理などで様々な相談が生じることを考慮して、安さよりも店舗スタッフの知識の確からしさに軍配を上げ、この店を頼りにしてきたのです。
でも一方で、一部ベンダーのコールセンター対応がレベルアップし、しかも技術進歩のお蔭でコールセンターからの遠隔操作すらできるようになり、リアル店舗の有難味が着実に減っていることは小生も実感しています(店舗を運営する経営者には気になる点でしょう)。それに加えて最近、この店に対する小生の信頼感に陰りを生じさせる事態が続いているのです。
はじめは某メーカーのノートPCに関する修理でした。高額なビジネスユース用の製品でしたが、持ち運びを常態とする小生の使い方に耐え切れなかったのか、時折バッテリーなどのプラグのゆるみが生じる度にフリーズするので、現物を持ち込んで修理をお願いしていました。しかしPCデポは受付窓口をしているだけで、診断すら実質的にできず、付加価値がないと感じました。でもこの時点では、小生のPCデポに対するロイヤルティはほとんど揺らいではいませんでした。
しかし最近続けて直面したのが、セキュリティ・ソフトの契約・説明に関しての不手際です。実はその種は約1年前に蒔かれており、それに気づいたのが最近だというものです。
約1年前の3月、大学入学を控えた娘が自分用のPCを欲しがりました。そしてPCデポに2人で出掛け、娘が欲しがっていたMacBook Airを購入しました。
同店でのその製品には、セキュリティ・ソフトのKがバンドル(パッケージ販売)されており、「マルチデバイス」(面倒を見る対象は5台まで)かつ「年間更新版」(放っておくと自動更新)でした。我が家では別のセキュリティ・ソフトWをずっと使っていましたが、PCは既に3台あってWの対象台数ぎりぎりでした。そのため新たに増えた娘のPCのセキュリティ用にはちょうどよかったのです(既存3台のうち1台は1年以内に廃棄を見込んでいたので、その際に娘のセキュリティ・ソフトもWに切り替えようと考えていました)。
さらに購入の際には、アプリとしてMS Officeも追加購入し、一種の「お任せサービス」的なアプリケーションインストール・サービスをお願いしました(ここで大いなる誤解が生じたのですが、この時点では全く気づきませんでした)。そしてセットアップが済んだ状態での新品の製品が我が家に後日届き、娘は機嫌よく大学の履修登録などを進めていたのを覚えています。
さて約1年経過した、この3月です。何となく虫が知らせたのか、小生は同店の契約書類などをざっと確認していました。そしてセキュリティ・ソフトKに関する自動更新が1年単位であることに気づきました。ソフト購入時に発行されたサービス会員登録証(PCデポではサービス購入ごとに発行されます)によると発行が3月30日なので、急いでPCデポのコールセンターに電話し、セキュリティ・ソフトの切り替えを相談しました。
そこで意外なことが分かりました。既に2月末時点で自動更新になっており、年間料金の引き落としもされていたのです。確かにその月の月額料金がいつもより高いなぁと思ったことを思い出しました。コールセンターの窓口の人いわく、「(たとえ1日といえど)3月からの契約なので、2月末までに契約解除を申し入れていただかないと、自動更新となります」とのことでした。
サービス会員登録証には、そうした注意事項はもちろん、サービス期間すら記載がなく、あるのは発行日だけなのです。そして3月末に購入したのに3月頭からの使用者と同じサービス対象期間なのです。しかもそうした注意すべき事項を、店舗でも全く伝えてもらっていませんし、書類にも全く記載していないのです。
正直あきれ返る思いでしたが、コールセンターの人に怒っても仕方ありません。次回の年間契約更新時に解約するかどうかを検討するため、改めて最新のサービス会員登録証を発行していただくよう、依頼しました。
その際にはきちんと契約期間を明記するようお願いしたのですが、当初かなり抵抗されました。後日、自宅に送付されてきた最新のサービス会員登録証を見ると、一見そうした契約期間が明記されていないようでした。しかし最後のメモ欄に手書きで、契約期間と契約終了日が記載されていました。なるほど、PCデポの契約管理システムには、顧客に対し契約期間を明記し伝える機能は備わっていないことが、これでよく分かりました。
本件は相対的に罪の軽いものですが、もしかすると確信犯的なものかも知れません(顧客の「うっかり自動更新」を狙っているということです)。正直、同社に対して失望し、少し不信感も芽生えました。
その翌週でしたか、またPCデポで自宅作業用の新しいラップトップPCを購入し(小生も懲りないですね)、旧PCからのデータ移行などを進めました。しかし完全な移行にはまだ日数が掛かると判断し、当面は廃棄せずに旧PCを残すことにしました。そうなると一時的にセキュリティ・ソフトWの対象台数をオーバーしてしまいます。
そこでハタと思い出し、半ば強制的に自動更新させられたセキュリティ・ソフトKをこちらのPCにインストールしたのです。するとWと違ってKの場合、画面の下部で鼓動しているような動きをすることに気づきました。
そこで小生は娘に「Kの動きは面白いね」と話し掛けました。すると娘はきょとんとして、「Kって何?」と問い返すのです。小生と娘の間でしばらく、噛み合わないやり取りが続きました。娘は自分のPCではそんな動きをするソフトはないと言い、しかもウイルス駆除などのレポートも受け取ったこともない、定義ファイルの更新もしたことがないと言います。
ようやく事態がおかしいことを感じた小生は娘のMacBookの画面をみましたが、小生の使っているWindowsと違って、インストールされているソフトを確認する方法が分かりません。PCデポに電話し、「もしかすると契約しているはずのセキュリティ・ソフトがインストールされていないかも知れない」「どうやればインストールされているか否かを判断できるのか」などと問い合わせました。しかし電話越しでは分からないとのことで、店舗に娘のPCを持ち込んで診てもらうことになりました。数日後(何とか娘と小生の都合を合わせて)、店で現物を診てもらうとすぐに、セキュリティ・ソフトは全くインストールされていないことが分かりました。
当時のサービス会員登録証には細かい記載は何もありませんが、たまたま残していた店発行の「パソコン購入メモ」(一種の購入商品・サービスの明細書)には「設定」の項目にしっかりとチェックマークがついていますが、「万全セキュリティ」の項目にはチェックマークが入っていません。店側に好意的に解釈すると、セキュリティ・ソフトは売ったけど、インストールを引き受けてはいない、ということでしょう。
しかしソフトのインストール・サービスをお願いした当方は、その対象にMS Officeと一緒に購入したセキュリティ・ソフトも当然含まれていると解釈し、全く疑っていませんでした。当然、娘も小生もそれに関し「セキュリティ・ソフトはご自分でインストールしてくださいね」といった注意は一言も受けていません。
事情が判明してから、PCデポの店の人にはしっかりと苦情を告げました。「確かに書類上はそちらにセキュリティ・ソフトのインストール責任はないのかも知れないが、セキュリティ・ソフトを売っておきながら、そのインストールに関し何の説明もないし、説明書も渡されていません。明らかに片手落ちです」と。当時担当してくれた人とは別の方でしたが、恐縮していました。今後注意をしていただくよう要請し、こんなことが続いてちょっと不信感が募っていることも伝えました。 どうやらたまたまウイルスによる被害はなかったようですが(Windows PCでなくマイナーなアップル製のMacBookだったことが功を奏したのかも知れません)、今考えると冷や汗ものです。何せ1年間、セキュリティ・ソフト無しの状態で娘はPCを使っていたのです。しかもその間、年間のソフト使用料金だけはしっかりと徴収されていたのです。やっぱり少し腹が立ちますね。