競争意識を煽る

代打でタイムリーを放つ山田将(報徳学園)

 報徳学園は2対1とリードして迎えた7回裏、二死走者なしから1番・端岡 陸(3年)がヒットで出塁する。続く2番は波田逸平(3年)。どうしても追加点がほしい展開に、永田裕治監督は一つの策を考えた。 「(端岡を)走らせて、代打」。

 その狙いを汲みとった端岡は、川西緑台のエース・木村悠斗(3年)が牽制球を投げて警戒する中、1球目で盗塁を仕掛けて見事に成功させた。 これを受けて、指揮官はタクトを振る。2球目の前に代打として起用されたのは、背番号17の山田将(3年)。「1ボールからでも準備は出来ていました」と気合いを入れて打席に向かった。 ストライクを1球挟んでの3球目、山田の打球はライト前へと抜けた。二塁から俊足を生かして端岡が本塁へ向かう。クロスプレーとなったが、間一髪でセーフ。そして打った山田は、すぐに代走の西田健二(3年)と交代。「足に自信がないので」と代打がこの試合の自分の役割と理解していた山田は、わずか2分あまりの働きが勝利を決定づけた。

 この冬場、永田監督は【競争】をテーマに掲げて選手に切磋琢磨を求めてきた。代打で起用された山田に関して言えば、競争相手は背番号16の田原 宗汰(3年)になる。秋は打率5割を記録した代打の切り札に指揮官は山田を挑ませた。 「田原が打ったら次は山田と練習試合から意識的に言ってきました。あえて打ったけど代えたりもしました。田原は打ったぞという感じで」。 だからこそ、代打で使ってもらった山田はこの1打席にかける気持ちが強かった。

 競争は投手陣も同じだ。この日1失点完投の主島 大虎(2年)は、秋からエースつけてきたエースナンバーを手放し、今大会は背番号10。同学年の右腕・中本光紀が急成長し、安定感を見せているからである。 それでも、指揮官は主島を県大会初戦の先発に起用し、「途中で代えようかと思った」と話しながらも最後まで投げさせた。10番になったことでの悔しさと意地を見せてほしかったのだろう。そしてこうも言った。「これを見て次は中本がどんなピッチングをするか」。

 まだまだ、競争は続いていく。